1話
「リンツ、街、モウスグ」
「分かったよ、ロボ」
そう言うと、私はアクセルを踏み込んだ。
ロボはロボットだからロボ。
私の大切な相棒。
両親が亡くなってからは、ロボと二人で旅をしている。
なんで旅をしているかって?
天涯孤独な美少女が、バイクに乗ってロボと二人旅ってなんか格好いいじゃん!
そんな理由でロボと旅をして早三年。
私達は、世界の隅から隅まで生き尽くした気持ちになっていた。
けれど、どこかへ行く度に見知らぬ場所の噂を聞いて、居ても立っても居られなくて旅に出る。
私とロボの旅はそんな旅だった。
なんて私とロボを振り返っていると、警報音が轟いた。
この音は、敵だ。
ロボが反応するのを抑えるため、バイクを止めた。
ぎゅっとロボを抱き締める。
ロボは、単なるロボじゃない。
私はその謎を追っている。
なんでこうして警報音に応えようとするのか、時折呼応するかのような音を発するのか。
その瞬間、ロボが震えた。
見知らぬコードを投影している。
これもいつものことだけど、ロボがロボでなくなるようで怖い。
ロボは、私の知るロボでいて欲しい。
そう思うのは私の勝手だろうか。
「……今日も投影された空でも綺麗だね、ロボ」
「ソウダネ、リンツ」
サイドカーに乗せた球体のロボは、器用に上を向いて投影された空を眺める。
そう、ここは惑星じゃない。
住める惑星を求めて彷徨う宇宙船の中。
私達人類は、住める環境を探してこの大型宇宙船に乗り込んで生活している。
でも、私が生まれる前から私達はこの宇宙船で暮らしているからこの船の中が世界のすべてだ。
「ロボ、ここを右?」
「ソウダネ、リンツ」
ロボは私が生まれる前から存在した旧式もいいところだから喋りも流暢じゃない。
なにより、人型じゃない。
この世界は、人型のアンドロイドと人間と旧式のロボットで暮らしている。
旧式のロボットは、ロボだけじゃなくて、大型だと宇宙船を狙う他のならず者達をやっつける、十数メートルある巨大ロボもいる。
巨大ロボは普段は格納庫にいて、回避できない危険な隕石や略奪者からこの宇宙船を守るために政府のロボット機関のエリート達が操縦して戦ったり隕石を爆発したりしている。
略奪者かならず者か、はたまたこの宇宙船を乗っ取ってより良い生活をしたい貧民層かも分からない。
貧民層は、場合によっては受け入れる。
この広い宇宙。
助け合いが大切だ。
「うわっ」
船が攻撃を受けて揺れる。
並大抵のことじゃこの船はやられないから、相当な敵船なんだろう。
ロボはまだ意味不明なコードを投影し続けている。
「ロボ、ロボ……。やめてよ。元のロボに戻ってよ」
バイクを止めて、サイドカーに居るロボを抱えて手の中の存在をぎゅっと抱きしめながら懇願する。
ロボは、警報音が鳴り響くまでコードを投影し続けている。
……薄々分かっていた。
私の両親は政府のロボット担当。
このロボも、戦うために作られたロボットの一部分かもしれない。
だから敵襲の度に意味不明なコードを出してどこかのロボットに命令を出しているのかもしれない。
「ロボ……」
宇宙船から大型ロボットが出動して、敵船に攻撃を仕掛ける。
でも、ロボの未知のコードは収まらない。
……本当は、政府に持って行って相談すべきなのかもしれない。
けれど、私に残された唯一の家族を手放したくない。
そんな思いでロボを抱き締めていると、ロボのコード投影が収まったのと同時に巨大ロボットが敵船をやっつけて戻ってくるところだった。
「……ロボ、行こうか」
バイクに乗り直す。
「ソウダネ、リンツ」
この言葉足らずな旧式のロボが、宇宙をる揺るがす核になるなんて、私は知らなかった。




