赤き女騎士
城の門に着くと、真っ赤な鎧を着た騎士が俺達を迎えた。
「とまれとまれ、お前は誰だ?」
「俺はロンド。アルゴ・ロンド。俺が今背負っているラッセルを救ける者がここにいると聞いた。」
「いかにも、この城は大商人ラッセルの庇護者、タークサル一等貴の住むところ。誰もが門を通れるわけではない。我が名はパルカラ。お前はラッセルか、あるいはロンドか。相応しき者のみ通れるのだ。」
「俺がロンドだという証拠は、お前よりも強い二本の腕のほかには持っていない。」
「では、示せ。」
「まて、俺の背負う男の傷をみろ。」
俺は一旦ラッセルを下ろし、手や顔を騎士に見せる。
「このように傷ついた者は、助けるべきだ。俺は騎士道のことなどわからないが、それがお前のやり方だということは知っている。」
それを聞いた騎士は、これまた真っ赤な服を着た従者を呼び、ラッセルを城の中へと運ばせた。
「彼は城へ運んだ。彼がラッセルでもそうでなくても、きっと手当てを受けるだろう。さて、次はお前の番だ。私より強いと言ったなら、言い訳も泣き言も聞かないぞ」
「お前こそ、俺の力に驚けばいい。」
俺は、道中追手から奪った剣を抜く。騎士が抜いた剣は、刀身まで真っ赤で、竜の模様がつけられていた。
「いくぞ!」
騎士が斬りかかってくる。剣で受けると、向こうは直ぐに剣を引いて、また斬りかかる。剣の腕前では俺よりもずっと上らしく、俺は斬りかかるべきタイミングを掴めなかった。しばらく防御を続けていると、騎士は急に剣を納めた。
「どうしたんだ」
「お前の勝ちだ。私がこんなにも攻撃しているのに、お前はそれらを全て防ぎきり、ほんの少しの動揺さえなく、しかも息が上がってもいない。このまま続ければ、いずれ私が負けるだろう。」
「だったら」
「ああ、わかっているとも。案内しよう、ついてきてくれ。」
俺は騎士の後に続いて、城の中へと入っていった。
城に入ると、すぐさま歓迎を受けた。十数人の女達が俺を迎え、荷物を預かり、鎧を脱がせていった。
「凄いだろう、我が主タークサルは。」
「そうだな。美人で仕事の早い召使がこんなにいる。ならば、その主人の力も問うまでもない。」
「まだまだ、こんなものではないぞ」
「あっ!」
目の前で兜を脱いだ赤の騎士の頭からは、美しい金髪が伸びていて、その顔は凛々しくまた美しかった。かなりの美人だ。ヒドロより好みだな。
「女だったのか、お前!」
「うむ…珍しかろう?」
「なんで女が騎士なんかやってんだ?」
「人には事情というものがある…お前もそうだろう?『元』征制屍地メンバーのアルゴ・ロンド?」
「悪い悪い、許してくれ」
二人とも鎧を脱いで、召使たちの案内する通りに進むと、その先には豪勢な食卓が待っていた。鶏の丸焼き、鮮やかなサラダ、犬でも中に入れそうなほど大きなパン、そんなものがたくさん並んで、長机を埋めている。
「オー、ロンドどの、よくいらっしゃった。」
そう言って、身長2mほどで、口ひげを生やし、上等な布でできた装飾つきの服を着た中年の男が現れた。
「お前が、タークサル一等貴か」
「そうです。タークサル家の当主として、あなたを迎えられたことを誇りに思います」
「ふふ、そう言われたら嬉しくなっちゃうな。改めて、俺はロンド。アルゴ・ロンド。いきなりだが、ラッセルはどうなった?」
「ええ、心配はいりません。かなり痛むが、命には関わらない、といったところのようです。一月ほどここで療養させることにします。」
「ありがとう、タークサル。お前のような者がいると心強い。」
「当然です。魔王軍との戦いのときは、彼が私を助けたのですから。」
そんな話をしていたら、俺の腹がグゥーと鳴った。
「ふふ、ロンドよ、貴様の腹が飯を求めているぞ」
そう言ったパルカラの腹も鳴った。
「…くく、人生とは、まこと予想のつかぬものよな」
「ふむふむ、早く食事にするべきでしたな。それでは、パルカラはそこの席、ロンドどのは私の前の席に」
「うむ!」
パルカラは機嫌が良さそうだった。




