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あなたを見送るための  作者: あかね


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21/29

因果は巡り

 城に来て早くも2ヶ月近く経っていた。

 呪いを祝福に書き換える手法を編み出し、皆の健康などを祈っているうちにそんなかかってしまった。城も広いので、保守点検も終盤である。

 そろそろ、おうちに帰る準備をしなければならない。お土産もちゃんと持ち帰らないといけない。


 ひとまず宝箱は原作通りだと、宝物庫にあるはずだ。安易に近づいて警備を増やすわけにはいかないからまだ近寄ってもないけど。


 やっぱりコントロールルームに入れたほうが良かった。でも、最後の鍵が見つからない。宰相さんのペンが怪しいと思ったんだけど、違った。

 残念だが今回は諦めることにしている。


 ペンはこれはこれとしてコレクションアイテムとして崇めておく。

 これは魔道の王が側近に下賜した一品! しかも自分が使ってたやつを譲ったもの!

 使うあてもなくても、大事。


 今日も今日とて雑用をいなし、城の図書館に寄る。ここは奥の方に魔導書が無造作に置かれていた。装丁は古くなく、中の紙も真白いし、インクも消えてもいない。なのに普通の人には読めないらしい。異国からやってきた本だろうとされている。

 侍女に手伝ってもらって数冊ずつ部屋に運んでいた。


 これはこの国に残る至宝の一つだろう。


 この世には、魔導というものがあった。前文明で崩壊したものだ。本来、それそのものは失われたことになっている。それの残りを使い倒しているのが今の魔法と呼ばれるもの。これには司祭系が使う祈りも含まれる。あれも広義の魔法だ。


 魔導の王と言われるのはその前文明の魔導を使えるからだったが、どこで知ったのかは明言されていなかった。この図書館にあるものを解明すればある程度は理解することはできるだろう。そうして学んだに違いない。

 でも、その力を使うことはほとんどなかった。一度、地形を変えたしな……。あ、使わせちゃだめだわと思わせたところはさすがというか。


 そもそも星落とし(メテオ・ストライク)とかできるほどの魔導で争いをやらかして、壊滅したのが前文明。魔道ってのはやべぇもんであるとは伝承として残っている。

 なお、壊滅したあとの生き残りが我々。魔導の残りの魔法でも忌避感があるのはそのせいと言われている。さらに主要な血統が失われ適性があるものは少なすぎるとされていた。


 しかし、実際のところは違うようだ。使える人はそれなりにいるが、教える相手を絞っている。

 この世界での魔法というのはある手順通りにするとこうなるよ、というシステム化されたものだ。魔力がある程度あってやり方を踏襲すれば発現可能。再現性が高い。


 それは祈りや癒しもそうだ。神々に祈ると結果を得ることができる、というのは、そういう手順通りに行うことで発生する。自分のオリジナリティを入れるところがない。

 私が最初に行ったのは、魔力を無尽蔵に注ぎ込んで無理やり起動させたようなもの。だからすぐにエネルギー切れしていた。省エネ仕様、大事。


 さて、ここまでシステム化されているということは祈るということさえも神の奇跡ではない。ということでもある。

 そもそもこの世界にはもう神はいない。前文明が殺してきた。今、神とされるのはそういうもどきだ。そのもどきと戦うのが5作目である。最終章は、コントローラーを投げるほどの難易度らしい。ふざけんな詰将棋してんじゃねぇぞ、とのこと。それも最適解は一ルート、ダメージ通らんと即やり直し。

 ……やらなくてよかったと思う。


 さて、自室に連れ込んだ魔導書。読めたが、古語だった。現代文訳がない。そこ、翻訳してこそのチートでは? と思いつつ夜な夜な読んでいた。

 ほんと、寝不足で自分に自分の回復をという元気の前借りをしている状態だ。ブランだけは元気いっぱいで皆に遊んでもらっているらしい。

 君、確か、人工精霊とかそういう前文明の技術注ぎ込まれてる疑惑の物体だったよね? なんで、普通に犬なの。


 その子犬は今もくかーと寝ている。幸せそうだ。


「んー、なんかもにょっとするな」


 誰もいない夜更けにお手製、魔導書、現代語訳を眺める。

 城の表示などとこの魔導書たちを突き合わせた結果わかったことは二つ。


 この城というのは、国の要である。そして、前文明の遺産のもとに運用されている。つまり、魔導の王が作ったものではない。歴代の王が改良し壊れたときには応急処置をし、そうやってどうにか維持してきたもの。

 推しのフェチではなかった。しかし、魔導書に挟まれていたメモを見るにノリノリなところは伺えて……ほんとにもう可愛いんだからっ! という気分で進まなかった日もあった。それでひどい目にもあったんだけど、あのお方になら許せ……いや、もうちょっと手心がほしかった。面倒な手動やめようよ……。

 あと壊してはダメだという申し送りはしておこう、いや、していてわざと壊されたのかもしれないけど!


 それはさておき。


 豊穣とは言えない国を豊かにするために、城や王都全域にいるものの魔力を少しずつ奪い、土地の栄養に変えていた。これが1番の重要項目。

 土地が枯れるのは呪いではなく、今までのバフが切れたからだ。元に戻っただけ。

 水が濁るのはもともとそういう水質で、こちらも元に戻った。

 要するに汚染地帯に国を作ったってことなんだと思う。前文明のかなり大きな都市が地下に埋まってるから、影響がなかったとは思えない。


 2番目の重要項目は、魔物の侵入を防ぐ結界の要であること。他国には普通に魔物と呼ばれる巨大生物が存在する。ゲーム序盤には討伐イベントが発生し、お小遣い稼ぎできるものだ。大した驚異でもないのでうっかりしていたが、一般人は普通に狩られる側だ。

 それがこの国にはいなかった。

 山から獣がという話は聞いていたが、あれ実は魔物らしい。しかし、この国人は魔物をみたことがない。やけにデカい獣としか認識していない。

 そのくらい守られていた。


 この結界は今のところ穴が空いてるけど維持できている。

 ただ、これ、維持するのには魔力が必要なのにそれを捻出できる人はかけている。増幅するところも破損していた今までのことを考えるとなぜ維持できていたのかが不明だ。


 このあたりがもやっとポイント。

 この城に魔法使いはいない。いたらある程度の維持は出来ただろうけど、城下も含めてもういないらしい。ごく一部を除き、魔導の王に心酔していたので地方に左遷か監獄いれられたか、死んでる。

 ほんと、なんか、心折れるな……。推し同士の語らいできる日が来てほしいんだけど。


 つまり一般人レベルの魔力保持者しかこの城下も含めいないはずだ。

 どこからその魔力を出してきたのか。

 王は、いないのに。その血縁であれば、多少は代わりを務められるだろうが、その血縁さえ誰も残っていない。

 しかし、王となりえるものはどこにも残っていない。


 魔道の王が最後の一人。

 その人がいないなら、なにで?


「…………あ、首」


 落とされた首は王都へ。凱旋のために持っていったのかと思ったのだが、違うのかもしれない。


 死してなお、使われる。


 そうだとしたら。


 ……。


 もう、崩壊も致し方ない。自らの行った責任を自分たちで贖ってもらうしかない。


 その日から、修理もほっといて城を夜中に徘徊することにした。逃走経路の準備、それから確実にあるかの確認。

 こっそり持ち出すことはできるかもしれない。

 最初はそうしようとしたけど、それじゃだめだ。


 他の誰かを連れてきて人身御供のように置かないように、壊れてしまったように見せかけなければならない。まったく、面倒な。


「……うむ」


 そんな忙しい日々、毎日見に来てしまう部屋があった。

 偉大なる魔道の王の私室である。

 王族の私室というのは確かに鍵穴がなかった。


 ただ、音がする箇所があり、その部分が気にはなるが推しの私室……。

 断腸の思いで断念した。

 推しの私室、入りたい。しかし、当人が亡くなり、誰も許可なく不法侵入するわけには。建前があれば! いいのに……。恨めしく思いつつ去ることにした。

 さらば、推しの部屋。入りたかった。でも、プライベートスペースは犯してはならぬ。そこまで土足で入っていいわけではない。

 はいりたいけど、そこは信者としても弁えるべきだろう。


 心底残念だけど。


 そうして翌日も来てしまうのであった……。

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