ディスカバー
デウスは学園の廊下を1人歩いていた。その表情は何やら上の空。
神器の隠し場所が学園長室や地下とかパッと見ただけではわからないところにあるはずなのに、自分の身近な存在の図書館にあるというのはどうにも現実味がなかった。
“メーティス図書館”
この建物はなん度見ても圧倒される。国内最多の所蔵数を誇るだけあって、建物自体は地下二階から地上5階にかけて大きく聳え立っている。デウスは今朝本を借りたばっかだが、神器があるような気配はなかった。
地下にあるのかと考え、階段を降りていく。地下は本棚というよりも倉庫という方が正しいように感じる。
デウスには確証があった。デウス自身、この図書館には常連であり、この地下階以外の全フロアは構造まで把握している。
地上の階層には絶対に隠す場所などないと、あるとしたらこの地下階のみ。
デウスはくまなく調べていくが、怪しい扉や装置、仕掛けなどは見当たらなかった。さらに地下階からは学園常駐の聖騎士が巡回している。下手に動くと怪しがられて、最悪出禁になってしまう。なので慎重に行く必要があった。それも相まって成果は乏しい。
(どこ探しても怪しいところ一つ見つかりやしない)
デウスは気づいたら地下一階は全て見終わっていた。残るは最下層である地下二階、だがここに所蔵されているものは歴史的価値のある文献や資料、芸術作品しか置いていない。それこそ神器が置いてそうなところではあるが、そこには神器は置いていない。なぜなら入学時に学内見学で入り口からではあるが一度見ていて、神器があるという説明は受けていない。この階を使用するにはそれなりの理由と、入るに値する人物なのか、責任は取れるのか、という今のデウスでは門前払いされ、さらに観察対象になりかねない。
入り口には聖騎士が立っており、もちろん巡回警備もしている。
とてもじゃないが地下二階に侵入し、さらに見つからずに神器を探さなければならないとなると無謀である。
(最悪、神闘技で対応できたり… そんなわけないか)
デウスの実力は成績はいいが、相手は聖騎士、ただの騎士ではない。天からの加護を受けている者、『天技』というこの世界における魔法のようなものを極めた者、剣術などの直接的な戦闘が得意な者、などなど、国や教会によってその実力を認められた他者たちである。いくら一つの学園に常駐という立場であっても一端の学生が敵うとは考えられない。
『チャンスがあるのなら何かを犠牲にしても自分のものにするべきだ』
ふとライルの言葉が脳裏が過ぎる。
「お前、ここの生徒か?誰から許可をもらってここに来た?」
突如前方から男の声が聞こえた。
デウスが辺りを見回すとそこは先までいた場所とは
デウスは気づいたら地下二階の書庫の前にいた。
「えっ、いやっ、ちょっと見学を…」
(?なんで?なんで俺はここに?)
「見学?見学は基本実施してないし、許可がない限りこの場所に立ち入ることも禁止されている。
誰からの許可だ?そういう旨通達はないんだが、」
咄嗟に言い訳をしたが、やはり上手くはいかなかった。このままでは目をつけられてしまう。
(強行突破かしかないか、意外と不意打ちだったら抜けれたりして)
『天技 加速・二重』
デウスがその場から姿を消す。ライルとの試合でも使った技である。天技を幾重にも掛けることでその威力はどんどん倍になっていく。単純ではあるが、使用者には負荷がかかりやすい。なので通常掛けれるのは二重までだとされている。
デウスは確認を取りあっている片方の聖騎士の肩に手を掛け、そこを支点に回転をかけて減速をする。『加速』にはブレーキは付いていない。なのでぶつかるか、何かを支えにして止まるしかない。
咄嗟の行動だったおかげか聖騎士2人の間を抜けることに成功した。
「貴様!何をしてる!」
聖騎士の怒号が静寂だった地下に響く。
巡回の聖騎士も気づいたようだ。事態を確認にこちらに向かってくる。
「ごめんな、だが俺にはやらなきゃいけないことがあるんでな」
デウスはこのままでは八方塞がりになると考え、聖騎士に構わずに奥へと走り出す。
価値あるものばかりを収容しているからか、この階では所蔵品は碁盤の目のように縦横綺麗に並べてある。
これはデウスに取って都合が良かった。『加速』を使って、間違ってもこの所蔵品にぶつかるという心配はないし、角を支点に回転をかけて方向転換も可能だから聖騎士の視界から消える分には申し分ない。
そう思った矢先だった。
『天技 聖なる一筋』
聖騎士の手から魔法陣が展開され、一本の光が触手のようにデウスを追尾して迫ってくる。
デウスは光から逃れようとフロアを縦横無尽に駆け回る。だが、デウスは『加速・二重』のままでスピードは一定のままである。それなのに光はどんどん加速していく。
流石聖騎士、と言ったものだ。『聖なる一筋』は『加速』と同じように基本的な技ではあるが、聖騎士の手にかかればどれほど入り組んでいても確実に捉え、スピードも上げて対象を確実に捕獲する。
(このまま逃げていてもそのうち捕まることは必至。しかも包囲されたら今度は強行突破では済まない。早く神器の所在の手がかりを見つけないとどんどん不利になっていく…)
デウスは何かをひらいめいた顔をした。
所蔵品のケースの角に手をかけると天技を解除し、減速を始めた。
そして完全に動きが止まると、体の向きを180度変えて迫り来る光の方を向く。
右の腕を上げたかと思うと拳を握りそのまま光目掛けて走っていく、
「バカめ!『聖なる一筋』に直接触れると神気を吸収し、天技による抵抗を無力化することができる!」
デウスはそんな煽りも右耳から左耳に流し、猪突猛進で突っ込んだ。
デウスの拳が光の線に触れた瞬間、光がつる草のように腕に巻きつく。光がある程度腕を固定したところでデウスは再び走り出した。
(『聖なる一筋』は神気を吸収する。ならば神器の微かな神気も感知できるんじゃないか?)
光を腕に固定することで『聖なる一筋』は拘束を完了しデウス自身を追跡する必要はなくなり、デウスの神気を吸収する。つまり今、『聖なる一筋』は神気を感知、吸収することに特化した天技になった。
聖騎士はフロアの外側からゆっくりと中央に向かって各方位から近づいてくる。その足取りは慎重だった。
いくら鎧の上でも神気を感知されてしまえば術者以外誰構わず吸収してしまう。
本来、予定にない来訪者で不審な行動をとったものに対しての想定では天技での確実且つ早急な拘束する。だがデウスの身体能力と環境適応能力がその想定を上回った。さらに天技を利用されて迂闊に動くことが困難になった。
デウスは狭まっていく自身の行動範囲に注意しつつ、光の反応に集中する。息が切れそうになっても、走りっぱなしで気持ち悪くなっても探すを諦めない。
疲労感で瞼が暗く閉ざされかけたその時、中央にある一つの所蔵品が視界に入る。他の所蔵品とは違い、隣り合う所蔵品との距離が広く取られており、一際その存在感を放っていた。
それを見た瞬間、風前の灯火だったデウスの意識が再び駆り立てられる。デウスはすぐさま床の光の線を見る。その中央の所蔵品の周りで何重と重なった光の線は小刻みに跳ねている。改めて見ると魚が普段の海という限られた世界から陸という別次元の世界を目の当たりにしたようだった。
まさかと思い、その所蔵品を見たが、それは輝きを四方八方に撒き散らし、見た者全てを虜にさせてしまえるのではないかと思えてしまう。これは確かどこかの東方の国からの交友の証としての贈り物で、純金で作られたものだと。それだけは歴史の教科書に載っていた。
“純金とはいつも人々の欲望が集まる者だ”とふとデウスの記憶から思い出される。つまりこれから神気が発せられるはずはない。したがって神器はこの下、つまりさらに地下深くに所蔵、いやここまでの深さと厳重さとなれば封印という可能性も考えられる。
だが今1番の問題は神器が下にあるのは分かったが、どうやって下まで行くかだ。
「貴様、聞こえているのか!先ほどから何度も言っても聞こえてない、もう一度いう!貴様は包囲されている!っおっと、あぶねぇ!」
怒号が再びデウスの耳に入った。包囲したと喚いているが、こちらへ向かってくる足取りには焦りと、触っていけないものを避けるので精一杯だった。
(床か?床の下に隠し通路でもあるのか?空洞があるなら走り回ってる間に気づくはず。よって考えられるのはこの床自体が相当厚いものなのか、魔法陣でも隠してあるのか。自分にできることは前者しかないか。
まぁやってみる価値はある。)
『神闘技 一式 足鎚』
デウスは足を上に向かって振り上げた刹那、振り下ろされた鎚は一寸の狂いもなくポイントにでヒットする。
足に鈍い衝撃が来た後に床を撃ち抜いた感覚が伝わる。デウスはポッカリと空いた穴に顔を覗かせた。
床の厚さはおよそ10センチはある。それほどの厚さのものをデウスは当たり前のように穿っていた。
しかし、その穴からは階段らしきものはなく、他の降下手段はない。深い闇が底なしに続いているだけだ。
「どういうことだ…なぜただの小僧が、厚さ10センチだぞ、そんなもの簡単に打ち抜けるわけがない」
デウスを囲んでいた聖騎士の1人の口から動揺と恐怖が入り混じった声が出てきた。
デウスはこの聖騎士の慌てようでこの穴が下に行くための道であることを確信できた。
デウスが考えにふけっていると、気づけば四方八方に聖騎士がデウスを完全に囲んでいた。その間の距離およそ1メートルとちょっと。皆、剣を構えている。デウスの残された選択肢は一つしかない。
「そんじゃぁな!追ってこれるなら来てみろよ!何があるかなんてしらねぇけど!」
デウスはその身を穴の中に投じた。まるで追い詰められて人生を投げ出した人みたいに。
デウスは偉そうなことを言っていたが、頭で考えるより体が先に動いた。それはなぜかわからない。
ただ、“暗い谷底”まで落下し続ける恐怖と謎の好奇心に比べたら些細な問題だった。
「神闘技 一式 指銛・拾枝」
デウスは高所からの自由落下を踏まえて着地点との衝突を避けるため、手の指を壁に力強く押し当て、落下速度を落とそうとする。幸い穴の幅がデウスの手を途中まで伸ばせるほどの長さだったので無事10本全て壁に付けることができた。
地面との猛烈キスになる心配がなくなり、とりあえず安全になったので、デウスはこれまでのことを整理し始めた。
まず、なぜこんなところが通り道なのか。それとも先ほどの聖騎士の反応も演技でこれは罠なのではないか、しかしそれでは『聖なる一筋』のあれほどまでの反応は説明がつかない。だからと言って普通に考えるのだとしたらまずこんな穴を使って神器を持ち運んだりすることはできない。
つまり、ここはある程度信憑性のある神器への道のりの一つであるということ、そしてここは正規の往復過程ではないということ。
この二つがデウスが導き出した解答だ。
そうこう考えていると、足元から一点の光が見える。デウスはそれを見ると目をいっぱいに見開いて壁に押し付けていた指を一本ずつ力を抜いて外していく。出口が完全に目視できると指を全て離して、再び自由落下をした。しゃがんだ姿勢で着地するとすぐさま辺りを見回す。すると目の前に両開きの門があった。
デウスは息を呑む。自分自身がずっと憧れてきた神器を見れる時が来る。そう思うだけで興奮が収まらなかった。デウスは扉を両腕で取っ手を掴み、思いっきり戸を引っ張る。
途中痺れるような感覚があったが気にしなかった。
扉を完全に開け切った時に目にしたもの。
それは輝いてはいなかった。だが上の純金製の所蔵品とは違ううちに秘めた輝きを感じた。
デウスの目に映るもの、それは紛れもない“神器”そのものだった。
すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(全力土下座)
前回の投稿から一ヶ月…だいぶ期間が空いてしまいました(泣
これには理由があるんです!
実は「超かぐや姫」を初めて見てかぐやロスになっていました。
そのせいで、ことあるごとにモヤモヤに苛まれていまして…
どなたか対処方をお教えください
ですが流石に一ヶ月空くのは良くないので、次はもっと早く投稿できたらいいと思います!
これからもよろしくお願いします!




