【70話】ノクシアへ、デジャヴ。
リュカとドランはもう一つの新商品、石鹸入浴剤(仮)の開発。
俺とルシアはノクシアで店舗探し。
ノクシアへ向かう道中、俺とルシアは並んで歩いていた。
「で、新店舗は建てるのはこの街か」
「ああ。交易路が交差してて、冒険者も商人も多い」
「ふーん。悪くねぇな」
歩調は気楽だが、視線は鋭い。
この人、油断してるようで全然してない。
「……セラ、元気にしてるか?」
唐突に、ルシアが聞いてきた。
「いつも通りだ。店もきっちり回してる」
「そりゃそうだ」
満足そうに鼻を鳴らす。
「昔から、あいつは無理するタイプだからな。アンタがいて助かってる」
「……俺が?」
「自覚ねぇのか」
ルシアは笑った。
「セラが“様”付けで呼ぶ相手なんて、世界に何人もいねぇぞ」
(それはそれで重いんだが……)
街に着くと、すぐ不動産屋を見つけた。
古い木造で、看板もくすんでいる。
中に入った瞬間――
視線が、俺に刺さる。
「……坊主?」
露骨だな、おい。
「保護者の方は?」
「いない」
俺が答えると、店主は鼻で笑った。
「店を借りたい?冗談は大人になってから言え」
その瞬間。
「――あ?」
低い声。
次の瞬間、床、壁、天井が一斉に凍り付いた。
空気が、凍る。
文字通り。
「もう一回言ってみろ」
ルシアが、笑っていない目で店主を見る。
「誰が、冗談だって?」
店主の顔が、紙のように白くなる。
「ひ、ひぃ……!」
「今から言う条件の物件、出せ」
氷が、きし、と音を立てる。
「安く。デカい。余計な話なし。即決だ」
「は、はい! はいぃ!!」
結果、信じられないほどの格安で店舗を譲ってもらった。
「やりすぎじゃないか?」
店を出た後、俺が言うと。
「まだ優しい方だ」
即答だった。
その日は、新店舗でそのまま宿泊することにした。
掃除は最低限。
布を敷いて、寝る。
……嫌な予感がした。
夜中。
気配。
――来る。
瞬間、デジャヴが走る。
(……またかよ)
だが、俺が動くより早く――
次の瞬間、闇の中で何かが弾け飛んだ。
悲鳴。
鈍い衝撃音。
俺は、ほとんど起き上がらないまま、その光景を見た。
ルシアは――
寝たまま、片手で魔法を放っていた。
視線も向けない。
完全に“寝ぼけた状態”。
それでも、侵入者は全員、壁に縫い付けられて動かない。
ルシアは寝返りを打つ。
規格外。
本当に、規格外。
翌朝。
俺は事情を説明した。
「……なるほど」
ルシアは、静かに立ち上がる。
「行ってくる」
「どこに」
「決まってんだろ」
氷のような笑み。
「“後処理”だ」
「殺すなよ?」
「締めるだけだ」
その言い方が、一番怖かった。
俺は、新店舗を見回す。
(……この街、大丈夫か?)
そう思いながらも、
なぜか少し安心している自分がいた。




