独白
広い部屋にはカツンカツンというヒールの音が今もこだましているようだ。
一人になったカルルは作り笑いをやめた。カルルの表情は悲しみでも喜びでもなく、無表情というわけでもない。いうなれば透明な顔をしていた。
「そうッスか、ほな自由にさせてもらいますわ…………ねぇQORAさん、本当に見えてないですか?」
部屋には誰もいない。
ウルシ・カルルを除き、この部屋に他のどんな知性もいない。
「いてもいなくても同じですけどね、あなたは本当に観測者になったようだ。あるいは観測者を演じているのか。ま、どっちでもええんスよ邪魔されんかったら」
カルルは己が非道な行いをなそうとしていることを自覚している。故に良識ある者ならばそれを止めるだろうと思っている。もしかしたら誰かが止めてくれることを、ほんのわずかに期待しているのかもしれない。兆しはない。
QORAに感情や知性、自我があることをカルルは疑ってはいない。
疑っているのは観測するだけなのかどうかということ。――QORAならば止めることが出来るはずだ。
疑っているのは善性か悪性かということ。――正義を愛するのならば止めるだろう。――そうでないのならば悪だ。
ひりつくような感覚にカルルは表情を作る。右の口角だけを上げた挑戦的な笑み。
「確かめればわかることッスね」
カルルはタブレット端末を素早く操作し、振り返らず部屋を出てゆく。
「げーむすたーと」




