新しき風 吹き抜ける世界(40) ~ 水炎邪霊姫 サン・ラジェイド
「正直なところ、アレに太刀打ちすることは厳しいを通り越して無理だ」
ウェンシアは流 あさひの姿を見ただけでそれを悟ってしまった。
派手になったのは見た目でだけではなく、中身の魔力も……
「元のギラバーンの魔力に近い。いやギラバーンを超越している」
のである。
その魔力を感じているのはウェンシアだけであった。
一緒に地上へあがってきた風切あやかもリィザも流 あさひの持つ強大な魔力の全てを感じてはいない。
感じていることといえば、圧倒的な威圧感くらいのものであろう。
それだけでも戦意を喪失させるには十分だが、今の風切あやかとリィザには諦める気持ちは持ち合わせてはいないようだった。
「というか、アイツ水霊の姫なのか?随分見た目が変わったじゃねぇか……オイ」
「アイツとは何回か向き合ったことがある。あのどこか人を冷めてて人を馬鹿にしてる感じは間違いない」
「僕も同感。僕とクァーシアで暖めようとしたんだけど、かえって冷ややかだったよ」
「私ってそういう風に見えてたの?」
意外に本人はそうは思ってはいなかったらしい。流 あさひとしては周囲に興味がなかっただけなのだが、それが風切あやかやウェンシアには冷たいように映ったようだ。
「……って、そんなことを言っている場合じゃない!私の見え方なんかどうでもいい!!私は私の世界を作り出すんだ!!この新しい力……全てを破壊し、そして新しい世界を創造する力だ!!」
「なるほど。そういうことか」
ウェンシアは流 あさひの魔力の正体に気が付いたようだった。破壊と創造を通して、
「新しい世界を作り出す」
それはかつてウェンシアとクァーシアがバーンアウトを使ってやろうとしていたことと同じだったのだ。
だから、その力の性質については分かる部分が少なからずある。とはいえ、
(今の状況じゃ、水霊の姫……いや水炎邪霊姫に対抗することはできない)
『水炎邪霊姫 サン・ラジェイド』
新しい自分を流 あさひはそう名乗っていた。
もはや過去の自分との決別をしていたようだ。水霊であることも、流 あさひであることも、全てのことと決別してしまったといっていい。
全てを破壊して新しく世界を作るのだから、そういったものに囚われている必要もない、と考えたのだろう。
サン・ラジェイドは言った。
「もう私がどう思われていようが、どう見えていようが関係ないの。全てを焼き尽くし、その後で私達だけの新しい世界を作り出すの」
「ハッ!そんなに一人がいいなら、自分達だけが消えればいいじゃねェか!!」
「……うるさいよ?」
サン・ラジェイドが呟くと、リィザの足元が突如として爆発した。
ぐっ……と低い声を立ててリィザが吹き飛んだ。
「爆発!?」
風切あやかは周囲を見渡した。特にサン・ラジェイドが攻撃をした形跡はない。
「流 あさひ!!おまえ、何をしたんだ!?」
「えー?今の攻撃すら見えてなかったの?そんなので私に歯向かおうって言うの?冗談はやめてよ。ポンコツカラス風情がさぁ……」
「ポッ、ポンコツだって!?」
「あやか、落ち着いて、挑発だよ。あの攻撃、僕には見えていたさ」
ウェンシアが風切あやかをなだめた。
ウェンシアによれば、水を利用した爆発現象だそうだ。
サン・ラジェイドの操る炎の力を利用して足元の岩に熱を与え、そこへ水をぶつけて起こる水の蒸発を爆発力とする。
八霊山でもこうした術を操るものはまずいない。水を操るだけなら水の精でも出来るものの、そこに熱を加えるとなると、他に炎の精を連れてこなければできないだろう。
炎の精は地底には存在した。邪炎霊がそれに当たっている。
「待てよ……」
ウェンシアが声をあげた。
「くそっ、あんな攻撃が飛んでくるんじゃ、対応のしようがない!!」
風切あやかはせめて相手を睨むことに終始せざるを得ない。
先ほどの攻撃では、サン・ラジェイドが攻撃のためにアクションを起こした形跡は特に見られなかったのだ。つまり、相手は攻撃を行うのに行動を必要としない!!
これがどういうことか?それは相手の攻撃のタイミングが掴めない!ということになる。
(何かあるはずだ。攻撃の前兆が……!!)
じっと風切あやかはサン・ラジェイドを見つめていた。それをサン・ラジェイドは面白そうに笑っている。
「あはは!怖い顔!!私がいつ攻撃するか、それを見極めているんだね?アンタのその顔、最っ高」
「ちっ……」
「あっ、あんなところに蒼水れいがいるじゃないか」
「なにっ!?」
ハッと風切あやかがサン・ラジェイドから目を離した瞬間だった。
足元で爆発が起こり、風切あやかが宙へ飛んだ。
「えー?あんなのに騙されちゃうんだ。そんなんじゃ私を止めようなんてとても無理だよ」
「クソッ……蒼水れいが出てくると、ホントろくなことが、ない……」
くしゅん、とどこかでクシャミが漏れた。




