第5話
「......司祭?」
アルトは目を丸くする。
司祭と言えば、教会で神々に仕え、人々を導く聖職者だ。
「おいおい......まさかルシエルが出迎えてくるとは、珍しいな」
「お久しぶりです。ゼッツ・アイゼン様」
「おう、久しいな。あんなガキだったのに立派になったもんだ」
二人は顔を見合わせながら笑い合った。
「お二人はお知合いなんですか?」
「ん? あぁ。オレが聖騎士長だった頃からの付き合いだ」
「そういう事です。......それにしても......」
ルシエルはアルトを見つめると、息を飲んだ。
その様子にアルトは疑問を持つ。
「ルシエル様?」
「あ......申し訳ありません。貴方がアルト・レイン様ですね」
「は、はい! ってあれ? 僕名乗りましたっけ?」
アルトは疑問を持ち、ルシエルに問いかける。
ルシエルは微笑みながらアルトの問いに答えた。
「神からのお告げ......と言うヤツですよ。近いうちに"勇者に近しい者"が訪れる、と」
「......勇者に近しい者」
アルトはルシエルの言葉に嬉しく思った。
「神様が僕に勇者の素質を見出してくれている」そう感じ取ったからだ。
「ここへ来たと言うことは、やはり学院に入学するためにですよね?」
「は、はい! 僕、絶対に立派な勇者になります!!」
「勇者に、ですか......」
ルシエルはアルトを見つめる。
その瞳にはどこか興味深そうな色が浮かんでいた。
「貴方なら、きっとなれますよ」
「......え?」
「立派な勇者に、ね」
ルシエルはそう言って、アルトに微笑みかけた。
まるでアルトの中に眠る"何か"を見透かしているかのように――。
「!! ありがとうございます!!」
アルトは満面の笑みを浮かべた。
そんなアルトを見つめながら、ルシエルは心の中で静かに呟く。
――やはりこの子の中には何かがある。
まだ本人ですら気づいていない、特別な何かが。
それが何かはルシエルにも分からなかった。
しかし、思ってしまった。
――この子の未来を、見届けてみたい。
「よろしければ、お茶でも飲んで行かれませんか? アルト様とお話してみたいです」
「アルト様だなんて......。僕はどこにでもいる田舎者です。"アルト"と呼んでください」
「未来の勇者様なのですから......ですが、分かりました。お言葉に甘えます」
ルシエルがそう言うとアルトは、パァっと笑みを輝かせた。
「ルシエル。騙されるなよ? そいつは意外と頭が回る。ずる賢いヤツだ」
「ゼッツじーさん? 僕に恨みでもあるのかな......?」
アルトはゼッツをジトリと睨みつける。
ゼッツは「おぉ、怖い怖い」と身震いをする。
そんな二人のやり取りを見て、ルシエルはクスリと笑みを零す。
とてもではないが、元聖騎士長と勇者候補性とは思えないからだ。
「さぁ、続きは中で。アルト。後で貴方に会わせたい人がいます。」
「会わせたい人?」
「それは、会ってからのお楽しみです。先ずはお茶にしましょう」
ルシエルに導かれアルトとゼッツは教会の中へと進んで行った。




