↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル4の落ちこぼれ勇者候補、死にかけたら勇者の力が覚醒しました  作者: 朱音小夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/25

第18話

 ***


 日々は過ぎ、いよいよ入寮の前日となった。

 教会に来てから、毎日の剣術の鍛錬を怠らずに続けてきたし、お世話になっているお礼と称して教会の雑務もこなしてきた。

 学院に入れば一般教養なども学ぶことになっている。

 それがアルトにとっての楽しみの一つであった。

 ――今まで勇者伝記しか読んでいなかったから、今からドキドキのワクワクである。


 今日はルシエルについてきてもらって、明日の準備の買い出しに出ていた。

 ......服は男装がいいと言ったのにも関わらず、バルタザールの要望により、ひらひらのワンピースを身に纏っていた。


「アルト。疲れてませんか?」

「......疲れてはいませんが......視線が痛いです。やっぱり変、ですよね?」

「んんっ!! 変だなんてとんでもない!! 華麗で可愛らしいですよ?」


 ルシエルは顔を赤らめながら、アルトを見た。

 今まで教会でも女の格好はしていなかったため、ルシエルにとっても新鮮だ。

 ――なんて愛らしい。

 ルシエルは思わずそんな感想を抱いてしまった。


「アルト。すみませんが、少しこちらで待っていてくださいますか? 買い忘れがあったようで......」

「それなら僕が」

「いえ。少しですから。アルトは休んでいて下さい。足、痛いんでしょう?」

「!!」


 ルシエルは目ざとい。

 アルトが足を痛めていることに気がついていた。

 ......どうしてこんなに紳士な人がモテないのだろう?

 アルトはバルタザールの"童貞"発言をしっかりと覚えていた。

 シスター達にもモテそうなのにみんな興味なさそうだったしなぁ。

 そんなことを考えながら、ベンチに座っていると、目の前で黒ずくめの男性が蹲った。


「だ、大丈夫ですか?!」

「あ、あぁ。すまない。普段、こんな明るい日の下を歩かないものでな......」


 アルトはなんだか、その黒ずくめの男に懐かしさを覚えた。

 ――「......にしてね?」

 これは......記憶の断片?


「ありがとう。もう大丈夫、だ......」

「あ、えっと......違ったらすみません。どこかで会ったことはありませんか?!」

「......いや、初対面だ」

「......そう、ですか。すみません!! 足を止めさせてしまって!!」


 アルトはそう言うと、男の進路を開ける。

 男はアルトの姿を見ると、フッと笑った。


「謝ることはない。手間をかけさせて悪かったな」


 男はアルトの頭をポンと撫でた。

 その掌は温かいようで......どこか冷たかった。


「......できることなら、また会おう。――アルト」

「え?」


 アルトが顔を上げると男の姿はもうなかった。

 ――まるで夢でも見ていたようなものであった。

 今、男は自分の名前を呼んだ。

 気のせいではない。


「アルト!! すみません。遅くなりました」

「い、いえ!! 大丈夫ですよ? さ! 帰りましょう」


 アルトは男のことを記憶の片隅に留めた。

 ――忘れてはいけない、そんな気がして。




 ***


「アルト......あんなに美しく育って......」


 黒ずくめの男――クロヴィスは遠ざかっていくアルトの背中を見つめていた。


「決して誰にも渡さぬ。お前が言ったのだぞ? 『お嫁さんにして』と......」


 その口元に、僅かな笑みが浮かぶ。


「......しかし、久しぶりの人間界はキツイものがあるな」


 クロヴィスは小さく息を吐く。

 どうやら、目的は果たしたらしい。


「――魔界に帰るとするか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。