↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルオンラインを完全解約したい俺、女神の手違いで永久サ終阻止の英雄に認定される 〜カルマ残高ゼロで成仏したいのに、無欲すぎて勝手に徳が振り込まれるんだが〜【全50話完結確約】  作者: ランダムアクセス
第2章:押し寄せる富と名声のカルマテロ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/20

第12話:固定資産税と解約違約金の恐怖

「頼むからこれを受け取ってくれ! 頼む! 返上させてくれ!」


 大理石の床の上で、俺は羊皮紙の束を豪商ミダスの胸元へと必死に押し付けていた。


 羊皮紙には金文字で、『聖レイ大聖堂 総本山座主 永久不動産保有権利書』と禍々しく記されている。

 三十五億ゴールドの固定資産。

 こんな呪いのアイテムを保持し続けていたら、解約どころか来世で大貴族どころか王族に強制転生させられてしまう。


 だが、ミダスは脂汗を流しながら、全力で首を横に振って後ずさった。


「滅相もございません! 商人組合が神聖なる誓約をもって聖レイ様に寄進した資産ですぞ! それを突き返すなど、我々商人の魂に『背信』のブラックマークが刻まれてしまいます!」


「知るか! お前らのカルマの傷なんてどうでもいい! 俺のアカウントに勝手に巨大インフラを紐付けるな! サーバーの維持管理コストを個人に押し付けるのは優越的地位の濫用だぞ!」


「ゆうえつ……? い、いや、濫用などとんでもない! 維持費の心配なら一切ご無用です!」


 ミダスが満面の笑みで胸を叩いた。

 嫌な予感が背筋を駆け抜ける。


「聖レイ様、ご安心を! すでに我が商人組合の財務スペシャリストを集結させ、完璧な管理体制を敷いておりますからな!」


「管理体制……?」


 不吉な単語に俺が固まった、その時だった。


「聖者様ぁぁぁーっ! 素晴らしいご報告です!」


 純白の法衣の裾を翻し、見習いシスター・セシリアが分厚い革表紙の帳簿を抱えて小走りでやってきた。

 丸眼鏡の奥の瞳は、まるで救世主を拝む信者のように爛々と輝いている。


「先ほど、王都および周辺三都市の教会支部に神聖通信を繋ぎ、驚異的なシステムを完成させました! 全土から聖レイ大聖堂へ押し寄せる巡礼者たちの喜捨(お賽銭)を魔導回線でプールし、大聖堂の年間維持費、清掃費用、および王国へ納める固定資産税を――【全自動納付】する仕組みを構築いたしました!」


「……は?」


 俺の思考回路が、またしてもカチコチに凍りついた。


「ぜ、全自動……納付……?」


「はい! 名付けて『聖レイ信託ファンディング・オートチャージ機構』です!」


 セシリアは誇らしげに胸を張り、眼鏡をくいっと押し上げた。


「毎日、何千人もの信徒が捧げる銅貨や銀貨が、大聖堂の地下金庫へ自動転送されます! そこから敷地面積に応じた税金と人件費が自動的に引き落とされ、常に黒字運営が維持されるのです! これで聖者様は、一文の金銭管理に煩わされることもなく、未来永劫この大聖堂の主として安泰にお過ごしいただけます!」


「安泰に……お過ごし……?」


 俺はがくがくと膝を震わせた。


 全自動納付。

 オートチャージ。

 それは現代の言葉で言えば、**「解約不可能な永久自動更新サブスクリプション」**の開通を意味していた。


(ふざけんな……! ふざけんなよおおおおおっ!!)


 頭の中で最悪の計算式が猛スピードで組み上がっていく。


 固定資産があるだけでも重罪(カルマ加算)なのに、信徒からの賽銭が自動で集まり、税金が自動で支払われる永久機関。

 つまり俺は、何もしなくても、ただこの大理石の上で息をして寝ているだけで、毎秒毎分「大聖堂の所有者」としての莫大な徳ポイントが口座へ自動チャージされ続けるということだ。


「それ……サブスクの課金枠を勝手に増やされて、解約ボタンをグレーアウトされたのと同じじゃねえか!!」


「さぶすく……? かいやくぼたん……?」


 セシリアがぽかんと小首を傾げた。


「俺が寝ている間にも、ずっと『徳の利息』が口座に振り込まれ続けるんだぞ!? 解約違約金が天文学的数字に跳ね上がるだろうが! 誰がこんな悪質なプラットフォームを承認した!」


「あ……あああ……!」


 セシリアの眼鏡の奥から、またしても大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。

 隣のミダスも、ハンカチで目を押さえて号泣している。


「なんという……なんという深遠なる御慈悲……! 『自分が寝ている間にも富が集まる』ことを喜ぶどころか、他者の労働と祈りを一身に背負う重責に、魂を震わせておられるのですね……!」


「違えええええよ! ただのサービス利用規約の苦情だよ!」


「おお、神よ! 富を独占することを『罪』と捉え、全人類の救済という十字架の重さに涙しておられる……! この純粋なる魂を、我らは命に代えてもお支えしなければなりませんぞ!」


「組合総出で、聖レイ様の終身名誉座主の地位を永久保証いたしますぞーっ!」


 ピロリン、と無情極まりない電子音が脳内に響き渡った。


『――システム通知――』

『【定額信仰ボーナス】が適用されました』

『全自動信託システムによる持続可能な信仰基盤の確立を検知しました』

『付与カルマ:+50.00 pt』

『現在のカルマ総残高:1,600.00 pt』


「…………」


 千六百ポイント。

 声も出なかった。

 抗議すればするほど、相手の信仰心にブーストがかかり、口座残高が肥え太っていく。


(……だめだ。ここにいたら殺される)


 物理的に死ぬのではない。

 魂が神聖カルマの過剰摂取で肥満化し、完全ログアウトが不可能な「超重量級アカウント」へと不可逆変異してしまう。

 この金ピカの大理石の檻から、一刻も早く脱出しなければならない。


(今夜だ)


 俺は項垂れたふりをしながら、心の中で冷徹に決断を下した。


(今夜、全員が寝静まった深夜に、着の身着のままで夜逃げしてやる。こんなクソ聖堂、二度と戻ってくるか!!)


---


### 【本話のカルマ会計報告】

- **開始残高**:1,550.00 pt

- **本話の増減**:+50.00 pt(【定額信仰ボーナス】信徒喜捨による全自動納付システム稼働判定)

- **終了残高**:1,600.00 pt

- **現在の魂ランク**:地方貴族・有力領主域(解脱可能基準値:0.00 pt まで、残り 1,600.00 pt の減算が必要)


読んでくださりありがとうございます!


少しでも「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけたら、

ページ下部の


・【★★★★★】での評価

・ブックマーク登録


で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


次回更新も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。