6話
ロボを抱えてお店でパスタとハンバーグの材料を買っていく。
「おや、リンツちゃん。お買い物かい?あんたもあのゾフィのところに弟子入りしてしばらく経つけど、元気にやっているようで何よりだよ」
「こんにちは、おばさん!ええ!ゾフィさん、ああ見えてとっても優しいのよ」
おばさんは笑って飴をおまけしてくれた。
「いつもありがとう!」
「どういたしまして。こっちこそ、こんな掃き溜めみたいなところにリンツちゃんみたいなかわいい子が来てくれて嬉しいよ」
おばさんはニコニコ笑って私とロボに飴を手渡す。
ロボは食べられないけれど、私の家族って紹介してからロボにも飴をくれるようになったの。
優しい人だわ!
私もニコニコしちゃう!
お礼を言って別れると、少し遅い時間になっちゃった。
私は小走りに急いで帰る。
「ただいま、ゾフィさん!」
「タダイマ、ゾフィ」
「遅い!こちとら捜索願を出そうか悩んでたんだぞ!」
怖い顔のゾフィさんが私達を叱り付ける。
でも、これは愛情を注いでくれているから。
それが嬉しくて、私は怒られているのに胸がぽかぽかしてしまう。
「そんな、三十分くらいしか遅れてないわ。心配性ね」
「ロボを連れているだろう」
私は首を傾げた。
「ロボ?ロボならいつも一緒じゃない。今更なんだというの?」
「……いや、そうだったな」
私は首を傾げるばかりでゾフィさんが小さく、あの事件を知るものはもう少ないか、と呟いたのを聞くことはなかった。
「変なゾフィさん」
「悪かったな。それより、昼食と夜の分は買って来れたのか?」
「ええ!もちろん!」
手提げ袋を掲げて自慢気に披露する。
元からロボと二人旅だったんだもの。
お買い物ぐらい出来るわ!
私から手提げ袋を受け取ると、ゾフィさんはお疲れさんと言ってキッチンへと向かっていった。
「待って、私も手伝うわ!」
私はロボを籠に入れて慌てて手洗いうがいをしてゾフィさんの後について行く。
「今日はパスタで晩ご飯はハンバーグよ!」
「いつまでもお子様舌だねぇ」
「失礼な!」
私は胸を張り上げて高らかに宣言した。
「私は立派なレディよ!」
「出るとこ出てからいいな、お嬢さん」
失礼な!
「ゾフィさんが今でも独身な理由が分かったわ!」
「余計なお世話だ!俺は好きで一人でいるんだよ!」
やいのやいの言いながらゾフィさんと料理をする時間が好き。
メカニックの指導を受けている時間も好き。
だから、ほんの少しロボと二人旅をやめてもうしばらくここにいてもいいかも、なんて思っちゃったの。
「……お前さんは、本当に先輩そっくりだなぁ」
「先輩?ゾフィさんの先輩なら性格が悪そうね」
私がそう言うと、ゾフィさんが笑った。
「そのセリフ、先輩に聞かせてやりたいくらいだぜ」
「ふふふ、ゾフィさんの先輩、私もいつか会ってみたいわ」
ゾフィさんは少し寂しそうな瞳をした。
「そうだな、いつかな」
ゾフィさんは時々ロボや私を見て遠い目をする。
今じゃない、どこか遠く、過去の残影を追い掛けているみたい。
そういう時は私も空気を読んで言葉少なくなる。
ゾフィさんは、ロボのことも知っているみたいだし私に秘密があるみたい。
この数ヶ月で十分分かったわ。
それが寂しくて、いつか話してくれたらいいなって思いながらパスタにソースをかけた。
……ロボが本当は政府にとって何か大切なものなのかもしれないってことも。
だから内緒。
私が天才美少女だから、全部じゃないけど薄っすらと察してしまっていることをゾフィさんが知ったらどうなるのかしら。
籠の中で大人しくしているロボを見ながら、いつか知ってしまうすべてが怖かった。




