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ロボとリンツ  作者: 千子


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11/12

11話

ロボにダウンロードした地図を頼りに見知らぬ街を歩く。

……張り切ってはみたものの、これからどうしようかしら。

私は途方に暮れていた。

だめよ!リンツ!私はお金を取り戻して旅を続けてゼフさんに会ってロボとずっと一緒に暮らすの!

力を込めて、えいえいおー!と片手をぐーにして上げる。

これは私の決意の塊。

頑張れ、リンツ!

とりあえず、誰かに尋ねようとするとナイフ片手にカツアゲされそうになったり人買いに攫われそうになったり、ロボを盗られそうになったり!

前言撤回!

シエルとおじさんがいい人なだけで、貧民街の人達って全然いい人じゃない!

全部ロボの警報音に驚いて離れて行ったけれど、悪人ばかりじゃない!まったくもう!

なんて、強がってみても足は震えてとても怖かった。

「どう思う、ロボ」

「サイフスッタノ、タビビトセンモンノスリナラ、マチノゲートフキンニイルトオモウ」

ロボの一言で、私は目から鱗が落ちたようだった。

「なるほど!それもそうね!貧民街の外まで戻りましょう!」

そろそろ日も暮れる。

休むところも探さないと。

……無一文なのに、どこに泊まるの?

今度こそ本当に途方に暮れた。

「ゾフィさん……」

別れてまだ一日しか経っていないのに、もう人恋しくなる。

とぼとぼとバイクを押しながら貧民街から出ようとすると、後ろから声を掛けられた。

「おい」

「……シエル!」

振り返るとシエルがそこにいた。

「お前、こんな時間までこんなところにいたら危ないだろう」

「ご心配なく。今から出ていくところよ」

シエルがまた溜息を吐いた。

溜息を吐かれてばかりね、私。

「貧民街と街は十七時には繋がっている門を閉められる。ここから外へ出ることは出来ない」

「そんな!」

「俺たちの信用なんて、ないようなもんだからな」

シエルやおじさんと別れてからの数時間を思い出す。

確かに、この人たちを市民街に出すには夜は危険すぎる。

「じゃあ、どうしろっていうのよ……」

私が余程困った顔をしていたのだろう。

シエルは頭を掻くと、ぽつりと呟いた。

「うちに来るか?」

「えっ?」

「勘違いするなよ、今晩だけだからな。明日の朝には出て行けよ」

照れているシエルに嬉しくなって抱きつく。

「ありがとう、シエル!」

「ばっ、お前、気安く抱き付くな!」

叱られても平気!

「やっぱりシエルは優しい人ね!」

にこりと微笑むと、シエルが今度こそ赤くなる。

「そんなことねぇよ」

「そんなことあるわ」

私がにこにこ笑うとどんどん赤くなるシエル。

罪作りね、私って。

ふふん、と得意気になるとデコピンを喰らわせられた。

「痛い!」

「調子に乗るな」

一瞬可愛いって思ったけど、やっぱり可愛くないわ!

プンスカ怒る私に背を向けて歩き出すシエル。

「置いていくぞ」

「待ってよー!」

バイクを押しながら、慌ててシエルの後を追う。

「リンツモ、シエルモ、テレテル」

「照れていない!」

私とシエルの声がハモった。

「早くいくぞ。貧民街の夜は昼間以上にやばい」

「分かったわ」

慌ててシエルを追いかけると、家というには粗末な倉庫があった。

「ここがシエルの家?」

「ああ。バイクも中に入れていい。外に置いておくと盗まれる」

それは困るわ!

シエルが鍵を開けてシャッターを上げると、そこには貧相ながらも確かに人の暮らしを感じた。

「ベッドなんて上等なもんはないけど、ソファならある。拾いもんだけどな。お前はそれを使って寝ろ」

バネが出ているソファを見て、シャッターを閉じるシエルを見る。

「なんだよ」

「別に」

野宿よりマシよね!

私はそう覚悟して固いソファに座った。

「もう寝るか?」

「……ええ。ありがとう、シエル」

そこで私のお腹が鳴いてしまった。

「晩飯も出してやれなくて悪いな」

シエルが申し訳なさそうに言う。

「そんな!泊めてくれるだけでありがたいわ!」

「明日は市街へ戻れ。交番に行けば、少しはなんとかしてくれるだろう」

私は瞳を伏せてロボを撫でた。

「……政府と関わるわけにはいかないの」

「なんだ、お前も訳ありか」

「まぁね」

私がそう言うと、シエルは笑った。

「なんかよく分かんねぇけど、頑張れよ」

「そう!交番に頼れないから自分でスリを見つけないと!」

シエルはまた溜息を吐いた。

「だから、お前の金なんてもう使われているよ」

そう言われて言葉に詰まる。

確かに、この貧民街の人たちならそうしそうね。

「なら、私はどうすればいいの?」

「さぁな。この街で働いて路銀を貯めるとか、色々あるだろう」

なるほど、それは思いつかなかったわ!

路銀を貯める。

その言葉に胸が少し重くなった。

でも前に進むしかない。

「シエルって賢いのね」

「誰でも思いつく。もう電気消すぞ」

そう言ってランプの光は消された。

私は固いソファで眠りながら今後のことを考える。

スリを探すのは確かにこの街じゃ現実的じゃないかも。

でも、市街に出て働き口なんてあるのかしら?

私は一縷の不安を持って、瞳を閉じてその身を固いソファに預けた。

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