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リアルオンラインを完全解約したい俺、女神の手違いで永久サ終阻止の英雄に認定される 〜カルマ残高ゼロで成仏したいのに、無欲すぎて勝手に徳が振り込まれるんだが〜【全50話完結確約】  作者: ランダムアクセス
第1章:アカウント開設とチュートリアルの悲劇

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第10話:膨れ上がる口座と絶望の夜明け

 東の空が白み始め、荒野に朝露が静かに降り注いでいた。


 河原の平らな石の上で、俺はゆっくりとまぶたを持ち上げた。

 肌を刺すような朝の冷気。川のせせらぎと、草むらで鳴く秋の虫の声だけが耳に届く。


 周囲を見渡す。

 昨日の夕方まで騒がしかった魔導水晶のカメラ部隊も、キラキラした聖女カノンの姿もない。

 どうやら深夜のうちにバッテリーが切れたか、あるいは夜間の生配信規定に引っかかったらしく、全員街へと撤収したようだった。


「……やれやれ。ようやく嵐が去ったか」


 俺は冷え切った体を起こし、軽く肩を回した。

 視界の端に半透明のステータスウィンドウを呼び出し、現在の口座残高を確認する。


『現在のカルマ総残高:550.00 pt』

『判定ランク:平民上位』


 初期残高ゼロからスタートしたはずが、転生からわずか四日で五百五十ポイント。

 ボルドの改心、セシリアの炊き出し拒絶、カノンへの論破と、ことあるごとに理不尽なボーナスを叩き込まれた結果だ。


 だが――俺はまだ諦めていなかった。


(予定より大幅にプラスへ振れてしまったが……まだ、取り返せる範囲だ)


 五百五十ポイントなら、まだ「善良な一般市民」の枠組みを出ていない。

 来世で地方貴族や勇者候補に強制エントリーされる「一万ポイント」には程遠いし、国家英雄クラスの「五千ポイント」に比べれば微々たるものだ。

 ここから無駄な人間関係を断ち、完全に人の気配のない西の果て――神界との接続ポイントである「断絶門」があるという未開の荒野を目指せばいい。

 道中でじわじわとカルマをドブに捨てる方法を検証していけば、いずれゼロ着地(完全解約)は十分に可能だ。


「よし。そうと決まれば、こんな街の近くには一秒たりとも長居は無用だ。今すぐ出発しよう」


 俺は埃を払い、大石から身軽に飛び降りた。

 西の地平線を見据え、力強く最初の一歩を踏み出した――その時だった。


 ――ズズズズズズズズ……ッ!


 足元の石ころが、小刻みに跳ね始めた。


「……ん?」


 地鳴りだ。

 地震か?

 いや、違う。微かな揺れは、瞬く間に大地を揺るがす猛烈な重低音の轟音へと変わっていく。

 ドドドドドドドドッ! と何千何万もの車輪と蹄(ひづめ)が大地を踏み荒らす音が、東の地平線から押し寄せてくる。


 異変を感じて振り返った俺は、その場に氷結した。


「……な、なんだあれは……?」


 東の地平線から、巨大な砂煙が天を衝くように立ち上っていた。

 その土煙の中から姿を現したのは、見渡す限りの大船団――いや、何百台もの巨大な荷馬車の大行列だった。


 荷台に積まれているのは、眩いばかりの白亜の切石。

 天に向かってそびえ立つ、純白の大理石で削り出された巨大な円柱。

 金箔で覆われた祭壇の屋根瓦。

 そして荷馬車の周囲を埋め尽くしているのは、ツルハシやスコップを担いだ何千人もの作業員と、熱狂的な歓声を上げながら行進してくる何万人もの市民と信徒たちの大群だった。


『聖レイ様ぁぁぁーっ!』

『奇跡の苦行僧様をお守りしろーっ!』


 隊列の先頭を行く、純金で装飾された超巨大な馬車の屋根の上に、見覚えのある肥満体の男が身を乗り出していた。

 王都屈指の資産規模を誇る豪商ミダスだ。

 彼は金貨の入った袋を両手に掲げ、涙と鼻水を流しながら絶叫していた。


「聖レイ様ぁぁぁーっ! お待たせいたしましたぞぉぉぉーっ! 昨夜の生配信を拝見した王都の全商人が一致団結し、緊急クラウドファンディング【聖レイ大聖堂建立プロジェクト】を立ち上げました! そして今朝未明、目標額である金貨三十億枚を満額達成いたしましたぞぉぉぉーっ!!」


「……は?」


 俺の脳の処理が完全に停止した。

 きんか……さんじゅうおく……?

 くらうどふぁんでぃんぐ……?


「聖者様ぁぁぁーっ!」


 背後から、息を切らせた見習いシスター・セシリアが全力疾走で駆け寄ってきた。

 丸眼鏡を涙で濡らし、満面の感動の笑みを浮かべている。


「良かったですね、聖者様! あなた様の冷たい風に耐えるストイックな『丁寧な暮らし』に心を打たれた全土の民が、あなた様のために大陸史上最大の大聖堂を建立してくださるそうです! もう寒風に震えることも、冷たい河原の石の上で眠る必要もありません!」


「待て。待て待て待て!」


 俺は全身の血の気が引いていくのを感じながら叫んだ。


「三十億ゴールド!? 誰がそんなものを頼んだ! 俺は野宿が好きなんだ! 家なんかいらない! 大聖堂なんて建てられたら固定資産税はどうなるんだよ!!」


 その瞬間。


 ピロリロリロリロリロリーンッ!!


 これまで聴いたこともないような、やかましくも豪華絢爛なファンファーレ音が脳内に響き渡った。

 視界の中央に、真っ赤なド派手なポップアップウィンドウが爆発するように展開される。


『――神界カスタマーセンター緊急通知――』

『お客様ぁ! 大陸トレンド第1位獲得&大バズりおめでとうございまーす☆』


 女神アラヤの、耳を塞ぎたくなるような煽り声が直接脳内に響き渡った。


『いやー、さすが零様! 開設4日目で王都の国家予算級のクラファンを即日完売させるなんて、前代未聞の神対応インフルエンサーです! これに伴い、お客様の口座には【超巨大固定資産(大聖堂)の保有予定ステータス】が予約されました! 来期からは膨大な固定資産税カルマが自動チャージされまーす☆ 解約なんて夢のまた夢ですね! 第2章も張り切ってどうぞ☆』


「アラヤああああああっ! てめえええええええっ!!」


 俺の絶叫をかき消すように、何千人もの作業員たちが荒野に殺到し、俺の周囲の地面に次々と杭を打ち込み始めた。

 みるみるうちに包囲され、積み上げられていく巨大な白亜の石材と金ピカの柱。


「おい待て! 俺の周りに壁を作るな! 囲むな! 閉じ込める気か!?」


「聖者様、どうか中心にお座りください! あなた様を中心に据えて、半径百メートルの大聖堂を組み上げてまいりますので!」


「更地に勝手に固定資産を発生させるんじゃねえええええええええっ!!」


 青空の下、吹き荒れる土煙と歓声の中で――俺の平穏な解約計画は、三十億ゴールドの超巨大建造物によって無残にも叩き潰されようとしていた。


(第1章 完)


---


### 【本話のカルマ会計報告】

- **開始残高**:550.00 pt

- **本話の増減**:±0.00 pt(大聖堂建立予約・第1章終了のためシステム確定加算は第2章へ繰越)

- **終了残高**:550.00 pt

- **現在の魂ランク**:平民上位(解脱可能基準値:0.00 pt まで、残り 550.00 pt の減算が必要)


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