2話
私は今、バイクをかっ飛ばしている。
何故かって?
ロボが煙を出しているからだよ!
「ロボ、ロボ!大丈夫!?街までもうすぐだからね!そうしたらメンテナンスしてもらえる」
「ソウダネ、リンツ」
プシューと音を鳴らしていつものセリフを吐くロボ。
もう返事はずっとこれだ。
これしか喋ってくれない。
そして、その機体は尋常じゃなく熱い。
ロボの異常は時々ある。
軽いメンテナンスなら私も出来るけれど、今回はもっとプログラムの深いところ。
私にはまだ理解出来ない、両親が作ったロボの回路。
「見えた!街だ!」
いつもなら、街に行くと少しドキドキした。
でも、今は別の意味でドキドキしている。
ロボが政府に関係しているってバレたらどうしよう!
私も隠匿罪で罪に問われたりするんだろうか?
でも、ロボは元々私の面倒を見る子守り用として開発されたはずだった。
両親が政府の関係者だからって、ロボまでそうとは限らないけれど。
でも、問題はあのコードだ。
政府のロボが戦う度に、ロボは意味不明のコードを投影している。
それが私には怖かった。
ロボが見知らぬロボみたいで。
ロボは私の子守り用ロボットじゃん!
旧式でも、それは両親が何か意図したことだよね?
街の大きなパーツショップに入店する。
ロボは熱いから布に包んである。
こういうところは大体、アンドロイドやロボットのメンテナンスも請け負うことが多い。
初めて来る街で、とりあえず見掛けた大型チェーン店に持ち込んでロボを見てもらう。
「お願いです!ロボを助けて!」
ロボを差し出すと、店員さんは驚きつつロボを見てくれた。
けれど、それだけだった。
「申し訳ありません、お客様。旧式過ぎてパーツが当店にはありません」
「そんな、それじゃあ他に見てくださる店舗は知りませんか?」
店員さんは考える素振りをして、悩んでいる様子だった。
「……大きな声では言えませんがね、この裏通りにジャンクショップがあるんですが、そこなら年代物のパーツもあるかもしれません。けれど気をつけて。ここから一歩裏通りに入ったら、とても治安が悪い。お嬢さんお一人でその店まで通れるかどうか」
店員さんは心配そうに、気遣わし気に答えてくれた。
私は途端に不安になったけれど、ロボを見ているとそうも言っていられない。
「構いません。お店の場所を教えてください」
アプリで教えてもらった地図を頼りに裏通りを突き進む。
道は細いからサイドカーにロボを置いて、バイクは手押し。
裏通りは薄汚く、粗悪で人が住むような場所じゃなかった。
こんなところにあるジャンクショップに任せて本当に大丈夫なのかな?
値踏みされるような下卑た視線に耐えて進んでいくと、どう考えても善人とは思えない恰幅のいい男性から声を掛けられた。
「これはこれはお嬢さん。どちらにご用だい?ここにお嬢さんの望むものがあるかどうか」
「ゾフィさんのジャンクショップを探しているの。あなた、ご存知?」
すると男は大笑いをした。
唾が飛んでくるからやめて欲しいんだけど。
「ゾフィ!あの男のところへ行くなんて相当な変わり者だ!変わり者のところへ行くんだから変わり者に違いない!どうだい、お嬢さん。あいつのところへ行くのなんてやめて、有り金置いてママのところまで帰ってみないかい?」
そう言うと、手を差し出して来た。
「本当はお嬢さんを人買いに売り渡してもいいんだけどよぉ、俺は優しいから金で勘弁してやるんだ。どうだ?優しいだろう?」
「どこが!」
とんだ悪党じゃない!
そう威嚇すると、男に襟首を掴まれて持ち上げられた。
「なら仕方がない。おい、今日の新しい商品だ」
「へい!」
そう言って、側に仕えていた貧相な男に私を渡そうとした。
その時、ナイフが私の頭上ギリギリ、恰幅のいい男の手に突き刺ささり、悲鳴が上がった。
その表紙に私は落ちて地面に尻餅をついた。
「おいおい。人のところに来た客を商品にするなよ」
ナイフを投げた人の方を見ると、帽子を目深に被った男性が、ナイフを見せびらかして男達を威嚇していた。
「ゾフィ!」
「さっさと帰んな」
恰幅のいい男は、怪我をした手を支えて、忌々し気に立ち去っていった。
この人がゾフィさん……。
「あの、ありがとうございました!」
「アリガトウ、アリガトウ!」
ロボの発熱も落ち着いてきた。
「あの、ゾフィさん。このロボを直せますか?表通りであなたの話を聞いてやって来たんです」
「さてなぁ。見てみないと分からないさ。とりあえず、店に行こう」
ゾフィさんはそう言うと、歩き出していく。
私はロボをサイドカーに置いて、バイクを手で押して後をついて行った。




