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リアルオンラインを完全解約したい俺、女神の手違いで永久サ終阻止の英雄に認定される 〜カルマ残高ゼロで成仏したいのに、無欲すぎて勝手に徳が振り込まれるんだが〜【全50話完結確約】  作者: ランダムアクセス
第2章:押し寄せる富と名声のカルマテロ

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第18話:棒立ちスルーと「無血調伏」の奇跡

 巨大な紅蓮の爪が、空気を切り裂いて頭上寸前へと迫っていた。


 大理石の円柱ほどもある鋭利な爪先。

 かすめるだけで人間の肉体などミンチになり、岩石すら粉々に粉砕する質量兵器だ。

 熱波が前髪を焦がし、地面の小石が衝撃波でパラパラと跳ね飛ぶ。


「師匠ォォォォォッ!!」


 レオンの絶望的な叫びが鼓膜を打った。


 だが、俺の心拍計(バイタル)は、睡眠時以下の数値を叩き出していた。

 身じろぎ一つしない。

 目を閉じもしない。

 防御の構えも取らなければ、反撃の魔力を練る気配すら微塵もない。


(さあ来い。痛覚パッチが作動する前に、一撃でアカウントごと吹き飛ばしてくれ)


 俺の脳内を占めていたのは、ただその一念だけだった。

 敵意ゼロ。

 悪意ゼロ。

 恐怖ゼロ。

 現世という名のクソゲーに対する、完全なる興味の喪失――「無気力」の極致。


 ――しかし。

 この「完全なる脱力」が、太古より生き続けるドラゴンの超感覚を、致命的なバグへと叩き落とした。


「――!?」


 爪が俺の額まであと五センチに迫ったその瞬間。

 紅蓮竜の琥珀色の瞳が、見開かれた。


 ドラゴンは、知性の高い高等捕食者だ。

 強大な敵と対峙した時、相手が放つ「殺気」や「魔力」、あるいは追い詰められた獲物の「恐怖」を感知して戦う。

 だが――目の前のボロ布の人間からは、そのどれもが一片たりとも感知できなかった。


 反撃の構えがないのではない。

 生き物としての生存本能そのものが、完全に休眠(オフライン)しているのだ。


(な、なんだこの生物は……!? 我を前にして、心拍数が下がっている……!?)


 ドラゴンの本能が、激しい警報を鳴らし始めた。


(殺気も敵意もない……! これは、我の攻撃など意にも介さぬという絶対的な強者の証か……!? あるいは、ここに爪を振り下ろした瞬間、世界の因果そのものが反転し、我の存在が虚無へと消滅させられる罠なのか……!?)


 あまりの「無」を前にして、ドラゴンの過剰防衛本能が暴走した。

 深淵を覗き込んだ者が深淵に呑まれるように、俺の圧倒的な無気力オーラが、竜の精神に狂気的なプレッシャーとしてのしかかったのだ。


 そして――。


 ピタッ。


 振り下ろされていた巨大な爪が、俺の鼻先数ミリのところでピタリと静止した。


「……ん?」


 風圧で前髪が揺れる。

 痛覚もなければ、衝撃もない。

 怪訝に思って見上げると、五十メートルの超巨大ドラゴンが、全身の鱗をプルプルと震わせて脂汗を流していた。


「おい、どうした? 早く潰せよ。業務を滞らせるな」


 俺が不機嫌そうに呟いた、その瞬間だった。


 ズズゥゥゥン……!


 突如として、ドラゴンが前脚を折り曲げてその場にひれ伏した。

 それだけではない。

 巨体をぐるりと反転させ、白く柔らかい腹部を惜しげもなく空へと晒し、両前脚を行儀よく胸元で丸めたのだ。


「――グルルル……キュルルルルン……」


 のどをゴロゴロと鳴らしながら、巨大な尾をパタパタと左右に振っている。

 まるで飼い主の帰りを待っていた大型犬が、お腹を撫でてくれと甘えているかのような姿だった。


「…………は?」


 俺の口から、間抜けな声が漏れた。

 なんで腹を見せてるんだこのトカゲ。

 野生動物の降伏ポーズか? いや、完全に服従して懐いている時のやつだ。


「お、おい……冗談だろ……?」


 岩陰から顔を出したレオンが、腰を抜かしたまま顎が外れそうなほど口を開けていた。

 そして、遠巻きに見ていた公国の重装騎士たち、そして国境警備騎士団長が、わなわなと震えながら駆け寄ってきた。


「ば、化け物を……あの災厄の紅蓮竜を……!」


 騎士団長は兜を脱ぎ捨て、涙をポロポロとこぼしながら、その場にドスンと膝をついた。


「剣を抜くこともなく……魔法を放つこともなく……! 一切の敵意を持たぬ無償の慈悲と、森羅万象を包み込む無我の境地のみで、あの狂暴なる災厄を懐柔せしめたというのか……!? これぞ……これぞ神話の時代にすら存在しなかった、『至高の無血調伏』の奇跡……!!」


「無血調伏の聖者様だァァァッ!!」


 騎士たちが、避難民たちが、一斉に地面に額を擦り付けて号泣し始めた。


「待て。違う。俺はただ死にたかっただけで――」


 俺の抗弁をかき消すように、脳内で過去最大のファンファーレが炸裂した。


 ピロリロリロリロリロリロリロリロリロリーンッ!!


『――世界法務・神話級功績通知――』

『【神話級調伏:災厄の鎮圧】が執行されました』

『太古の災厄竜を武力に頼ることなく、無我の境地をもって心服せしめた究極の徳を検知しました』

『付与カルマ:+2,000.00 pt』

『現在のカルマ総残高:4,600.00 pt』

『判定ランク:大貴族 ➔ 【国家英雄域】へ王手(リーチ)!』


「にせええええええええんぽいんとおおおおおおっ!?」


 俺は頭を抱えて絶叫した。


 二千ポイント。

 一撃で二千ポイントの超特大爆撃。

 残高は瞬く間に四千六百ポイントへと跳ね上がり、国家英雄の領域へとリーチがかかってしまった。


「なんでだよおおおおおおおっ!! 死なせてくれなかった上に、なんで二千ポイントも押し付けてくるんだよおおおおおっ!!」


 俺の悲痛な絶叫に応えるように、巨大なドラゴンが「キュルルン☆」と可愛らしく甘えた鳴き声を上げ、巨大な鼻先を俺の頬にすり寄せてきたのだった。


---


### 【本話のカルマ会計報告】

- **開始残高**:2,600.00 pt

- **本話の増減**:+2,000.00 pt(【神話級調伏:災厄の鎮圧】無我の脱力による紅蓮竜の無血調伏判定)

- **終了残高**:4,600.00 pt

- **現在の魂ランク**:国家英雄域リーチ(解脱可能基準値:0.00 pt まで、残り 4,600.00 pt の減算が必要)


読んでくださりありがとうございます!


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