第24話
アルトはしょんぼりとしながら、冷めた朝食を見つめていた。
向かい側ではセドリックとガイゼルがガミガミと小言を言っている。
「......二人とも過保護すぎるよ」
「「お前に危機感がなさすぎるんだ!!」」
「ヒェエ......」
いつの間にか賑わっていた食堂は閑散としていた。
......二人は朝食を食べなくてもいいのだろうか。
入学式には間に合うのだろうか。
そんな考えが顔に現れていたのか、二人はため息をついた。
「いいか? アルト。お前はもっと自覚を持つべきだ。さっきみたいなことはもうしないでくれ。心臓がいくつあっても足りない」
「そうだぞアルト。勝負したければこのオレ様が相手になってやるから......」
「......ガイゼル」
セドリックは、自分でもビックリするほど低い声を出した。
しかし、今気にするところはそこではない。
アルトの危機感のなさについて、だ。
「......オレはお前に何かあったらと思うと不安なんだよ」
「セドリック? どうしたの? 何言って......」
「......いや、何でもない。とにかく! もう騒ぎは起こさないように! いいな?」
「はい......」
こうして三人はようやく朝食を食べ始めることができたのであった。
***
「これより、入学式を始める――」
こうしてようやく入学式が始まった。
アルトとセドリックは真面目に教師の話や来賓の挨拶を聞いていたが、ガイゼルはあくびを噛み殺すのに必死になっているようだ。
「続いて中央教会教皇様よりお言葉を――」
中央教会の教皇ということはバルタザールか?
まだ教会を出てから間がないのにこの場で再会するとは。
そう思ったアルトだが、登壇した人物を見て疑問を抱いた。
――誰だ? あのイケオジは?
アルトの知っているバルタザールは髭面で酒に酔って顔が赤く染まっている姿しか思い出せない。
しかし、そこには普段のだらしないバルタザールの面影など微塵もない。
背筋を伸ばし、穏やかな笑みを浮かべ、まるで聖人のような佇まい。
「――皆さんが無事立派な勇者になることを心から願っております」
......うん。別人だ。
アルトはそう結論づけた。
「最後に学院長からのお言葉」
学院長が登壇すると、辺りの空気が変わった。
なにせ彼自身も元勇者であるからである。
「この学院は、勇者を育てるためだけの場所ではない。己の力を知り、仲間を信じ、弱き者を守る――。その覚悟を持つ者こそが、勇者と呼ばれるに相応しい」
学院長の言葉にアルトは強く惹かれた。
真剣な眼差しで話を聞いていると、アルトは学院長と目が合った。
――今、微笑みかけられた?
アルトはそんな気がしたものの、一瞬の出来事だったため真偽は分からない。
そして、新入生代表としてセドリックの名が呼ばれ、セドリックは立派な新入生の挨拶をした。
(やっぱり、セドリックは凄いなぁ)
(セドリックのヤツ格好つけやがって)
そうして何事もなく、無事入学式は終わったのであった。




