一時の休息
食事は見た目通り美味く、しばらく夢中で食っていた。
「楽しんでいるようだな」
そう言うと、パルカラはパキパキと音を立てて骨ごと肉をかみ砕き飲み込んだ。
「お前こそ楽しそうじゃねえか。骨まで食っちまって」
「当然だ。天下に名高いタークサルは、出す食事まですばらしく、ことに鶏の丸焼きは、骨まで味が満ちている。」
俺はそれを聞くと、もう既にたくさん食べていたのに腹が減ってくるような気がしたんだ。
「おやめください、のどにささりますよ。パルカラは口の中が強いから平気なのです。」
パルカラの真似をしようとした俺を、タークサルが止めた。
「うらやましいな、パルカラのその…特技は。どうやって身に着けたんだ?」
「彼女は、ええと、口と胃腸が生まれつき強く」
「うむ、まあそんなところだ。」
食事の後、俺は部屋を与えられた。城の中だからか、壁も天井も石づくりだ。俺の屋敷の、木製の床が恋しくなってしまうなあ。ベッドとかの家具は高級品らしく、部品と部品の間に隙間がほとんどないし、獅子や鷲の形に彫られたところまである。
「うーむ、上等だ。」
俺はそのまま、寝支度をして寝た。
物音がしたのを聞いて、夜中に目を覚ます。それだけならすぐに寝て終わりだったが、小便に行きたくなったので、部屋を出る。夜中だから、明かりといえば手元のランプだけになる(それでも高級品で、ある程度偉くないと使えない)ものだけど、この城では廊下にぽつぽつと灯りが置かれている。いい食事を用意できる貴族でも、明かりを一晩中つけっぱなし、とはいかないはずだが。
トイレから戻る途中、パルカラと出会う。
「パルカラ、なんでこんな夜中に」
「そちらこそ、なぜだ」
「小便だよ。で、お前はどうしたんだ」
「私は眠らない体質でな。暇だから警備も兼ねて城内を散歩していたんだ」
「眠らないって、お前は本当に変な奴だな」
「そうだな…いいだろう、教えてやる、お前なら。塔の上ででも話そう」
それから俺たちは、城壁伝いに塔へと向かい、そこにいた兵士と見張りを交代した。兵士はパルカラの前で丁寧にふるまってはいたが、ずいぶん嬉しかったらしく、踊るように体を揺らしながら去っていった。思いがけず幸運が降ってくるってのは、本当にいいもんだ。
「ここなら、お前以外には聞かれないだろう」
「内緒話か」
「ああ。私の生まれにかかわる話だ」
雲が風に流されて、月が出てくる。ひときわ強い月明かりに照らされながら、パルカラは話を始めた。
「私の先祖の一人は、美しい村娘で、森に出て食べ物などを探すのを好んでいた。あるとき娘は森の中で竜と出会った。竜は娘に一目惚れしてしまって、求婚した。娘は竜に少しもなびかず拒絶した。すると竜は泣き声をあげ飛び去ったが、それ以来何度も娘に会いに来た。宝や、山の上の宮殿のことを話して娘の気を引こうとしたが、すべて失敗した。あるとき村は干ばつに襲われた。雨が降らず、多くの者が渇き、あるいは飢えて死んでいった。そんなとき、娘は竜のことを思い出した。娘が森に出て呼ぶと、竜はすぐにやってきた。娘は、自分が竜の妻となるから、代わりに村を助けるようにと言った。竜は大喜びで娘を捕まえ、飛び去った。その後雨が降って、村は助かったという。娘はというと、竜と子を成し、そしてその子供は人間離れした力を持っていた。その子孫の一人が、あるときプツアール領主になった。そして今、私は受け継いだ竜の力でもって、女ながらに騎士をやっている。」
「…つまりお前は、竜の子孫というわけか」
「うむ、そうだな。信じられないか?」
「ああ。お前が変わったヤツなのはわかったが、竜の血が流れているなんて」
「お前のような化け物が人間なら、竜の血を引いているくらい大したことはあるまい」
「それを言われたら弱いな」
「わかったろう…ん、おい、あそこを見ろ」
「うん?」
見てみると、いくつもの影が城壁に梯子をかけて登っている。数十人はいるようだった。
「侵入者か!」
「アルゴは奴らに対処してくれ。殺してしまって構わん。私は皆を起こしに行く。」
「応!」
俺は塔から城壁へと飛び降り、そのまま敵のもとへ走っていった。




