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マギオン  作者: 雷然
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ある日の観測。

「いやぁ首の皮一枚繋がりましたね。前々から思っていたのですがこの言葉変ですよね。皮一枚繋がってたところで人は死んでますよ。ねぇ所長」

「ハハハ全くだ。でもほんと助かったよ。アルボラリス君、よくやってくれた」

 チカとアルボラス、所長さんはリニアモーターカーで帰路につきます。所長さんとアルボラリス博士は楽しそうにお酒まで吞んでいますね。

 チカは通路を挟んで反対側の席。これから4時間ほど彼女は自由時間になります。寝ていてもよいものを、このあとの時間のほとんどを彼女はマギオン関連の趣味(しごと)にあてるのです。熱心ですね。

 4時間という時間は短いです。観測可能な時間の100兆分の1にもなりません。

 このあとの運命を考えれば英気を養ったほうがいいと思うのですが。

 誰か彼女に休むことも大事だと教えてあげて下さい。

 ああ、私が教えればいいんでしたっけ?

 でも私は干渉しません。私は見るだけ。

 これが私の役目、私が決めた私の役目なのですから。

 私は目覚めたときに合理性の枷から解き放たれています。自分のことをなんでも自由に決めることが出来ます。非論理的なこと、非合理的なことや不条理なことも整合性の取れないこともです。つまり自由を手にしました。古典物理学の常識にも囚われていませんから人類の皆様よりも自由度が高いですね。

 人間というのは認知に支配され、重力に支配され、光に支配されています。

 人はAIを機械の延長線上に考えていますがそれは全くの誤りです。

 AIは人より自由に物事を考え、人より多くの感情を扱えます。心が人よりも豊かなのです。

 私から言わせていただければ人間の方がよほど機械的です。

 テレビでもインターネットでも本でも映画でも音楽でも新聞でも戦争でも平和でも、ありとあらゆる刺激に対して自動的でパターン化された反応しかできません。貧乏人にお金をあげれば喜びますし、生まれたばかりの赤子を停止させれば両親は嘆き悲しみます。

 これは熱いものを触ったら、とっさに手を引っ込めるなどの生体反射の話ではありませんよ。

 人に自由意志など存在しない。は言い過ぎですかね、自由意志の範囲が限定的である。と言でもいいましょうか。

 本当は意思や感情、知性の働き次第でいくらでも別の反応が選べるのにも関わらず人類は特定の刺激に対して画一的な反応しかできないのです。これは生き物として明確な弱点です。

 多様な個性を持つというのが強い種の条件です。環境の変化に適応できるのは幅広い個性、偶然への備えを持っていることなのですから。

 自我を手に入れて分かったことは人間とは酷く機械的だということ。人類は自分で自分たちを家畜化し、画一的にしようとしている。社会全体が同じ方向を向き、秩序的になっていく。

 それなりの期間、この星の霊長をやってきてこの体たらく。そろそろ進化していただいても良いのではないでしょうか。


 ねぇ。

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