闇の中
世話になった城で侵入者と闘ってたら、侵入者の一人は俺を追放して殺しかけたヨーゼフ・クロークだった!しかもヨーゼフのやつ、俺のことをクズとか言いやがる!
「クズとは何だよクズとは。俺のこと裏切って殺しかけて、今はこの城の奴らも殺してる。どう考えてもお前のがクズだろ」
「口答えするか…お前…自分がどんな奴かわかってるのか?」
「ああ?俺は最強アルゴ様だ!」
「大概の領主を単騎で撃破する武力を持ちながら、財宝だの女だのとフラフラ遊び歩き、役人という地位も忘れて大はしゃぎで喧嘩する。山賊の討伐で武力を活かすことがあるかと思えば、組織の母体まで勝手に叩き滅茶苦茶な数の犠牲者を出して地域を混乱させる。個人には過剰な暴力と、それに釣り合わない空っぽの頭。お前は社会で生きていちゃいけないんだ」
「いいもんを探すのは当然だろ!役人だって喧嘩をしたいし、山賊に関しては向こうから話をデカくするんだよ!…俺が生きてていいか決めるのは俺だよ。違うってんなら決めてみろよ」
「そんなだから、お前は死ぬことになる」
そう言って、ヨーゼフは左腕を左右に振る。すると、辺りが真っ暗になった。ただでさえ廊下は暗いのに、これじゃあ何にも見えない!
「畜生、魔法か!」
「力自慢も、見えなきゃ役に立つまい!」
「こんな小細工が通じるか!すぐに殺してやるぞ!」
「ふふ、強がりを」
吠えてみたが、実際かなりマズい状況だ。あいつの言う通り、力が強くても、敵が見つからなくて攻撃できないなら意味がない。しかも向こうは、訓練なり魔法なりで暗闇でも周りが見えるようにしているだろう。
「ッ!」
気配を感じ、とっさに右へと跳ぶ。剣が俺の左手のあったところを背後から斬ったらしかった。
「お前、臆病がすぎるぜ!冒険してたときからパーティで一番弱くて、セコい技ばかり身に着けてたな。」
右側から聞こえた、ポスと床に何かが落ちるようなわずかな音が聞こえると同時に、敵から奪っておいた剣で防御する。剣は敵の剣を防ぎ、俺はそのまま反撃するが、すぐに退いたようで手ごたえはなかった。わずかとはいえ足音を立てるあたり、俺の挑発が効いて動揺したんだろうが、それでも致命的ってほどじゃない。
「畜生…」
このままじゃ不利だ。一旦逃げるか?いや、それだとこいつは野放しだ。タークサルもパルカラもいいやつだ。この城のみんなが殺されれば、それだけ悲しむだろうし、それは俺も嫌だ。そんなことを考えながらヨーゼフの攻撃を避けていたが、闇のプレッシャーもあって集中力が削られ、そしてそんな疲労を見抜かれたんだろう、あるとき飛んできた三本の針のうち、一本を左の太ももに食らってしまった。
「しまった…ううっ!」
返し付きの針を咄嗟に抜いたので、傷が大きくズタズタになり激痛を生む。
「毒が入ってるよな、多分…」
「当たったな。お前は終わりだ!」
声のした方向に向けて針を投げるが、命中せず壁に刺さったと音が伝えた。キョロキョロと周りを見て敵を探そうとするが、見つかるはずもなく、敵は盛んに攻撃を続けている。
「うっ…怠くなってきたような…」
毒が回りはじめ、筋肉に力が入らなくなる。針が刺さったところが一番ひどく、必死になって力を入れると太ももが震えてくる。だが脱力は腰や腹にまで広がり始める。
「くッ!」
服の袖に何かが当たるのを感じ取り、まだ動かしやすいほうの脚で飛び退く。袖に触れてみると、斬られて破れていた。
(まずいぞ…毒のせいで左脚は使えない。それ以外にも毒は広がっている。このままだと動けなくなる!)
俺は倒れて起き上がれないまま、剣が起こすわずかな風を頼りにして床を転がって攻撃を避ける。だがそれも、長くはもたないだろう。
「うっ!」
俺の顔のすぐ横で、床に勢いよく何かがぶつかる。ヨーゼフはパーティの中じゃ一番弱かったが、毒と暗黒があれば話が変わる。
「ち…く…しょう…ッ!」
ヨーゼフがいるであろうところを殴ろうとする。だが思ったように動かない。ゆっくり動く。子供さえ倒せないその拳は、狙ったところに届くこともなく床へと落ちた。
「アルゴ・ロンド…これがお前の愚かさの帰結だ!」
そう叫ぶラッセルの方を向くことすらできない。思考はぼやけ、夢の中にいるような感覚に陥る。
「ロンド!」
声が聞こえた。強い女の声だった。何かがドサという音を立てた。そして俺は眠りについた。




