第17話
「アルト。すまねぇが、ちょっくらルシエルと話があるから先食っててくれや」
「? 分かりました」
そう言うと、バルタザールはルシエルの腕を引っ張り廊下へと出た。
ルシエルもバルタザールの様子に、ただ事ではないと思い、静かに従った。
「......学院からの手紙にはなんと?」
ルシエルがそう問うと、バルタザールは手紙をルシエルに見せた。
するとルシエルは驚きの表情を浮かべる。
「......これ、本当なんですか? いや、なら神託が間違っていなかったということになりますね......」
「そう言うこった」
「......でも、なら何故レベル測定は間違えていたのでしょうか?」
「覚醒していない状態だったからじゃねぇかな?」
そう言うとバルタザールは煙草に火をつけた。
ルシエルは、またか、と呆れた表情を浮かべる。
「......それでも、女なのに数値が出たってことは、封印が弱まっている可能性がある」
「そもそも、誰が封印なんかしたのでしょうか?」
「先代教皇が怪しいな。聖女様の出産にも立ち会ってたからな」
「......バルタザール様はその時......」
「司祭だ。......聖女様には良くしてもらったよ。お前もそうだろう?」
「私は......幼かった故、あまり記憶がありません。ただ、貴方様から聞かされたことをアルトに伝えただけで......」
バルタザールは遠い記憶を懐かしむように煙をふかした。
そこでルシエルはふと、疑問を持った。
「......アルトの実の父親って誰なんです?」
ルシエルがそう問うとバルタザールは煙草を消した。
「歴代でも指折りの実力を持つ勇者様だよ。病気を患い亡くなったがな」
「......そういうことでしたか。それで叔父であるガル様が父親として育てたというわけですね」
「そういうこった。じゃなきゃガル様は今も現役だろうよ」
「この教会で保護することは考えなかったんですか?」
「......疑問ばっかりぶつけてきやがって」
そう言うと、バルタザールはルシエルの頭を軽くたたいた。
「妊娠中の聖女様からの願いだよ。"腹の子を普通の人間として育てたい"ってな」
「まぁ、当の本人はそんなこと望んでなかったようだが」そう言うと、食堂にいるアルトへ視線を向けた。
「さ、オレも腹減ったし朝飯食おうぜ」
「はぁ。貴方様のマイペースさにはついていけませんよ......」
そうして二人はアルトの元へと戻る。
......テーブルの上にはおおよそ一人で平らげたとは思えないほどの皿が積まれていた。
「ア、アルト? これは一体......?」
「? ご飯ですよ?」
「そうじゃなくてだなぁ......。この空皿の量はなんなんだ?!」
バルタザールは思わず声を荒げる。
ルシエルは、試験日の朝食を思い出した。
......あの時もかなりの量を食べていたが、"普段の半分"と言っていたなぁ、と遠い目をした。
二人はこの空皿を見ただけで腹がいっぱいになったのであった。




