修行
「…山大きくないか?」
どんと佇み、貫禄のある山で、
それほど緑も多かった。
「理仁ぉ、ここなに?家?」
空気が読めないところも長所だと思うよ。
「ああ。ここは俺の家だ。」
理仁によると母もいるらしい。
父は仕事のため家を開けているそうで。
「母は生け花が好きで、大量に花を埋めさせたんだ。」
花と言うには青々しすぎるものもある。
ツンとする香りだが確かにいい匂いの実を見つけた。
「これは薬草じゃないのか?」
レモンのような、なにかが植えられている。
「それは香櫞だ。別名はシトロンとも言う。」
あの「リリシア」が言っていた薬はこれか。
「咳や痰を抑えたり、感情の揺れを抑える効果もある。」
確かにこの匂いは落ち着く。
芳香剤にも使われているそうだ。
「そんなに落ち着く匂いか?」
少し考える素振りを見せて。
「やるよ。それ。」
意外にあっさりしていた。
「い、いいのか?これもらっちゃいけないやつなんじゃ…」
「駄目だけど。僕が良いって言ったから。」
心做しか耳が赤く見える。
そんな話をしているとあっという間に登り着いた。
しっかり道が整備されていて通りやすかった。
「母上。今帰りました。」
そうだ、これは外交だ。
然るべき態度で望まなければいけない。
「お邪魔させて頂きます。」
諸々の手続きをすませる。
目に入ったのは、天女かと疑うほどの綺麗な牡丹のような人だった。
長い髪をひとつに結い、綺麗な桃色と水色の着物を着ている。
片耳に、小さな髪飾りも。
「あら、いらっしゃったのね。ご挨拶が遅れました。」
「私は、理仁の母の羽春です。よろしくね。」
意外と社交的な人だった。
「よろしくお願いします。私は理仁さんの友人の恋火で…」
部屋で色々と話すことになった。
「困ったわね、あの人はまだ帰ってきてこないのだけれど…」
理仁の母、羽春は茶菓子を出してくれた。
「これ美味くない?」
爽太に話しかけると。
「ちょっと恋火!フォークじゃ失礼だよ。」
爽太の国ではよろしくない迷信があるらしい。
銀の貝殻の彫刻がついたスプーンをくれた。
「その素敵な髪飾りは何ですか?」
本来蝶々のような結び方をするのが正しいのだが。
「あ、これは同心結というの。夫にもらってね。」
わざと複雑な結び方をすることで、一生離れられない、もしくは求愛という意味らしい。
どうにも自分の都合しか考えていないようでなんだか腑に落ちない。
「ここの国では求愛のサインはたくさんあるのよ。」
木瓜を投げられたら、美しい宝石を返して愛を誓う
という逸話があり、意味は
あなたが私にくれたまごころに対して、私は一生をかけてあなたを大切にします
ということらしい。
「ロマンチックで良いわよねぇ。」
頭の中のお花畑で花を摘んでいるのかと思うくらい能天気だと思う。
理仁に、シトロンをもらったが。
「お返しはなにを?」
気になってしまった。聞いてしまった。
「それはね…宝石をプレゼントするのよ。」
ところどころ抜け落ちていたので加筆しました。
ごめんなさい。
2026/04/02




