表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第二十四話 -進化の激突-
148/321

地の果てに潜むもの


 少女は、黒崎芽依は忌々しげに顔をしかめ、モニターから目を背けた。

「アロガントも面白い進化をするなあ。ただスピードが遅い、というよりも唯くんが早過ぎるのか? これだからよく分からないものは面白いんだよなあ!」

 一方、ドクター・フェイスは満足げに喋り続けている。そのやかましさは芽依が顔をしかめている理由の一つだったが、本質ではない。

 無言故に雄弁な片羽唯のメッセージに、否応なしに自覚させられる実力差……芽依は苛立ちを抑えながらフェイスを見る。

「随分楽しそうだけど、結論だけ教えて。どうすればあれを殺せる?」

 芽依の問いに、フェイスは短く笑う。

「あー、無理じゃないかなあ。イイ線はいきそうだけどねえ」

 芽依は溜息を吐き、フェイスを睨み付ける。

「イイ線、ねえ。足りないのはお前の頭か? それとも私?」

「どっちもかなあ。進化って訳分からないんだ。それが面白いんだけど」

 無邪気な笑顔を見せるドクター・フェイスだったが、芽依はそれで納得出来るようなタイプではない。

「ちゃんと説明してよ。私はあれを殺す。初めからお前が無理とかほざいてるんじゃあ、お話にならないだろ」

「一理あるね。何でも頭の中で推測し片付けちゃうのは僕の悪い所だ。説明かあ。まず分かりやすい所で言うと、デバイスとガイドの差はやっぱりあるよね」

 芽依は自身の胸をちらと見る。人工心臓型レリクトデバイス、ブレスドサイファーは初期型、それもプロトタイプモデルだ。おまけに失敗作の欠陥品でもある。

 ガイド、と聞いて真っ先に浮かんだのは姉の、黒崎紫乃の姿だ。結局、今日も話すことは出来なかった。あれからずっと、姉は拒絶を続けている。

「私の腕を切って、アームドレイターを使えば同等になるってこと?」

 であれば、それも選択肢の一つになる。覚悟と共に吐き出した質問だったが、ドクター・フェイスは首を傾げていた。

「どうかなあ。唯くんと同じことをしても、同じように強くなる訳じゃないだろう?」

「ドクターが聞いて呆れるよ。片羽唯の奇跡は再現出来ないって言いたいの?」

 ドクター・フェイスは訳知り顔で頷き、芽依を指差す。

「奇跡、面白い言葉だよね。その点で言えば、君も充分に奇跡を起こしているよ」

 今度は芽依が首を傾げる番だ。フェイスは話を続ける。

「君のレリクトデバイス、ブレスドサイファーの機能はまさに心臓そのものだ。レリクトを身体中に循環させる。普通ならアロガントになっておしまいなんだけど、君はそれに適応した」

「ただの偶然。こんなもので死ぬわけにはいかなかっただけ」

「そういう偶然を奇跡って言うんだろ?」

 芽依は口を閉じ、とりあえず反論は取り止めた。言葉遊びに付き合うつもりはない。

「まあともかく、君はそのレリクトをレリクスとして顕現させる事にも成功し、一時的ではあっても肉体すら変質させた。声を変えてるのはディエゴの玩具かい?」

 芽依は頷く。姉に、紫乃に正体を悟らせない為、ドクター・ディエゴに用意して貰ったものだ。

「致死のレリクトに晒された上で、君のように生存した者は少ない。というか、僕が知る限りでは二人だけだね。一人は君で、もう一人は」

「片羽唯。じゃあ何だ? 私もあれも、お前から見れば似た者同士って事か?」

 フェイスは指を鳴らし、にやりと笑みを浮かべる。芽依は溜息を吐き、モニターに背を向け歩き出す。

 芽依は扉に手を掛け、部屋を後にしようとする。だが、その前にドクター・フェイスの背中を見据えた。

 片羽唯と自分は似ている。似たような奇跡を経て、未だにどちらも死んでいない。

「なら、どうしてお前はあれが勝つと思ってるんだ? 私じゃなく」

 ドクター・フェイスはモニターをじっと見据えている。そして、振り返りもせずに答える。

「ま、僕の勘かな。君は絶対イイ線いくよ。でも、進化の先へ向かうのはきっと唯くんの方だ」

 フェイスの声は、勘という不確かな要素を口にしているとは思えない程、確信に満ちていた。

 芽依は何も答えずに扉を開け、部屋を出る。

「君も、君のお姉ちゃんもさ」

 姉と聞き、芽依は反射的に振り返る。ドクター・フェイスは背中を向けてはおらず、こちらへ向き直り張り付いたような笑みを浮かべていた。

「前に進むって感じがしないんだよね。ずっと地べたを這いつくばってる感じでさ。科学的な根拠とかなくてごめんね」

 言い返そうとして口を開くも、漏れ出る音は吐息のみ。芽依は自分から目を逸らし、扉を乱暴に閉める。

 少女にはそれしか出来なかった。








 次回予告


 唯とリンは《ブランデッド》レリクスの力を使いこなしつつある。

 エイトやゼロ、緑や光の協力も得て反撃に出ようとするものの、プラトーもドクター・フェイスも簡単には見付からない。

 力はあれど振るう場所がない。そんな中、依守市のプラトーに大量の物資と人員、そして波乱が運び込まれた。


「うわああ! やっほディエゴちゃん! 久し振りじゃん!」

「お、おひさー。あの、あのお近づきのしるしにし、死んで貰えますか?」


 ブランクアームズ第二十五話

 -炸薬の空-

 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ