桃酥
「ほ、宝石……?」
理仁の国へ外交に行くことになり、とりあえず茶会を開いたところでこの話だった。
「は、母上。そこのところは少し……」
「そ、そうですよ!」
爽太たちも必死に反論するが。
「でもね、うちにはあまりそんなものもないわ。だから…」
どうやらお返ししないと不敬などに繋がるらしい。
「爽太くんの国ならあるわ。西だものね。」
確かに、爽太の国は宝石が多く流通しているが。
「それに。外交の課題も達成出来るわよ?」
それを言われたら何も言えない。
「そ、そうですね。近ごろ行ってみようと思いま……」
「船を手配しようかしら?」
ここまで押されてしまったらもう引くことはできない。
「……では、2日後に向かいます。」
こうして、またまた交易を取り付けられてしまった。
ということで、今はとりあえず手配された旅館に爽太とふたりで泊まっている。
なかなかに趣味が良く、新しい畳の香りが和室いっぱいに立ち込めている。
ふと私は疑問に思った
「この生け花、理仁がやったのかな?」
漆塗りの瓶に調和の良い色の花々が生けられている。
親が得意なら理仁も得意なのではと。
「うーん、多分そうじゃない?理仁も結構花好きだし」
おそらく酔芙蓉と呼ばれる花が生けられている。
「結構きれいな花!」
爽太がはしゃいでいる。まるで子供。
深い赤で心做しか萎んでいる。
一日草なのだろうか。
部屋に浮くこともなく綺麗にのっている。
全体的に、少しばかり華の要素がある。
あまり東で見られない金の色や、深紅の塗料で塗られた格子の窓もある。
もしや外交が得意なのか。
なぜ長引くのかはよく分からない、が。
あまり的に回すのは良くなさそうだ。
(……鳥兜)
翌朝、食事を済ませ向かったのは外交に使われる別館だった。
口汚しにということで出された点心は龍井茶と、桃酥というものらしい。
桃酥はいわゆるクッキーというもので、脂を大量に混ぜて練っているため少し重いそうだ。
「最後に口直しのこの茶を飲む。」
口直しに茶を飲むという文化はあまり聞いたことがなくどこか新鮮だった。
7分目まで綺麗に注がれた器が並んでいる。
外交に陶器の皿を使うのは少し驚いたが。
「さっぱりしてて美味いね。風味がある」
なぜ外交というのにべらべら話せるのかと問いたが爽太はあまりぴんときていなさそうだった。
生焼けだったクッキーも、今は少しだけ風味を増している気がする。
それは、周りの爽やかな茶のおかげなのだろうか。




