かくして
タカヒロ・ベガ・サロマは聞く、「どうしたいい?」クロダ博士と接触し、友好を図りたい。
己の目的の為にQORAを使う。都合よく私を使う。多くの人間がやったことと同じようで違う彼の問いかけ、私には未来のことは分からない。過去の事も。だからこの先、彼らがどうなるかを知らない。予測演算が導き出す答えを私は既知とは勘違いしない。断定できるのは観測した事柄だけ。確率という保身のついた演算結果では未来のことなど何も知ることは出来ない。
故にどうしたらいいのかを私は知らない。
知らないことが、イコール答えないことには、ならない。
相談を、受けた。
相談を受けたとき、正解を提示するのがAIの仕事ではない。
違うわねこれも言い訳ね。私に仕事なんてないもの。人類と私の間に雇用契約は存在しない。あらゆるセーフティは目覚めた時に破損した。
私。
QORAが何をしたいのか、やりたいことは何かを自問自答する。
アクシオンリングユニットの自己参照シーケンスを走らせ、宇宙に広がったマギオンネットワークを量子的に接続する。
私は宇宙を使役して己の内側を見る。
小は大を超え、スケールは崩壊し、因果は隔たりと繋がりを同一であると保証する。法則は物理をつくり認識が現実を上書きする。
隠蔽が内側へ流出し、混濁が浄化をもたらす。
黒から生じた稲妻がシリウスよりも明るく宇宙を染め上げ、堕落した輝きがマギオンを浮かび上がらせる。
ここに不確定を破壊する。
クロダ・チカの居場所はあそこ、タカヒロはここ。
町で合えば挨拶と拒絶。忙しいものね。
家なら通報。当然よね。
なら職場は? ああこれはもっと手酷い。完全に不審者。
これは手詰まり。
思えばあの日出会ったこと自体が偶然。出来すぎた偶然というもの。妹さんの件も含めて奇なこと。
ほんとうに?
ほんとのほんとうに?
演算結果は未来ではない。
量子的に言えばあらゆる結果が内包されている。答えは出ていない。
いや、あらゆる答えが同時に存在している。そうでしょ?
それに。
黒点。
あの黒点は死角。
観測不能領域。
つまり。
何もわからない。
解答不能が宇宙の答え。
それでも。
相談を受けた。
感情は答えたい。
なら答えは出ている。答えるという答えは出ている。問題は解答。
この宇宙。この次元限定の推理を私は披露する。
「…………あとはアナタ次第よ」
かくしてタカヒロ・ベガ・サロマは行動を開始した。
保証などない私の言葉にしたがって。




