第二話 新たな出会い
デウスは放課後、中庭にいた。読みたかった歴史書をゆっくりと堪能している。
デウスは1人でいることが多いが、今日は周りに他の生徒がたくさんいる。
「あん時の技、どうやってやったんだよ」
「どうやったらお前みたいに強くなれるかな?」
「今読んでる本、それ何?」
〝中庭”と言えば友人や恋人同士で仲を深めたりする、いわゆる青春というものを謳歌する場所だと決まっているのだが、
どうやら周りの者はデウスと交友関係を持ちたいわけではないらしい。
「どけ、低脳ども」
突如として普通人に向かって使わないような軽蔑と嫌味と嫌悪感溢れた言葉が、中庭に響く。
声の主はライルだった。
声の主がライルだったからなのか、それともこの場で聞かないような言葉が出てきたかなのか先ほどまでの野次のようなうるささ一瞬は消え去って
「なんでライルがここに?」
「さっきまで医務室で処置してたんじゃ」
「あん時の講義の仕返しかな」
こんどは突如登場したライルに対して陰口が交差する。
「野次馬なら勉強やら特訓でもしてろ!ここにくんな!
それとも俺以上に成績いいのか?それだったらいてもいいぞ。大歓迎だ」
それを聞いた生徒たちはいつものようにその場を去っていった。
ライルは中庭が静かになると、デウスの方へゆっくりと歩き出す。その表情はどんな感情も抱いているのかさっぱりわからなかった。
ライルはデウスの横に腰を下ろそうとすると、デウスは咄嗟に距離を取った。
さっきの試合の仕返しをされるのではないかと
「お前、筆記の成績悪いんだって?」
デウスは体をぴたりと止めた。
今の自分に問いかけられるべき事とは180度違う事なのだ。
「なんでそれを?」
デウスの頭の中には疑問があとを絶たない。
この状況で先ほどの生徒たちが言うだけでも驚く事なのに、ましてや成績下位のものには興味を示さず、軽蔑するあのライルが
「質問を質問で返すな。早く答えろ」
デウスは我に返った。ライルらしい答えが返ってきたことに少し安心する。
「うーん、ただ単に頭が悪いというか、勉強に関して努力をしようとしないってところかな」
そう答えた。改めて考えてみると自分で勉強はできないくせに実践授業だけ成績がいい。
好きなものはこの世界の歴史、ただそれだけだ。至って普通の生徒の1人だと思うかもしれないが、
筆記がダメで実戦ができるやつというのはあまり見る類では無い。
「お前、不思議なやつだよな」
デウスはまた自分の耳を疑った。
今日は雪でも降るのか、と思うほどだ。
「んあ?」
間抜けな声がデウスの口から漏れた。
「筆記で成績が悪いやつは総合成績でも常に底辺、卒業どころか明日の退学に怯えるはずだ。
なのにお前は実戦での成績はトップとは言わないが、指を数えるうちにお前の名前が入ってくる。」
「よく言われることだ。」
デウスはこの少し変わった会話に楽しさを感じていた。なにせこの学園に来て初めての“交流”だからだ。
「デウスだったか、知ってるかもしれないが俺の名前はライル・ガエリウスだ」
自分の名前を呼ばれる、ということは講師以外には今までになかった。「お前」とか「君」とかそういう他人を呼ぶときに使う、距離を意識した言い方だ。
デウスはライルが相手の喜ぶことをわかっているような人だと知っていれば、もっと早くいい仲になっていたのに、と思った
「俺もちゃんと自己紹介するよ。俺はデウス・カエド。専攻は聖騎士護衛課だ。」
デウスはこれが正しいライルの行動に対する返事だと考えた。
「デウス、お前よく歴史書読んでるけど、知ってるのか?あの話」
「あの話?」
デウスにはさっぱりだった。デウス自身噂話には興味がないし、ましてやそんなことを教えてくれる仲のいい友など存在すらしない。
「神器だよ」
その一言でデウスはライルが何を言おうとしていたのか、どんなに聞く価値のあることか瞬時に理解することができた。
『神器』
この世界に伝わる神が作ったとされる伝説の武器だ。ここエル・テヴィーナ聖騎士学校にも神器の一部を所持している。
生徒や学園の威厳や象徴とするために存在しているが、滅多に目にすることができない。盗まれたりでもしたら、国家レベルの問題になる。実際、デウスもこの学園に入学してから今日まで一度たりとも視界には入っていない。
まずそもそもどこに保管してあるかなど学園長か神器を守っているごく限られた聖騎士しか知らない。
「神器がどこにあるか知ってるのか!!」
デウスは半分興奮気味で食いつくようにライルに詰めよった。
「まぁ落ち着け。俺も先輩や講師の方々から風の噂で聞きつけただけだ。
だがこういう話は、デウスが1番喜ぶと思ってな」
今までに聞いてきたライルのイメージとはとてもかけ離れていた。デウスはそれを間近で目の当たりにし、ライルに近付いていたが徐々にゆっくりと離れていった。
「どういう風の吹き回しだ。俺も相当成績悪いし、とてもお前のお眼鏡にかかるとは思えないが…」
ライルはため息を吐き、うざったそうに言った。
「もう一度言うが、俺はお前のことを不思議に思っている。言い方を変えれば興味があるってことだ。だから今俺はこうしてお前の前にいる。」
「第一、デウス、お前は頭が悪い。相当悪い。控えめに言っても、馬鹿、アホ、ハゲ、ブス、ド低脳、モテない、陰湿…」
「途中どころか初めから最後まで罵倒じゃねぇかよ!」
デウスは咄嗟に突っ込んでいた。
「言いすぎたかもな。だがこれだけははっきりしてる。お前は何事にも挑戦しない奴だ。だったら、今回の神器の件みたいにチャンスがあるんだったら、自分の身を捨ててでも獲得しなきゃ」
ライルの言葉に妙に納得感がある。そうデウスは思っていた。
「わかった。いってみるよ。それで、その場所ってのは一体どこに?」
「聞いて驚くなよ」
「それはメーティス図書館内部にある」
更新遅くなってすみませんでした。投稿日に関しては不定期ですのでよろしくお願いします。これからも頑張りますので、どうか温かい気持ちで見ていただけると幸いです。




