表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第二十七話 -天才の玩具箱-
162/321

アウトブレイク


 二人のドクターは壁を背にして座り込んでいた。喧噪をバックコーラスにしながら、二人して白い天井を眺めている。

「ふ、復旧状況。よくな、よくないみたい」

 細身の少年、ドクター・オドがそう呟く。

「あーし知らないー。てか施設の一つや二つどうでもよくてさー」

 ピンク髪の女性、ドクター・ミリが興味なさげに答える。

「鉄槌じゃん? あれなくなったのが一番堪えるじゃん?」

「うん……どうせならも、もっといっぱい、撃っとけば良かった」

 ミリとオドは二人して溜息を吐き、ずるずるとやる気なさげに姿勢を変え、床に寝転んだ。

「てか無理じゃん? 真っ向勝負でフェイスやレリクスとやり合えって無理ゲーじゃん?」

「鉄槌はそ、損失。他の、ほ、他の破壊兵器、兵器類も。フェイスのせい、で動かせない」

 現状の把握と理解……二人のドクターはそれらを済ませ、沈黙を重ねる。

「あーし達さ。もうちょっと人の気持ちを考えて行動した方が良くない?」

 沈黙を破ったのはミリだ。オドに問う目を向けている。

 オドはミリの視線を受け、唸りながら思案を続けた。

「……それぞ、それぞれの行動パ、パターンを構築して、一人ずつや、やる?」

 にんまりと笑みを浮かべ、ミリは力強く頷く。

「フェイスは進化がどうとか言ってそれの研究に夢中、三騎のレリクスはプラトーを倒したがってるけどフェイスとは敵対してる。じゃあ次はどうなんのって話じゃん?」

「ぼ、僕達はそもそも、そんなに嫌われるような事、してないし。勝手につぶ、潰しあってくれるかな?」

 ミリとオドは互いに顔を見合わせ、にへへと短く笑い合う。

 二人同時に上体を起こし、ミリは立ち上がりオドはノートパソコンを開く。

「まあチャンスがあったらぶっ殺されるかもだけど、そうならないよう準備しておけばいいだけだし?」

「この施設、ぼうえ、防衛じゃなくて、迎撃に使っちゃっていいよね? 欲しいドクターと実験体、ミリは何かある?」

「あー。ここは別に思い入れないかなー。全部使っちゃっていいよー」

 ミリの返答にオドはこくこくと頷き、口元を緩めながらキーボードをリズミカルに叩く。

 ミリは携帯端末を操作すると、にんまり笑みを浮かべる。

「時間は掛かっちゃうかもだけど、最終的にフェイスが死んでいればそれでオッケーじゃん? 時間を掛ければ何とかなるんなら、時間を稼げばいいだけ。ねー?」

「だね。い、いつでも出来るよ。フェイスにシステムをめ、滅茶苦茶にされたから。簡単に侵入出来た」

 ミリとオドは視線を絡め、どちらからともなくにへへと笑う。

「善は急げって奴っしょ! やっちゃおやっちゃお!」

「じゃ、じゃあ実行。ポチっと」

 ミリとオド、二人がいる部屋の扉がロックされる。

 外は相変わらず復旧に向けて喧噪が鳴り響いていたが。

 それらはすぐ、悲鳴と慟哭に変わることになるだろう。

 ミリは手元の携帯端末に視線を落とし、オドはノートパソコンのウインドウを見据える。二人の目の前に映し出されているのは、この部屋の外……施設のあらゆる場所に備わっているカメラの映像だ。

 ドクターに作業員、警備員、そして実験体……雑多な人々が忙しなく職務や趣味や余生を全うしている中、それは突如として起こった。

 一人が胸を押さえ、もう一人が頭を抱える。何かに気付いたドクターが壁に駆け寄り、防護服を手に取った所で嘔吐し倒れ込む。

「作っといて良かったっしょ? 無色無臭のレリクト」

「元素としてのせい、性質はだうん、ダウングレードするけど。濃度や散布量でカバー出来る」

 ミリとオドは、モニターの向こうで起きている惨状を眺めながら話し合う。

「強化や進化、まあそれも大事ですけど? こういう事にも使えるってのは、忘れちゃいけないよねー」

 扉を、窓を叩く音が響く。ミリとオドのいる部屋、その外にいるドクターが、文字通り血眼になって扉や窓を叩いていた。

「ウケる、殆どホラーじゃん」

「ぷ……ふふ」

 ミリとオドが笑い合う中、ドクターは床に蹲り、その身体を変質させていった。

 モニターの向こうも似たような状況だ。レリクトを過剰に摂取した人間、その末路へと。誰も彼もが突き進んでいく。

 咆哮がそこかしこで鳴り響く。首のなくなった人間達は首のない化け物、アロガントへと変態した。

 目の前で扉や窓を叩いていたドクターも、既に首はない。胴体に空いた馬鹿でかい口腔で、生まれ変わった今日を祝福するように叫ぶ。

「いえーい、成功!」

「い、いえーい」

 ミリとオドはハイタッチを交わし、談笑を続ける。

 アロガントになっていく悲鳴となってしまった慟哭をバックコーラスに、二人はいつものように笑い合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ