ラッセル、救出
俺は友人であるラッセルを救うため、都に再び乗り込んだ。都は壁で囲まれていたが、見張りがあまりいなかったから、簡単に乗り越えられた。
「今回ばかりは、門番をぶん殴る訳にもいかないからな」
そんなことを言いながら歩いているが、やたらと騒がしい。俺の記憶では、今いる辺りは下級貴族の使用人が集まって住んでる所で、人通りはあまり多くないはずなんだけど。とりあえずその辺の人に話を聞いてみよう。
「一体なんの騒ぎだ?こんなに人が多いなんて、祭りでもあるのか?」
「ああ、久しぶりに処刑があるらしい。」
「処刑…!処刑されるのは?」
「大商人…ラースルだったと思う、そんな名前だった」
「ラッセルか?」
「そう、それだ!なんでかは知らないけど、とんでもない罪なんだろうね。」
「どこで処刑されるのか、わかるか?」
「クワル広場らしい。」
「あそこか!」
俺はすぐに走り出した。といっても目立っちゃあいけないから、あんまり速くは走らなかった。
「ここか…」
行ってみると、広場の中央には絞首台が置いてあった。そしてその周りを群衆が取り囲んでいて、群衆とその内側とは、細い木を紐で縛って作った簡単な柵と、武器を持ち、赤い色の服を着た兵士らしき者がたくさん、そして全身鎧の、騎士らしき者が計八人。うち二人は、鎧を着込んで兜だけ脱いだヨーゼフと話をしている。普通の商人一人を殺すのに、こんな厳重な警戒をするはずがない。やっぱり情報はかなり漏れてたらしいぞ。そう思っていると、ヨーゼフが群衆に呼び掛ける。
「これより2刻ほどしてから、大商人ラッセルの処刑を行う!ラッセル・ブラウは謀反に協力し、武器や食料などを提供していた。おまえ達、国を揺るがそうとする者は皆こうなると覚えておけ!」
「うーむ」
今すぐに暴れてヨーゼフを拷問にかけたいところだが、それをするにも装備が足りない。牢獄に忍び込んで、チョチョイっと助け出すつもりだったから、目立つ鎧も剣もない。あるものといえば隠し持ったナイフくらいだけど、これだけじゃなあ。騎士となれば、その辺の兵とは比べ物にならないだろうし。
「よし、あそこの店に寄るか」
向かうは数ヶ月前に見つけた武器屋。木でできたボロい扉を開けば、たくさんの武器が俺を待っている。
「スノーボール!武器頼む!」
店主が答える。こいつの仕入れる武器は出来がいいんだ!
「あんたか…扉はもう少しゆっくり開けてくれ」
「いきなりで悪いが、あそこにある鎧一式、それから長剣を2本、短剣を10本、槍を…」
「待て待て、なんの冗談だ?そんなにたくさん…それにお前お尋ね者だろ」
「説明している暇はない、ほら、代金だ」
俺は袋いっぱいの金貨を渡す。店主は黙って、言われた通りの装備を用意し始めた。役人を買収するために持ってきておいたのが役に立った!
「で、やはり鎧にベルトを巻いて、そこに武器を差していくか」
「そうしてくれ」
俺は店主に甲冑を一通り着せてもらって、そこにあちこちベルトを巻いて、それに武器を差していく。腰には長剣を左右1本ずつ、胸と太ももには短剣を計16本、そして背中に槍を6本。
「甲冑よし、槍よし、剣よし、短剣よし、殺意よし!」
「おお…すげえ…いや本当にすげえ。嫁が縫い物してるとき、布の玉みたいなのに針を刺しておくんだけど、それみたいだ」
「いい仕事だスノーボール!次も頼むぜ!」
「次があればな」
完全武装の反乱首領は、広場に向かって足を進める。首領と言っても、仲間らしい仲間はラッセル一人だけど。途中まではみんな道を開けてくれたけど、広場近くになるとこっちに気づかない奴も増える。
「どけ、どけ~っ!離れないとケガするぞ~!」
でかい声出したらみんな避けてった。なんかチンピラみたいでやだな。視界が良くなったから見てみると、なんとラッセルは手首を縛られて、絞首台のそばに立っている!危なかった、今にも殺されそうという時だ!
「スーパー殺戮マンのご登場だっ!」
柵を引き裂いて内側に侵入する。俺の前ではもろいもんだぜ!
「敵か!」
「アルゴだ!あんなマネする奴はあいつしかいない!」
兜越しにも見抜かれた!俺がイケメンすぎてわかっちゃうのかな(笑)。
「うおーっ!」
突っ込みながら剣を振れば、雑兵どもは血煙と化す。四人五人と斬っていけば、兵たちも怖じ気づく。
「怯むな!囲んで攻撃しろ!」
ヨーゼフが指示を出す。いい指示だ、冒険に出ていただけはある。
「でも俺のほうが強いぞ!」
短剣を投げつけると、短剣は兵の胸を貫通して、二人を貫いて血と肉を引き連れ建物に突き刺さった。
「あいつ、化け物か!?」
「俺たちに任せろ!」
鎧姿の騎士たちが向かってくる。なるほど動きが俊敏だ。
「オリャーっ!」
「食らえ逆賊め!」
俺はトマホークやメイスを振り下ろしてくるのを避けていく。安易に近寄ると、連携で袋叩きにされるぞ。
「そらそら!」
俺の目の前を長剣が掠める。
「避けられた!?」
「そこだ!」
俺は飛びかかり、兜を両手で挟んで中身ごと潰す。隙間から血が飛び出した。
「一人やられた!」
「突出するな!」
連携にすぐれていても、一人やられればその分隙が生まれる。俺はそれを利用して槍を構え、騎士の一人の胸を突き刺した!
「ぐっ…」
倒れる騎士。しかし雑兵が厄介だ。背後から攻撃されればさすがに効くかもしれないしな。
「これだっ!」
俺は持っていた短剣を投げまくる。全部投げたころには、雑兵の屍で広場が埋まり、その中に甲冑が4人分あった。
「悪魔め…」
「怯えてる暇なんかないぜ!」
長剣の一本を横向きに回転させて投げる。置いてあった荷物の陰から顔を出した騎士は、頭を落として血を噴いた。
「野蛮人め…野蛮人め野蛮人め!」
「クローク様、指示を!」
そんなことを敵が言っている間に、俺は剣を抜こうとした騎士に掴みかかる。
「こ…こいつ…」
「へへへ、お前よりずっと強い力だ!」
そして手足をちぎりとる。鎧はバキバキと音を立て、その隙間が開くほどに肉の筋が引き出されていった。
「ギャアアア!」
「に、逃げるぞ!」
ヨーゼフは顔を青くして、その場から走って逃げ出した。
「クローク様、この商人は」
「そんなもの放っておけ!」
うむ、ヨーゼフのその判断は正しいな。でないと逃げ遅れる。俺はラッセルの側に立っていた仕事熱心な騎士に近づく。
「なあ…そいつを渡してくれないか」
「い、嫌だねッ!」
「どうして意地を張るんだ?俺はお前に恨まれることをした覚えはないぞ」
「お前のような奴を好きにさせておくと、世の中はきっと乱れる!」
「そっかあ、その通りかもなあ」
俺は背後から斬りかかろうとした別の騎士をぶん殴って変形させた後、ラッセルのそばにいた騎士に接近する。
「速っ…」
「そら!」
俺は騎士を掴んで、思い切りぶん投げる。騎士は近くの民家の二階の壁に突き刺さった。辺りを見れば、ラッセルの他に生きている者は誰もいなかった。やっぱり大暴れするのは気持ちいいな。
「おいラッセル、どうだ!俺が助けに来たぞ!」
ラッセルの手を縛っていた縄を解いてやると、ラッセルは俺の手を強く握って、そのまま泣き出した。
「ありがとう…ありがとう…ありがとう…」
顔や手をよく見ると、あちこちに小さな傷痕が残っていて、爪も全て剥がされていた。
「爪を剥がされました。傷口に塩を塗り込まれました。その他、語り尽くせないほどのいろいろも。けれど、あなたに関することは、何も吐きませんでした。」
「よくやった。」
俺はその後、ラッセルを背負って都から逃げ出し、ラッセルの後ろ楯になっている貴族の城へ行った。




