闇に潜む刺客
俺はパーティを追放されて殺されかけて、さっきパーティの一人である魔法使いヒドロを殺した。もちろんそのまま都にいたら捕まるから、商人のラッセルが提供してくれた隠れ家に逃げ込んだぜ!
隠れ家のあるあたりは、たくさんの店が建っている。みんな木造で、ボロ屋って感じのも多い。その辺にいる奴に、隠れ家になる店がどこにあるか聞いてみる。
「なあ、アストープの店を知らないか」
「それはお空だ。天国ってのはお湯の味がするんだ。スープの皿みたいにな。」
この通りイカれた奴もたくさんいる。それもそのはず、ここらは荒くれ者に大人気なんだ。客も店主も荒くれ者だから、通りには数メートルおきに人が転がっている。生きてるか死んでるかは、あんまり考えたくないね。それにしても腐敗臭がひどいから、早いとこ隠れ家に行きたいんだけど。
「お、あれか」
見つけたのは赤地に白で文字が書かれた看板。この辺の看板の中では豪華なほうだ。
「おーい、おやじさん」
店主に話しかける。あとはラッセルに言われたとおりにすればいい。
「鶏のひれ、魚のクチバシ。トカゲの耳、犬の卵。」
それを聞いた店主の顔つきが変わる。
「あんたが…」
驚きのような感情をうかがわせる表情で、俺のことを見つめてくる。やっぱ俺、人気者だよね。でもせっかくなら、男よりも女の子にモテたいなあ。
「いや、すまない、あんたがヤービルだな」
「ああ」
ラッセルにもらった偽名だ。
「よし、それじゃあ、店の奥まで」
品物の間を通り抜け、奥の部屋まで通される。
「この穴の下です」
そう言って、店主は床に空いた穴を指差す。
「ここが…」
穴からは階段が続いていて、そこから降りていくと、地下室になっている。部屋の中は暗くて、入り口のランプから入る明かりで中がようやくわかるくらいだ。
「うーむ…」
「すいません、あまりいい部屋は用意できず」
「ああいや、十分だ、大丈夫」
隠れ家がもらえるだけありがたい。あんまりゼータクいっちゃあダメだな。
俺はひとまず荷物を床に置いて、ベッドで寝てみた。
「うわくっせ!」
ひどいベッドだ。カビの臭いがはっきりしている。昔空き家の片付けをしたときのことを思い出すぜ。周りをよく見てみると、壁も床も土で、石なんてない。せいぜい、木の柱と梁があるくらいだ。たぶん、雨が降ったら水が流れ込んでくるんだろうな。ベッドはこの部屋に置きっぱなしだから、腐ってるんだ。
「ここで寝るのはキツいな」
俺は床で寝ることにした。固くて湿ってたし冷たかったけど、カビの臭いはしなかったんだ。
夜中に、俺は物音で目を覚ました。見ると、ベッドのそばに何人か人がいて、一人はベッドに棒みたいなものを突き刺していた。
「…?」
「どうした」
「いや、手応えがなくてな」
男は棒を抜いて、布団をひっくり返した。
「いないぞ」
「逃げたか」
「いや、確かにここに来ていると家主は言っていた」
ははーん、暗殺者だな。部屋が暗くて、外の明かりももほとんど入らないから、俺がベッドにいないことがわからなかったんだ。よし、闇に乗じる卑怯者どもは、闇の中で叩き潰してやろう。
「はっ」
男が音を吐き出す。俺のパンチで、背後から胸を貫かれたんだ。
「敵だ!」
別の刺客は刃物を構えようとするが、俺を相手取るには遅すぎる対応だ。
「しゃあっ!」
相手の頭を掴んで、滅茶苦茶に振り回す。壁や天井に十回は当たったし、敵にも何回か当たった。
「一度逃げるぞ!」
階段を上ろうとした敵がいたから、持っていた敵を投げつける。
「うわっ!?」
俺は逃げようとした敵に近寄り、首を掴んで壁に押し付ける。
「お前ら、誰に頼まれてここに来たんだ?教えてくれるなら、殺さないでおくぜ」
脅してみるけど、通じるかなあ。暗殺者ってのは、強情だったりするもんだから。
「言うものか…!」
やっぱりな。自分の命より秘密を大事にするなんて、こいつは素人じゃなくて、プロだな。
「言ってくれよ、頼むよ」
俺は敵の腹を一発殴ってみた。壁に押し付けてあるから、衝撃を逃がせなくてダイレクト!
「ぐふっ」
「言うか?」
「言わないぞ!」
「何も命をかけることはないのに」
その後俺は、歯を全部折ったり、爪を剥がしたり、あるいは単純にぶん殴ってみたりしたけど、口を割らなかった。
「ああわかったよもういいよ!死ぬんだね!お前は!」
俺はついに我慢できなくなって、胸を潰した。
「ウッ」
男はそれだけ言ったけど、その前の段階で意識は飛んでたから、まあ、空気入りの袋を潰したのと一緒で、ただ『音』と表現したほうが正しいかもな。
地上に上がって探してみたけど、店主はどうやら逃げたらしい。ひとまず、今晩は町から離れて、野宿した方がいいな。




