3話
ゾフィさんのお店は案外片付いていた。
カウンターに座ると、ゾフィさんはロボをテーブルに置かせて繁々と眺める。
「……生きていたのか」
ゾフィさんの目が昏いものになる。
「その旧式についてだが、なんでお前が持っている?」
「ロボ?ロボは私の家族だよ!」
私がそう主張すると、ゾフィさんは顔を歪めた。
「まさか、そんな。いや、だからか?」
何かを焦っているようだった。
「なにが?」
私が尋ねると、ゾフィさんは首を振った。
「神様なんていないって思っていたが、案外いるかもしれないって話さ」
「ふぅん」
私は意味がわからないながらも、早くロボを直して欲しいなって思った。
「そのロボだがな、プログラムが負荷でショートしている」
「やっぱり!」
「要らなそうなプログラムはないな、学習のしすぎで、自己拡張が間に合っていないんだ」
「それって、私がロボに話しかけ過ぎたから?」
私はロボを見遣ると、ロボはまた「ソウダネ、リンツ」と繰り返していた。
「まあ、任せておけ。そういった扱いなら慣れている」
「本当!?ゾフィさん!」
私は思わず飛び跳ねた。
「ああ。お前が夕飯を食べている間に済ませておこう。もう、暗くなって来た。夜の裏通りは危険だ。今日はこのまま泊まっていけ」
「ありがとう、ゾフィさん!」
私は嬉しくなってゾフィさんに抱きついた。
「おいおい、やめろよ。こんなの見られたら先輩になんて言われるか」
「先輩?」
「こっちの話だ」
そう言ってゾフィさんはキッチンへ行くと、器用に料理をして私に振舞ってくれた。
「何か手伝う?」
「なら、こいつを細切れにしておいてくれるか?」
そう言って差し出された野菜に、私は頷いた。
「分かったわ!」
私だって伊達にロボと二人旅していないんだから!
張り切って切り刻んでいく。
ゾフィさんは、野菜と肉を炒めてパンとスープを作り上げると、私の頭を撫でた。
「さあ、お前がこいつを食べている間に俺はお前の家族を助けるとするか」
「本当にありがとう、ゾフィさん!」
感謝してもしきれない。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう?
「なに、俺も昔、人に助けてもらったからな。その恩返しさ」
「ふぅん」
よく分からないけど、助け合いって大事よね!
私も今度、誰かが困っていたら助けてあげなくちゃ!
まあ、見捨てたことなんてないけど!
なんて思いながら料理を食べ進めていく。
奥の部屋からカタカタと電子音が聞こえてきて、気になった私は料理を食べ終えると流し台にお皿を置いてそっと奥の部屋を見た。
「まさか、お前が生きているなんてなぁ。よく政府に見つからなかったな」
「ソウダネ、ゾフィ!」
「……俺のことを覚えているのか?まさか。そんな、な」
ゾフィさんはロボに話し掛けながら作業を進めていく。
これはもしかしたら聞いちゃいけないやつかしら?
「さて、お嬢さん。覗き見とはいい趣味をしているな」
バレてた!
「ごめんなさい……」
こっそり顔を扉の隙間から覗かせる。
「いいさ。なにより、お前さんがこいつと……ロボと旅するなら聞いておかなきゃいけないことだった。でも、今のお前にはまだ早い」
「そうなの?」
首を傾げる。
「そうだ。……お前さん、ロボは好きか?」
「好きだよ!大好き!大事な家族だもん!」
私は間髪入れずに答えた。
「……そうか。それなら、大丈夫だな」
「何が?」
「時期に分かる」
ゾフィさんの言葉はよく分からなかったけれど、私を心配してくれていることは分かる。
それに、ロボを直してくれる人だもん!
「さあ、いい子は寝る時間だ。俺の部屋のベッドを貸してやる。そこで寝ろ」
そう言って案内されたのは物が少ない、さっきの作業部屋がごちゃごちゃした印象なら本当に寝るためだけの部屋だった。
「ゾフィさんはどこで寝るの?」
「俺か?俺はどこでも寝れるから気にするな」
そう言って頭をわしゃわしゃ撫でられる。
まったくもう!レディの髪が傷んだらどうするつもり?
むくれる私にゾフィさんは笑って作業部屋に戻って行った。
私も明かりを消してベッドに入り込む。
「おやすみ、ロボ」
ロボは今、近くにいないけれど習慣でそう告げて眠りに落ちた。




