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リアルオンラインを完全解約したい俺、女神の手違いで永久サ終阻止の英雄に認定される 〜カルマ残高ゼロで成仏したいのに、無欲すぎて勝手に徳が振り込まれるんだが〜【全50話完結確約】  作者: ランダムアクセス
第2章:押し寄せる富と名声のカルマテロ

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第19話:過保護聖女の合流と過剰介護

「……グルルル……クゥ〜ン……」


 全長五十メートルの紅蓮竜が、俺の足元で行儀よく伏せをし、甘えた声を出しながらローブの裾をペロペロと舐めていた。

 超高温の火炎ブレスを吐くはずの舌先は、なぜかほんのり温かい猫の舌のような感触で、俺の足元をびしょ濡れにしている。


「あの……師匠」


 すっかり腰が抜けたままのレオンが、引きつった笑みで竜を見上げた。


「こいつ……すっかり師匠を親犬だと思い込んでますぜ。名前、どうするんすか?」


「名前なんかつけるか。俺はペットを飼う気はないし、賃貸の規約でもペット不可だ。……そんなに名前を付けたければ、タロウとでも呼んでおけ。早くどっかの火山にでも飛んでいけ」


「タロウ!? この神話級の古代紅蓮竜にタロウっすか!? 実家の駄犬みたいな名前っすよ!?」


「グルルン☆」


 だが、当の紅蓮竜は「タロウ」という雑極まりない響きがなぜか甚だしく気に入ったのか、嬉しそうに巨大な尻尾をブンブンと振って地面を揺らした。

 俺が巨大な鼻頭をペシペシと叩いて追い払おうとしても、「キュルルン☆」と喉を鳴らして甘えるように目を細めるばかりだ。

 だめだ。知能が高いはずなのに、俺の適当な命名と「敵意ゼロ」を「究極の愛情」と勘違いしているらしい。


 ――ズドドドドドドドッ!!


 その時、峠道の後方から、車輪の軋む激しい音と共に猛烈な土煙が上がった。

 四頭立ての白馬に引かれた馬車が、ドリフト気味に急停車する。


「レイ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」


 馬車の扉が蹴破られ、純白の修道服を着た少女が、ほとんど飛び降りるように転がり出てきた。

 見習いシスター・セシリアだ。

 丸眼鏡を外れかけさせ、乱れた黒髪も直さず、涙で顔を濡らしながら全速力で駆け寄ってくる。


「セシリア……!? なんでお前がここにいるんだよ!」


「大聖堂を抜け出されたと聞いて、馬車を飛ばして追いかけてまいりました! 途中で『災厄の竜が目覚めた』と聞き、私の寿命は百年縮まりました……! ああ、神よ! ご無事で……本当にお怪我はございませんか!?」


 セシリアは俺の両肩を掴み、全身をくまなく点検するようにペタペタと触りまくった。

 そして、俺の真横でゴロゴロと喉を鳴らしている五十メートルの巨竜を見るなり、ヒッと小さく悲鳴を上げた。


「な、なんという禍々しい気配……! あのような邪悪なる紅蓮の怪物の前に、たったお一人で立たれるなんて……!」


「いや、見ての通りただの巨大な甘えん坊トカゲだが」


「滅相もございません!」


 セシリアはきっぱりと首を横に振り、眼鏡をクイッと押し上げた。

 レンズがきらりと光る。


「レイ様はお優しすぎるのです! 自らの身の危険も顧みず、民のために災厄を引き受けておられる……! ですが、レイ様のお命は、もはやレイ様一人のものではございません! 万が一にもあなた様に擦り傷一つでもつけば、全人類の……いえ、世界サーバー全体の取り返しのつかない損失なのです!」


「世界サーバーとか勝手に専門用語を使うな。お前には意味が分かってないだろ」


「はい! ですから、二度とこのような危険に晒されぬよう、私の持てる全魔力をもって守護の契りを結ばせていただきます!」


「は? 守護の契――」


 制止する間もなかった。

 セシリアは胸元の銀のロザリオを掲げ、凛とした美声で神聖詠唱を紡ぎ始めた。


「――神聖なる光輪よ、至高の聖者に永遠の安寧を! 【神聖絶対三重障壁(トリプル・サンクチュアリ)】! さらに【生命循環自動回復(オート・リジェネレーション)】ッ!!」


 カアァァァァァッ!!


 眩い黄金の光が炸裂した。

 俺の全身を包み込むように、直径三メートルほどの半透明の多面体バリアが、三重の球体となって展開された。

 さらに足元からは、常にエメラルドグリーンの光の粒子がシュワシュワと立ち上り、全身の疲労や空腹感を強制的にリフレッシュしていく。


「……な、なんだこれ」


「ふふっ、完璧です!」


 セシリアは汗を拭い、誇らしげに胸を張った。


「この三重結界は、城壁破壊砲の直撃すら無効化します! さらに常時自動ヒールにより、蚊の一刺し、空気中の埃、擦り傷一つすら瞬時に全快いたします! これでレイ様は、未来永劫、完全に無傷のままでお過ごしいただけます!」


「やめろおおおおおおおおっ!!」


 俺はバリアの内側から壁をバンバンと叩いて絶叫した。


「過剰介護だ! 保険の過剰特約てんこ盛りかよ! 擦り傷一つ負えない完全無敵モードにされたら……事故死によるワンチャン完全解約ルートが完全に塞がれるだろうが!!」


「まあ……! 『事故死の心配すらなくなった』という私の配慮に、そこまで感極まっておられるのですね……!」


「違う! 死にたいんだよ俺は! 即座にバフを解除しろ!」


 ピロリン、と無慈悲な電子音が鳴り響いた。


『――システム通知――』

『【過剰守護受諾】が適用されました』

『最上位の神聖絶対防御および自動継続回復の常時適用を検知しました』

『世界の至宝たる存在として保護された功績を称え、カルマが付与されます』

『付与カルマ:+100.00 pt』

『現在のカルマ総残高:4,700.00 pt』


「…………」


 四千七百ポイント。

 完全無敵。

 もはや自決もできなければ、モンスターに食われて事故死することもできない。

 死ぬことすら許されない、永久稼働サーバーの完全固定オブジェクトと化してしまったのだ。


「もう嫌だ……誰か俺のコンセントを抜いてくれ……」


 俺が膝から崩れ落ちた、その時だった。


 パパパーン! パラララッ、パッパパー!


 渓谷の出口から、銀のトランペットが高らかに鳴り響いた。

 見れば、純銀の甲冑に身を包んだ近衛騎士団が、白銀と群青の公国旗を掲げて整然と行進してくる。

 その先頭を進むのは、豪奢な衣装をまとった公国王室の全権使節だった。


「――静粛に! ハイランド騎士公国国王陛下よりの、極秘親書である!」


 使節が高らかに羊皮紙を掲げた。

 またしても、俺の平穏を木っ端微塵に粉砕する、最悪のイベントフラグが接近してきていた。


---


### 【本話のカルマ会計報告】

- **開始残高**:4,600.00 pt

- **本話の増減**:+100.00 pt(【過剰守護受諾】セシリアによる多重絶対障壁および常時自動回復の強制付与判定)

- **終了残高**:4,700.00 pt

- **現在の魂ランク**:国家英雄域リーチ(解脱可能基準値:0.00 pt まで、残り 4,700.00 pt の減算が必要)


読んでくださりありがとうございます!


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