第13話
***
「セドリック。改めてごめんね? せっかく友達になってくれたのに......」
「? アルト?」
「嫌、でしょう? 女であることを偽ってる癖に友達とか......」
アルトは歩いていた足を止め、下を向いてしまう。
王都に出てきて初めての友達をもう失うのか......。
そう考えるとアルトの大きな瞳に涙の膜が張った。
瞬きをすると、涙がこぼれてしまいそうだ。
「アルト。オレは勇者になりたいという強い想いを持つお前を尊重する」
「え......?」
「だから......その、友達であることに変わりはない。......むしろ頼ってくれ、オレを。一人で隠し通すことは難しいだろう?」
「......いい、の? 僕が友達で」
セドリックはアルトの肩に手を置くと、目線をアルトに合わせた。
そして笑みを浮かべ、アルトに語りかける。
「オレはアルトがいい。オレに守らせてくれないか? アルトの秘密を知る者として」
「セドリック......。ありがとう。嬉しい。でも、守らなくていいよ? 僕は対等でいたい」
「......強いな、アルトは」
セドリックは学院長との約束を思い出す。
――アルトが女であることも、
"伝説の勇者"であることも。
「決して誰にも知られてはならない」と。
アルトは嫌だろうが、自分しか彼女を守れる者はいない。
他の誰にもこの役割は渡さない。
......なんだろう? この気持ちは。
「セドリック? どうかした?」
「い、いや。大丈夫だ。......それより、アルト。寮に入るまでどこに住んでいるんだ?」
「僕? 中央教会にお世話になってるんだ」
「中央教会?! ......あそこの教皇はヤバいヤツだと噂されているが......」
「ヤバいヤツ?」
セドリックは、教皇についてアルトに話し始めた。
なんでも、教皇であるにもかかわらず、酒に煙草、賭け事にだらしがない道楽者らしい。
......そのような人間が教皇になれるのか? と、アルトは疑問に思った。
しかし、セドリックが嘘を言うとも思えない。
「そうなんだ。まだ会ってないから、ルシエル様に聞いてみようかな?」
「ルシエル......たしかトップの司祭がそんな名前だったな」
「ルシエル様のお陰で滞在を許可してもらえたんだ!」
アルトは嬉しそうにルシエルの話をする。
......なんだろう。自分しか知らないアルトがいるはずなのに、自分以外が知っているアルトがいるのが面白くない。
セドリックは自分の中に芽生えたアルトに対するこの感情が分からないでいた。
「アルト。今日はもう教会に帰るのか?」
「え? うん。帰りが遅くなると心配されるから」
「......面白くないな」
セドリックは思わずポツリと呟いた。
その呟きは、アルトには届いていないようだった。
セドリック自身も自分の呟きに驚いた。
――今、自分は面白くないと思ったのか?
何故、そんなことを思ったのだろう。
「セドリック! ほら、帰ろう!」
「あぁ......」
アルトの笑顔に、セドリックは小さく頷いた。
今はまだ、この気持ちに気づかなくてもいい。
――自分はこの少女を守っていければそれでいい。




