4話
「おはよう!ゾフィさん!」
陽もまだ登りきらない時間。
私は作業室で眠りこけるゾフィさんを起こしていた。
腕の中にはもちろんロボ!
何度か揺さぶると、机に顔を埋めていたゾフィさんが起き上がった。
「ふぁ……。ああ、おはよう。お嬢さん」
「ロボを直してくれてありがとう!」
「アリガトウ!ゾフィ!」
ロボは、起きて様子を見にきた私に気付いて自分から私の胸に飛び込んできてくれた。
「ああ。俺も久々にそいつのメンテナンスが出来て面白かったぜ」
「久々?」
私は首を傾げる。
ロボとゾフィさんは知り合い?
「いや、なんでもない。顔を洗ったら朝食を作ってやる」
「私も手伝うわ!」
一宿一飯とロボを直してくれたお礼をしなくちゃ!
私は張り切ってゾフィさんに着いていき、ロボは私の腕の中で大人しくしている。
「手伝いなんて、パンにゆで卵ぐらいしかないぞ」
「任せて!卵を茹でるのは得意よ!」
そう言って、二人分の卵をお鍋に入れて茹でる。
鼻歌を歌いながら、茹で時間を計る。
私の得意技なの!
ゾフィさんは私の鼻歌を笑って聞きながらコーヒーとミルクを注いでいた。
「ゾフィさん!出来たわ!」
「ありがとう、お嬢さん」
また頭をわしゃっと撫でられる。
もう!セットしたばかりなのに!
「ゾフィさんって、メカニックの腕はあるのにレディの心は分からないのね」
そう言うと、ゾフィさんは大笑いした。
「ゆで卵、綺麗に剥けるのね」
「まぁな。だが、お前さんの歌には敵わないさ」
褒められているのかしら、馬鹿にされているのかしら?
私はどう受け取っていいのか分からないままミルクを一口飲んだ。
「お嬢さん、リンツって言ったっけか。リンツはどこまで旅をするんだ?」
「どこまでも!」
そういえば、私ってばゾフィさんに名乗っていたかしら?
「ゾフィさんはなんで私の名前を知っているの?」
「……ロボがそう呼んでいただろう?」
「そっか!」
なるほど!そういえばそうね!
私は空になったお皿とコップにごちそうさまと言って流し台に片付けた。
「ゾフィさん。ロボの修理代って……」
「ああ、気にするな。懐かしい夢を見せてもらったお礼に今回は特別サービスだ」
そう言って片目をパチリとウィンクした。
「懐かしい夢?」
「ああ。それよりも、リンツのメカニックの技術がどんなものか知りたい。またロボが故障した時に困るだろう」
それもそうね。
私はゾフィさんに言われるがままに自分の技術を披露した。
「こんなものかしら」
「その年齢にしちゃすごいな。……ご両親に教わったのか?」
「そう!って言いたいけれど、二人とも私がまだもう少し小さい時に亡くなったから見様見真似なの」
「ふぅん。なら、しばらくうちで習わないか?」
私はゾフィさんの提案に目をぱちくりさせて、そのあと思いっきり近寄った。
「本当!?」
「本当だ。こいつもいつ壊れるか分からない旧式だからな。メンテナンスだけでも今よりもう少し教えてやれる」
ゾフィさん、なんていい人なのかしら!
それから数ヶ月、私はゾフィさんの家でお世話になりながらメカニックの勉強をさせてもらうことにした。
まずは居候するための部屋作り!
物置になっていた部屋を片付けて、二人で埃まみれになりながらようやく見えた床を綺麗にして、新しいベッドを買ってそこに寝かせてもらうことになったの。
「本当にいいの?こんなに甘えちゃって」
「いいんだって。言っただろう。懐かしい夢を見させてくれたお礼だってな。これでも余るぐらいだ」
そう言ってロボと私を見るゾフィさんの目は、私たちを通してどこか遠くを見ているようだった。




