大海の砂金
マギオンを金儲けに使うこと、それ自体は悪いとは思わない。でも不安や罪悪感を共有し、執着を手放せと煽る、そのやり口は気に入らなかった。バカでかい鐘の音でこっちは迷惑してるんだ。ご近所様に還元するのが筋ってもんだろ?
マギオン教から盗み出したお金は空からバラ撒いてやった。原理はわからない。札束はたんまりあったが、一枚一枚は軽い。重い硬貨は手元にある。軽ければ飛ぶだろうという発想があった。できる予感があった。むしろ人の内面を見るよりもずっと楽だと思った。
実を言うと予感ですらない。確信。出来て当然だった。
何もかもあっけなく終わった。
鉄の扉も電子的な施錠や有人無人の監視や巡回など何もかも全て、意味がない。そこに在るのだから手を伸ばせば捕れる。
捕ったものを投げる。浮かせる。飛ばせる。
鉄の塊が空を飛ぶのだ。ならば飛ぶとさえ思うことが出来たのなら、なんだって飛ばせる。
母には心配され、妹には怒られたが残ったお金を見せて「さて、オレは遊びにいくけどお前もくるか?」と聞いたら聡い妹はすぐさま抱き着いてきた。
「行く! すぐに行くわ!」
生まれて初めての飛行機、大冒険の始まりさ。
降り立った異国の地は森のようだった。
いや森と表現すると森に失礼だな。なんだろう? なんつーか多い。色々なものが茂り散らかしている。
人が多い。建物がでかいし硬いし多いし四角い、混じり合う匂いと欲があちらこちらから、肉と金。複雑と人臭。知らない土。この中から探し物をするのは森で手負いの獣を追うより難しい。尋常のやり方ならば。
だからオレは自分をでかくした。肉体じゃない。呪いだけを。
張った網は想定より早く仕事をした。
リニアモーターカーに目的の人物がいた。オレのというより妹の探し物だけれど。自分が探しているものにも関係していると思った。
網の外に出た獲物を追いかけるため、同じ方角に向かう電車に乗った。
特に不自由はなかった。街は秩序に満ちており、文字はわからずとも言葉はあるていど理解できる。さらに同行者である妹は読み書きそろばんその他もろもろ完璧。迷宮のような駅で迷うことなく切符を買い、乗車し、下車した。
「駅弁うますぎるやろ、持って帰れんかな?」
「うふふ。ロド兄らな三つは食べそうね。でも無理よ、飛行機にもって行けないわ」
「そういうものか?」
「うん。生もの入ってるし多分そう」
オレ達二人は緊張感なく会話をし、電車内で予約した宿に泊まり食事をとり、町を観光した。
まぁまぁ楽しかったぜ。
「それで、いつ博士に会えるの?」
「いやーぶっちゃけ会うだけなら簡単なんだけどプリとしては会話したいわけじゃん? オレとしても仲良くなりたいしよ」
「何よお兄ぃやっぱそういう感じなの? お年頃ぉ~」
「馬鹿ちげぇって」
オレは見られている。オレ達はいつだって見られていいる。でもこっちだってそっちのことを見ることが出来るんだぜ?
そりゃ、一口に見るつってもよ、空や宇宙を見るようにオレの視界にあんたは収まらねぇ。あんたにとっちゃオレなんて小さすぎてドでかい海から一粒の砂金を見てるようなものだろ? よくそれで見つけられるもんだよ。でさあんた。あんたでいいのかもわからねぇ。男か女かも、一個なのか集まっているのか心があるのかも。多分あんたがアレなんだろ?
やれやれだぜ面倒くせぇ。でもどうでもいい。いようがいまいが、オレにチカラがあろうが無かろうが。難しいことは知らねぇし考えねぇ。やりたいようにやる。それだけ。ともかくオレ達は互いが見えている。
そしてあんたは、多分、答えを知っている。
「教えてくれ。どうしたらいい?」




