あなたを見送るための
結局、私と役人と子犬は元の小屋に向かった。
「……あれ?」
上空からもわかる異常があった。荒野にぽつんと緑地ができている。なんだろうと近寄るよう指示する。
森が発生していた。数十年前からそこにありますけど、なにか? と言わんばかりの立派な木ばかり。
その中心に私の小屋があった。
「あの、報告なかったんですけど」
「しらないな……。ここ最近じゃないのか」
役人もあり得ないという顔でありえないことを口にしていた。最近、十数年物の木が生えるものか。
その矛盾に気がついたのか顔をしかめているが、現実としてそこにある。
畑は綺麗に整えられたままに瑞々しい野菜が生っている。
さっきまで誰かがいたかのような手入れの行き届き方だ。
なんかいるんだろうかと恐る恐る小屋を覗く。
きちんと整えられている小屋の中。
ここはしばらく人がいなかったと言わんばかりの埃が薄っすら積もっていた。そこに少しほっとする。棚を確認すれば管理されてメモも残してる備品の数々。
ヘクター氏有能だった。
「書類仕事とか得意そう」
そう感想を漏らすと役人は元々宰相付きだったと教えてくれた。その後、実家のごたごたに巻き込まれた挙句、地方をめぐるような左遷をされたと。その空いたところに押し込まれたのが役人らしい。
ひとまず、埃だけを払う掃除をしてからいつもの炒り豆茶を飲んで、一息ついた。
テーブルの上には宝箱一つ。
「知ってたら教えて欲しいんだけど、うちの家族どうなってます?」
さすがにここまでやらかしたら家族も捕まりそうな勢いを感じる。さらに生まれた町も見せしめとかならないといいけど。
ちょっと様子を見て対処がいるかもしれない。
「国外にいるらしい。
母方の親族を頼ってというはなしだが、どこまで合っているかはしらない」
「よかった」
父にどこかへ逃げたほうがいいと布に書いて届けてもらった効果はあったみたい。そんな小細工、運んだ人は気がついていないみたいだけど。
「落ち着いたら会いに行けばいいだろう。
どこにでも行ける翼がある」
「わぅ」
え、やだぁという相槌が加わった。強いはずなんだけどな……。可愛い子犬でいいか。
今日は疲れたとその場で解散する。
「ブラン?」
子犬も解散して、役人のほうについていった。……あっちのほうを飼い主と思ってない? お世話係させ過ぎた。
ため息をついて、私は一人で向かうことにした。
難攻不落の山に。
魔法は万能ではないが、すこしばかり助けてくれる。もう、山道で転んだりしない! 虫よけ、枝除け、私は傷ついたりしない。
「はあ、はぁ、傾斜なんとか、ならないかな」
体力不足とここまでの無理がたたって、半死半生だ。
今日の今でないとダメだからやるけど。
重くないけどかさばる宝箱を抱えていく。よく考えればこれもって走れたな。必死になると違うということだろうか。
それから時間をかけて山頂にほど近い、開けた場所にたどり着いた。
「陛下。ここはよく見えますよ。見ててくださいね」
宝箱を宝箱ごと埋葬することにした。
亡くなった場所でもなく、山の見晴らしの良いところに。
この国を見ていてほしいと私が願うから。
そして、まあ、多少は、この国をどうにかしようと思うことにしたから。
『おかえりなさい。そして、おやすみなさい。良き眠りを』
さようなら。私の好きだった人。




