宮殿
2日後、私たちは羽春が手配した馬車に乗って爽太の国へ向かうこととなった。
とんでもなく遠く1週間かかるらしい。
「それにしても暑いな。」
もう日が落ちて夜なのだがまだまだ暑い。
爽太によると今は湿度は高くなく、カラッとした暑さなのでまだマシらしい。
ちなみに理仁の家の者が手配しただけあって趣味はよく上品だった。
漆塗りの格子が窓代わりにされていて、目隠しの襞もついており良心的だった。
今回の交易で悪い印象は持たれていないと思われる、はずなので成功に終わった。
「はい、恋火と理仁降りて!」
実は理仁も着いてきていた。
暑がりなので馬車の1番奥にひっそりといた。
「もう着いたのか?早いな。」
確かに、もう出発して5日ほど経っているがさすがにまだ早すぎる。
そう理仁が呟くと、爽太は笑って返した。
「まっさか!これから船に乗るんだよ船。」
馬車を降りると、それはそれはとんでもない規模の川のふもとだった。
理仁が持ってきていた双眼鏡を使ってみると野生の動物がいて少し怖かった。
どうやら爽太の国は大きな一筋の大河に繋がっているようで、それを利用して行こうという魂胆だそう。
乗り継ぎは時間がかかるのだが正直暑いしあまり外にはいられないのでさっさと船に乗ってしまおうと思った、その時。
「ふ、船か。」
と、理仁がぼやいたのが聞こえてしまった。
船が怖いのかと聞いてみるとそんなわけないと返された。
さっさと乗り継いで従者に船をこがせている間に、少し食事を取ることにした。
「とりあえずパンと麦酒だけ用意したけど。」
一瞬聞き間違いかと思われるが実はそうではない。
「おい、麦酒って…俺らまだそんな歳じゃなくないか?」
珍しく理仁がおろおろしている。
爽太の国はまだ大人と言えない年齢でも麦酒を飲む習慣があり水と同じようなものらしい。
濾過はできるが時間がないので、手っ取り早い麦酒で済ませているそう。
まあ、世間知らずの坊っちゃまは知る由もない。
「これ、普通に飲んでいいの?」
正直まだ不安が抜けない。
いいよと言われて覚悟を決めて飲むと、意外な食感だった。
私の国などの酒とは違いどろどろしており、麦酒というだけあって香りも強かった。
「硬いパンと合うね。」
柔らかい麦酒と硬いパンは良い塩梅で合う。
月を眺めながら食事をしていると、かすかに海の香りがした。
1時間後
「はい、そこに絨毯とか敷いてあるからそこで寝てね。おやすみ〜。」
と、爽太に案内されて寝ることにした。
理仁は隣の部屋で寝ているので物音も聞こえない。
(もともと船で寝るの好きじゃないんだよな)
船を使わないと行けない場所にわざわざ行かないしあまり慣れていない。
どうしても乗らなければならない時は外に出て本を読んでいた。
今日も眠れず、気晴らしに外を眺めてみることにした。
薄い目隠しをよけて船の先を見ると、爽太がすわってマッチをすっていた。
たまに舵輪を動かしながらもぞもぞしている。
どうやら、の蝋燭をつけているらしい。
「爽太、なにやってんの?」
隣の木の椅子に座る。
どこかに甘い蜜の香りが鼻腔をくすぐる。
「蝋燭つけてこれ溶かしてるの。香水みたいなやつ」
丸い石鹸のようなものが少しずつ温まってきている。
タイルのような模様がついていてさすが爽太用だなと思った。
「虫除けにもなるしいい匂いだしね。それに安い」
結構高いんじゃないのかなあ。
「爽太疲れてる?自分の枕じゃないと眠れないんでしょ。」
ぎくりと肩を動かす。
「よく覚えてたね。小さい頃言ったきりなのに。」
少し驚いたような顔をしているがとろんと笑っている。
そこが爽太のずるいところだと思う。
「最近思い出したんだよね。」
思わずふふと笑ってしまう。
爽太といるとゆるんでしまうのはきのせいだろうか。
「ほら、明日には着くだろうし、もう寝なよ。」
「爽太は寝ないの?」
僕は船を動かすから、と軽く笑った。
「じゃあ─────」
爽太の肩にすとん、と寄りかかった。
「私も、起きてる。」
爽太がかちんと固まった。
それから、どんどん首まで赤くなっていく。
「…そっか。」
それきり、何も言わなくなってしまった。
へたれだな、と思った。
あ、めっちゃ遅くなりましたけど中一になりました。




