第25話
入学式が無事終わると、生徒達は一斉にクラス分けの掲示板へと向かった。
「えっと......僕の名前は......」
人混みの中、背伸びをしながら、アルトは自分の名前を探す。
すると――。
「おう、アルト! クラスは見つかったか?」
「......え?」
突然、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
振り返ったアルトは、思わず目を見開く。
そこにいたのは、先程壇上で挨拶をしていたイケオジ、もとい、教皇様だった。
「きょ、教皇様?!」
「ん? アルト、お前マジで気づいてないわけか?」
「......え? 僕の知り合いの教皇様にイケオジはいません!!」
「......お前何気にオレをディスってる?」
アルトは、目の前の人物をジッと観察する。
どこかで見た事があるような......。
そして、ある人物の顔が脳裏に浮かんだ。
まさか――。
「バ、バルタザール様?!」
「おう、バルタザール様だ!」
「ど、どうしちゃったんですか、その格好!!」
「入学式という式典に合わせて、きちんとするのは当然だろう?」
アルトの知るバルタザールと、今目の前にいるバルタザール。
......まったくもって別人である。
そもそも、今この格好が出来るなら――。
「なんで普段からちゃんとしないんですか!! それならルシエル様も苦労しないでしょうに......」
これはもう、魔法を使ったのではないかというほどの変貌ぶりだ。
整えるというレベルではない。
「いやぁ、めんどくせぇじゃねぇか」
「......もう、なんだか頭が追いつきません......」
「ガッハッハ! まぁ、慣れろや!」
「何にですか?!」
アルトが思わず叫ぶと、バルタザールは腹を抱えて笑い始めた。
......本当にこの人が教皇様で大丈夫なのだろうか。
いや、教皇様として立派なのは知っている。
知っているけれども――!!
「ところでアルト。クラスはもう見つかったのか?」
「......これからですけど」
「ほーほー! 青春だなぁ」
「まだクラスすら分かってないんですけど?!」
「いいじゃねぇか! いやぁ、若いっていいなぁ」
バルタザールは、なぜかしみじみと頷いている。
......なんだろう。
普段はこんな調子なのに、時折、アルトを見る目が優しくなる気がする。
「......バルタザール様?」
「ん? どうした?」
「......いえ。なんでもありません」
気のせい、かな。
そう思い、掲示板に視線を戻した、そのときだった。
「おう。そうだアルト」
「はい?」
「学院生活、楽しめよ。お前がいい勇者になるのを楽しみにしてるぜ!」
「! はい!!」
「アルトー!! オレ達三人、同じクラスだったぜ!!」
「ホント?! これからよろしくね!! それじゃあバルタザール様、また!!」
アルトは、バルタザールに頭を下げると、セドリックとガイゼルの元に駆け寄っていった。
その背中を、バルタザールは静かに見送っていた。
「......あの赤ん坊が、立派になったもんだな」
誰にも聞こえないほど小さな声で、彼はそう呟いた。




