第20話
「なぁなぁ、アルト。今度手合わせしよう!! 俄然お前に興味がわいた!!」
「アルト。気にしなくていいから。そもそも、初対面で名乗らないのはどうかと思うしね」
「ハッ!! そうだった。悪い。オレ様はガイゼル・グランフォード。ガイゼルって呼んでくれ」
ガイゼルはそう言うと、アルトに握手を求めてきた。
アルトはそれに応えようと手を差し出すと、ガイゼルは握った手をブンブンと振った。
が、一瞬でそれも止まる。
アルトが謎に思っていると、ガイゼルはアルトの手をまじまじと見つめ始めた。
「......アルト、お前の手......」
......まずい。女の手だとバレたか?
アルトとセドリックは冷や汗をかく。が、その心配はなかった。
何故なら......
「お前の手、努力をしてきた手だな! いいことじゃねぇか!!」
と、的外れのことを言ってきたのであった。
アルトは自分の努力を褒められるとは思わず、頬を紅潮させ、笑みを浮かべた。
「......ありがとう。ガイゼル」
「!! ......お、おう」
――可愛い。
ガイゼルは自分が抱いた感想に戸惑ってしまう。
......男相手に可愛いはないだろう、と。
その邪念を振り払うように頭をブンブンと振る。
そして、ガイゼルは「ここで会ったのも何かの縁!! 飯一緒に食おうぜ」と誘ってきた。
「悪いが、お前と食う飯はない」
「いいじゃん、セドリック。僕、友達は増やしたい!!」
「別に嫌ならセドリックは来なくてもいいぜ? そん時はオレ様とアルトの二人で食う」
「アルトが心配だから、仕方ない」
こうして、夕飯の約束をしたアルト達はようやく寮の部屋へと向かうのであった。
***
「アルト、それにしても良かったのか?」
「ん? あぁ、ガイゼルのこと? 大丈夫だよ。僕のこと女だとバレてなかったみたいだし」
「......いや、それにしても......」
セドリックは懸念していた。
――あの時のガイゼルの顔......男女関係なく興味を持ったに違いない。
"アルトを守るのはオレの役目だ"。
その思いが心を占めていた。
「セドリック? どうしたの? 怖い顔になってる」
「!! あぁ、すまない。少し考え事をしていただけだ」
「そう? もし、手伝えることがあったら言ってよ?一人で抱え込まないで? ね?」
「......ありがとう」
この時はまだ、セドリック自身も気がついていなかった。
――このアルト・レインという伝説の勇者の力を継承する少女に、特別な想いを抱いていることに。
***
「あの、アルト・レインとかいう落ちこぼれ、セドリック様だけじゃなくてガイゼル様にも......レベルが低いくせに媚びやがって」
「......ちょーっと痛い目見せた方がいいんじゃない?」
「と、いうわけで、君らにはアルト・レインを痛めつけてもらうよ?」
「へっ!! 任せときな!! 溜まるもん溜まってんだ。相手してもらいたいもんだねぇ」
――不穏な会話が人知れず交わされていた。
だが、そのことに、食堂でバカ食いをしているアルトは気づきもしなかった。




