第23話
今日はいよいよ入学式。
真新しい制服に袖を通したアルトとセドリックは、朝食をとりに食堂へと向かう。
そこへガイゼルが合流してきた。
「おはよう、ガイゼル」
「お、おぅ。......はよ」
「意識しすぎるなバカゼル。お前のせいで秘密が漏れたらどうしてくれる」
「!! す、すまねぇ。......って、バカゼルってなんだよ!!」
「朝から元気が有り余ってるなぁ」と、アルトは思いながら廊下を歩く。
三人揃っていると、その容姿の良さから他の生徒達の視線を奪っていく。
セドリックとガイゼルはその視線を鬱陶しく思いながら、アルトを守るようにして囲っている。
まるで、お姫様を守る騎士のように。
「ねぇ。そこまでしなくても大丈夫だよ?」
「いや、またいつ昨日のようなことが起こるか分からない。警戒しておいて損はない」
「そうだぞ、アルト。今度はオレ様も守ってやっから」
「......そんなことばかりじゃ疲れてしまうよ......」
アルトは深いため息をつく。
......まったく。
ガイゼルはともかく、昨日一緒だったセドリックまで過保護になるとは......。
アルトは今後の学園生活、先が思いやられるなと遠い目をする。
「......二人とも。まさか僕に友達を作らせない気?」
「「友達なんているか?」」
......ダメだ。この二人。
このままではせっかくの学園生活、ボッチになってしまう。
そんなのは絶対に嫌だ。
そう思ったアルトは、「あ!!」っと大きな声を出し、空を指さす。
セドリックとガイゼルは思わずその方向に視線を向ける。
――今だ。
アルトは自分から注意が逸れた隙を突き、猛ダッシュで二人から逃げ出した。
***
晴れて一人になることに成功したアルトは、食堂で大量の料理をトレーに乗せ空いている席を探す。
どこも満席だったため、誰か相席をしてくれる人はいないかと辺りを見渡すと、突然肩をトントンと叩かれた。
「君がアルト・レイン君?」
「は、はいそうです」
「席がなくて困っているんでしょう? オレらの所に来る?」
「え! いいんですか?!」
「困っているかわいこちゃんを放ってはおけないよ」
アルトは「かわいこちゃん......」と呟き困惑したが、お言葉に甘えて相席させてもらうことにした。
......しかし、案内された席にいたのはガラの悪そうな生徒達。
アルトはやっぱり遠慮しようかと思ったが、先程の生徒に無理矢理席に座らせられた。
「お前がレベル四のアルト・レインか?」
「女見てぇに細いな」
「ホントに勇者になれると思ってるんでちゅかぁ?」
好き勝手に言う男達にアルトはキレた。
「......そんなに言うなら試してみます?」
「あぁ?」
「勝負してあげますよ。腕相撲とかどうです?」
アルトの発言に辺りは静けさに包まれた。
しかし、それも一瞬で、次の瞬間には嘲笑が湧き起こった。
「その細腕でオレらに勝てると思ってるのかぁ?」
「面白れぇ。買ってやるよその勝負!!」
「......手加減は必要なさそうですね。それじゃ、どなたからでもどうぞ?」
***
「アルトのヤツ! 足も早ぇのかよ!!」
「早く保護しなければ!!」
「って、おい。食堂の一角に人だかりができてんぞ?」
セドリックとガイゼルが食堂に着いた時には食堂はとてつもない盛り上がりを見せていた。
何なら、シェフ達まで出てきている。
二人は人だかりを掻き分けていく。
すると、中心にはアルトがいた。
「いってぇ!! お前その細腕にどんだけ力隠してんだよ!!」
「今のところ負けなしじゃねぇか!!」
「さぁ、他に挑戦者は?」
「次! 次オレがやるぜ!!」
「いやオレが......!!」
セドリックとガイゼルは唖然とした。
何せ、アルトが男達相手に笑顔で腕相撲を組んでいたのだから。
しかも、一人や二人ではない様子。
「まだまだ!! 腕相撲で僕に勝とうなんて百年早いよ!!」
「いけー! アルト!!」
「負けんなよアルト!!」
気づけば、アルトを応援する声が多く上がっていた。
「......」
セドリックは、そんな光景を黙って見つめていた。
アルトが、自分達以外の生徒達と楽しそうに笑っている。
それを見て安心したような――。
それと同時に、胸の奥が妙にざわつくような。
「......なんだ、この感覚は」
「セドリック?」
「......いや、何でもない」
そんなことよりも――。
「「アルトぉ!!」」
「ヒェッ!! セドリック!! ガイゼル!!」
二人の声にアルトの顔が引きつる。
「ヤベェ二人に見つかった!! アルト! この勝負はまた今度な!!」
「あ、ちょっと!!」
「幸運を祈る!!」
こうして、生徒達とすっかり打ち解けたアルトだったが......
セドリックとガイゼルによって、説教をされることとなったのであった。




