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ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第二十四話 -進化の激突-
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灰の花弁


 一騎と四体が入り乱れる度、交差点が破壊されていく。唯とリンは、《ブランデッド》レリクスは目立った被弾もなく立ち回っていた。

 右義手で握っている短剣、ブーステッドソードが灰結晶を纏う。それを即席の棍棒代わりにし、大剣を引き摺りながら突っ込んできた《アールディア》を模したアロガントを殴り飛ばす。砕けた灰結晶を目眩ましに使い、立ち位置を素早く変える。

 《ブランデッド》は屈みながらブーステッドソードの切っ先を遠方にいる《アーマード》を模したアロガントに向けた。ブーステッドソードは先程の攻防の間にブラスターを形成しており、射出された巨大な光弾が《アーマード》を模したアロガントを弾き飛ばす。

 間髪入れずに敵の攻勢は続く。屈んだ体勢の《ブランデッド》に対し、《ラーヴァレイズ》を模したアロガントは背後に回り込み、大斧と化した左足で踵落としを仕掛けてきた。

 《ブランデッド》は立ち上がりながら背面に回し蹴りをかまし、大斧と化した左足の軌道を逸らす。そのままの勢いでブラスターをまたもや即席の棍棒代わりに振り抜き、《ラーヴァレイズ》を模したアロガントを昏倒させる。

 拉げたブラスターは灰結晶となり砕け散るも、その破片を押し退けるようにして《アブレイズ》を模したアロガントが突っ込んでくる。

 アロガントは右腕のチェーンソーを突き出すも、《ブランデッド》は即座に形成した円形の剣身を保つ大剣、ラウンドソードを盾代わりにして防ぐ。

 《アブレイズ》を模したアロガントは構わず左腕の大型アームを思わせる三本爪を振り下ろし、大剣の防御を砕く。

 しかし、その瞬間に《ブランデッド》は全身の力を活かす為に回転する。次いで形成された溶岩の大斧が、重量と爆発を用いて《アブレイズ》を模したアロガントを吹き飛ばした。

 苦戦する要素はない。しかし四体の首なしレリクス(もど)きは、損傷箇所を再生し平然と立ち上がる。

「とことんタフだな……」

 唯はそう呟くも、リンはあらと意外そうな声を出す。

「貴方も似たようなものだと思うけど」

「ええ……そうかなあ」

「そうよ。ここにエイトが居たら真顔で頷いてる所でしょうね」

 そんな事を話している内に、四体のアロガントは再び《ブランデッド》へ食らい付いてくる。唯とリンは、《ブランデッド》はそれらを捌きながら会話を続ける。

「アナザーかシェイプシフター、オルタナティブとかもありかしら」

「名前のこと? こんな偽物、《フェイク》で充分じゃない?」

 迫るアロガントを殴り飛ばしながら、唯は一番分かりやすい名前を選ぶ。

「うーん、まあ、それでもいいけど」

「じゃあ決まり。真似っこアロガントは《フェイク》アロガントね」

 余裕そうな態度が気に食わなかったのか、《フェイク・アブレイズ》が咆哮と共に胴体に形成したブラスターを乱射し始めた。《ブランデッド》は《フェイク・ラーヴァレイズ》を射線に投げ付けて盾代わりにし、自分はさっさと攻撃範囲から逃げた。

「その《フェイク》アロガントだけど、解析は終わったわ。最初から分かってたけど、どうも不完全ね。とりあえずガワだけ真似ているような感じ」

 リンの解析が終わり、世界が一変する。《ブランデッド》は迎撃せずとも、四体のアロガントの攻勢を捌けるようになった。相手がどう動くのか、どこに立てば最小の動きで躱せるのか。それらが直感的に分かる。

「そうだと思った。エイトや緑を相手にしたら、こんなに楽出来ないもんな。じゃあ決めようか」

 《ブランデッド》は左義手でレリクト・シェルを三発掴み、それを右義手に装填する。一回二回と連続でスライドし、最後の一回は大剣と共に降下してきた《フェイク・アールディア》を殴り飛ばす衝撃でスライドした。

 右義手が灰色の光を纏う。それは握り締めたブーステッドソードに伝播し、レリクトの力を余すことなく注ぎ込んでいく。

 正面から突っ込んできた《フェイク・ラーヴァレイズ》を左の爪で殴り飛ばし、背面から飛び掛かる《フェイク・アーマード》を回し蹴りで迎撃する。《フェイク・アブレイズ》が尚も胴体のブラスターを乱射するも、《ブランデッド》はその光弾を最小の動きで避けてブーステッドソードを左義手にある二本爪へと装填した。瞬く間に二本爪が、そして左義手が灰色の光を纏う。

 四体の《フェイク》アロガントが、それぞれの得物を構えて殺到する。それに対し《ブランデッド》が行うカウンターは、右義手で左義手に装填したブーステッドソードを引き抜くのみ。

 灰結晶が砕ける。炸裂と言い替えてもいい衝撃を前に、四体のアロガントは後ずさるしかない。左義手の二本爪は結晶によって肥大化し、右義手の五本指には《デッドリー》を思わせる爪が形成されていた。

「あいつの技だ、全部持っていけ!」

 《ブランデッド》は灰結晶の具足を纏った左足に力を込め、その鎧すら砕く勢いで踏み込み、掻き消える。

 四体の《フェイク》アロガント達を結ぶように、二条の軌跡と五条の軌跡が走った。

 《ブランデッド》は瞬間移動にも等しいステップ移動で、すれ違い様にアロガントを斬り裂いたのだ。

 移動と斬撃は一瞬にして無数、夥しい数の斬撃軌道は灰結晶によって具現化し、アロガント達を結果的に灰結晶の中へ閉じ込めた。

 それらを成し遂げた《ブランデッド》は、巨大な塊と化した灰結晶の直上にいる。

「らああああッ!」

 唯は、《ブランデッド》は叫びながら降下、その灰結晶の塊へと両腕の爪を叩き込む。どんな攻撃でも砕けそうにない灰結晶は、主である《ブランデッド》だけを受け入れ内部へ招く。そして次の瞬間、内包した全てのレリクトを炸裂させた。

Boostate(ブーステイト),deadly(デッドリー)

 その一撃を空から見る者がいれば、咲き乱れる灰結晶の花弁を見ただろう。

 灰の爆発が、ただ一騎を除いた全てを消し飛ばす。

 爆心地の中央に佇む《ブランク》レリクスは、周囲を見渡してから右義手型アームドレイターを取り外した。

 外装が霧散し、《ブランク》は唯の姿に戻る。その傍にリンが生じ、思案顔で周囲を睥睨する。

「鳥葬、《クロウ》の使った技ね」

「うん。短時間なら再現も出来るみたい」

 リンは頷くと、片手で携帯端末を操作する。遠方からエンジンの唸り声が聞こえ、ロードアンカーがこちらに向かっているのが見えた。

「とりあえずは及第点ね。私はもう数十分解析を速くするべきだし、貴方は途中までは冷静だったけどトドメの時に数値が予測値をオーバーしたわ」

「相変わらず厳しい……」

「及第点って言ったじゃない」

 リンの中では、及第点も充分褒め言葉の域なのだろうか。

 そんなことを考えている内に、ロードアンカーは目の前に停車した。ハンドルからは右義手が展開され、こちらの乗車を待っている。

 唯はロードアンカーに跨がると右義手を右肩に接続する。リンは後部座席に飛び乗り、片手でバーを掴んでいた。

 唯は空を見上げる。ここから見えないだけで、プラトーは自分達を監視している事だろう。そして、ドクター・フェイスも見ている。そこにいる筈の黒崎芽依も、きっと見ている筈だ。

 《クロウ》の技を使ったのは、再現出来るかもというテストも兼ねているが。そこに込めた意味は、芽依への明確な宣戦布告だ。

「……見てるんだろ。お前の技だ」

 小さく、誰にも聞こえないような声で唯は呟く。唯は空から視線を外し、ロードアンカーを発進させる。

 エンジンの唸り声が、静かな街によく響いていた。

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