第12話
「ん......ここ、は?」
「目を覚ましたか。アルト・レインよ。ここは学院長室だ」
「アルト......良かった、目を覚まして」
「セドリック? ......僕なんでここで眠って......?」
アルトは混乱していた。
無理もないだろう。
力に目覚めたばかりなのだから。
「......僕、記憶が曖昧なんだけれど。......グレイウルフの群れはどうなったの?」
「あ、あぁ、それなら異変に気付いた先生方が退治してくださったよ」
「良かったぁ。それで......僕はどうして気絶したんだろう?」
セドリックはその問いに対する答えに困っていると、学院長が助け船を出してきた。
「どうやら強い邪気に当てられてしまったようでな。そなたは困るであろう?他の者と一緒にいさせられるのは」
「え......と。それって」
「もう分かっておる。性別を偽るなんぞ、学院始まって以来初めてであるぞ?」
「「え」」
流石は学院長である。
だが......セドリックも驚いたと言うことは......
「学院長先生。セドリックはその......知りません。僕が女であることは」
「なんと!! てっきり知っているものとばかり......すまんな」
アルトはセドリックを見ると、セドリックは顔を真っ赤にさせていた。
......怒ってしまっただろうか?
「セドリック? ごめん。内緒にしてて。僕、どうしても勇者になりたかったんだ」
「い、いや! 謝る事は無い。――オレで良ければ力になる」
「セドリック......ありがとう。学院長先生も。ありがとうございます」
アルトが二人に礼を述べると、二人は笑顔を浮かべた。
学院長は「礼を述べることはない」と長い髭を撫でつける。
「二人も。もう遅いから早く帰りなさい。......もう度胸試しなどしないように」
「「......はい」」
アルトとセドリックは学院長に挨拶をし、学院を後にした。
***
「......まさか、この時代に現れるとは思いもよらんかった」
学院長は窓から学院を去る二人を見送りながら呟く。
「これからが楽しみだ。ホッホッホ」
***
「ついに、ついに目覚めたか勇者よ!! この時をどれほど待ちに待ったことか......」
暗い暗い闇の中、男、"魔王 クロヴィス・ディアス"は興奮気味に立ち上がった。
「生まれ変わってからと言うものの......名ばかりの勇者ばかりであったが、お前は違う!! お前は"真の勇者"だ!!」
「まおうさまー!! ご乱心! ご乱心!」
「......うるさいぞ、ジャック。焼き鳥にされたいか?」
「だまる! ジャックはなにもいいません!!」
クロヴィスは、ガラスケースに飾られた花を見ると、うっとりとしながら花を見つめる。
――それは何年も前に人間界に視察に行った時に出会った少女に貰った大切なもの。
少女の名前は"アルト"。
「アルト......ようやくお前を迎えに行ける。待っていろ」
この時、クロヴィスは思いもよらなかった。
――まさかそのアルトが、目覚めた勇者であることに。




