第8話
――翌日、試験日。
アルトは心臓がバクバクとするのを抑えきれず、朝食のスープを三杯しか飲めなかった。
「......アルトはよく食べますね。緊張しないのですか?」
「え?! 緊張しすぎて普段の半分しか食べれていません!!」
――ルシエルとシスター達は驚きのあまりに口が閉じれなかった。
アルトは食事に満足したのか、「ご馳走様でした!」と言ってあてがわれた部屋へ行き、試験に行く準備を始めた。
そして、いよいよ試験に向かう時間となった。
「アルト。頑張って来てくださいね?」
「お前なら大丈夫だ! ぶちかましてこい!!」
「うん!! それじゃあ行ってきます!!」
王都勇者育成学院まではこの中央教会からは目と鼻の先だ。
それに志願者と思われる、少年達が列をなして歩いている。
そこに紛れ込めばいいのだ。
なんて天才的考えなのだろう、と自画自賛するアルトであった。
「さぁ、こちらに志願書を提出してください。......あれ?"アルト・レイン"?」
「は、はい!」
もうこんなところでバレてしまうの?!
そう思ったら、受付の教師から手をガシリと掴まれた。
「君があの"ガル・レイン様"のご子息だね?!」
「は、はい......」
「僕の憧れなんだ!! 試験、頑張っておくれ!!」
そう言うと、アルトを門の中へと通した。
第一関門突破と言うところだな。
しばらくすると、志願者達は剣技場へと集められた。
「これより剣技の試験に入る! 我々試験官との一対一での試験となる。各自木剣を持って列に並べ!!」
アルトの相手をする試験官は大柄で、他の志願者はその風貌で圧倒されていた。
しかし、アルトはその逆。
強そうな相手と戦えるのを楽しみにしていた。
「次!! アルト・レイン!!」
「はい!!」
アルトの名が呼ばれると、辺りの志願者達はクスクスと笑い始めた。
「あんなちんちくりんでも入れるならオレらは余裕だな!!」
「せめて、試験官の体力を削っといてくれよー、オレ達のために」
辺りが好き勝手言うが関係ない。
アルトは、「僕の実力を最大限出すのみ!!」と意気込む。
「それでは、始め!!」
開始の合図とともにアルトは試験官に向かって走り出す。
そのまま切りかかるかと思われたが、次の瞬間アルトの姿が全員に視界から消えた。
何事かと試験官は驚いた。
「な! どこに行った?!」
その後だった。
「こっちですよ! こっち!!」
アルトは天高くから試験官の頭めがけ剣を振るった。
試験官は慌てて木剣を頭上に構えた。
――ガキイィィン!!
凄まじい衝撃音が剣技場に響き渡る。
「ぐっ......!!」
試験官の腕が大きく震える。
そして――。
パキイィン!!
力強いアルトの木剣が試験官の木剣を折った。
「勝負あり!! 勝者、アルト・レイン!!」
「いやぁ、......してやられたよ。こんなに細い腕なのにあの腕力......ただ者じゃない」
「ありがとうございます!!」
「評価はSランクで文句はない!! レベル測定が楽しみだ!!」
そして――。
アルトの評価シートには、
――『剣技:Sランク』
その文字が刻まれた。
「ふふっ、面白いヤツもいるもんだ」
そう呟く人物がいることに――アルトはまだ気づいていなかった。




