第10話
「な、なーんだ。所詮田舎もんが勇者を志すなんて夢の見過ぎにも程があるってもんだ!!」
「そ、そーだそーだ!! きっと剣技試験もまぐれだまぐれ!!」
周りの心ない言葉がアルトの心をずたずたに切り裂いていく。
セドリックはそんなアルトを見て、なんて声をかけていいか分からなかった。
しかし、折角友人になってくれると言ったアルトに自分が寄り添わないでどうする。
セドリックは、アルトの元へと行きアルトの肩を抱く。
「......セドリック、どうしよう。まさかレベル四だなんて......」
「アルト......。レベルは入学後成長するから、そう落ち込む事は無い」
「......うん」
こうして入学試験は全て終了となった。
入学式は一週間後。
それまでアルトはルシエルのいる中央教会でお世話になることになっている。
――ルシエル様になんて言おう。ゼッツじーさんにも。
そんな事を考えていると、大柄な候補生が声をかけて来た。
「おい! レベル四!! 特別に今夜行う度胸試しに招待してやるよ」
「......度胸試し?」
「あぁ! 持ち物は剣だけ! 学院の裏山でするから、逃げんなよ」
「......そんな勝手なこと......」
「セドリック様も良ければどうぞ? これは代々候補生に受け継がれた"伝統"ですから」
アルトは悔しかった。
だからどこでもいい。
自分の実力を見せつける場所が欲しかった。
「......いいよ。行ってあげる」
「お! そーこなくっちゃな!!」
「アルトが行くならオレも行くよ」
こうして、伝統なる"度胸試し"に参加することになったのであった。
***
そして夕方、学院の裏山。
参加しているのはアルトとセドリックを含めた十人ほどだった。
「アルト、大丈夫か?」
「セドリック。うん。大丈夫だよ! ありがとう」
セドリックから見てアルトは空元気だ。
――それにしても、この裏山は魔の空気が滞っている。
アルトもセドリックもそれは感じ取れた。
何も感じていないのは、アルトをバカにしていた連中だけであろう。
「......アルト」
「うん。ここに魔物が蔓延ってる。気をつけないと......」
その瞬間だった。
アルトは魔物に囲まれたのを感じた。
「待って!! 進んじゃダメだ!! 囲まれてる!!」
「ハァ? レベル四が何言ってんだよ! もしかして怖いんでちゅかぁ?」
「危ない!!」
アルトは駆け足で候補生に近づくと、剣を抜き候補生に近づいていた魔物に切りかかった。
候補生は尻もちをつき、ビクビクと震えている。
そして、立ったかと思うと、「う、うわあー!!」と叫びながら下山していった。
残ったアルトたちは、今の叫び声で集まったグレイウルフの群れに囲まれた。
「クソッ!あのバカが叫んだせいでこんなに......」
「セドリック。群れの数が凄い。ここは撤退するしか......」
「へっ!! お前らビビりすぎ!! このくらい討伐出来なくて勇者になんかなれるかってんだ!!」
そう言うと突っ込んでいく候補生達。
仕方なくアルトとセドリックも参戦するが数が多すぎて、歯が立たない。
――どのくらいの時間が経っただろうか。
もうみんな疲労困憊で立っているのがやっとであった。
その時だった。
セドリックに襲い掛かる影を見たのは。
ダメだ、間に合わない。
僕の元にも何匹か襲い掛かってくる気配がする。
――もうダメだ。
ここで僕の夢は途絶えるのか。
そう覚悟したその時だった。
剣を構える僕の右腕が白く光り出した。
そして僕の脳裏に語りかけてくる声が聞こえる。
『――さあ、今こそその封印を解き放つ時だ』




