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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第7章】広がる仕事の幅

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【65話】ノクシアへ

ドランのいる拠点――工場へ向かう道は、相変わらず騒がしい。


金属を打つ音、蒸気の抜ける音、そして規則正しく動く人の気配。

ここはもう、ただの作業場じゃない。


「来たか」


工場の奥から現れたドランは、腕を組んだままこちらを見る。


「急ぎの相談だって?」

「ああ。顔を見て話したかった」


俺の隣で、リュカが一歩前に出た。


「スマホで済ませる話じゃない、ってこと」

「その通り」


スマホは便利だけど、直接話すべきこともある。


簡単な挨拶を済ませ、作業台を囲む。


「結論から言う」


俺は地図を広げた。


「新しい街に、店を出す」


リュカも、ドランも、黙って続きを待つ。


「街の名前は――ノクシア」

「ノクシア……」


ドランが低く繰り返す。


「街道の分岐点にある、新興の街だ。規模はまだ小さいが、冒険者と商人の流入が多い」


俺は地図の一点を指で叩く。


「今後、必ず伸びる」

「……なるほどな」


ドランが頷いた。


「物流的にも悪くない。ここからなら、調整が効く」


リュカは腕を組み、少し考え込む。


「場所はいい。でも……」


ちらりと俺を見る。


「今までと同じ店を出すだけじゃ、ダメだと思う……」


「続けてくれ」


リュカは一歩踏み出した。


「新しい街には、新しい色が必要。“あの店と同じものが買える”だけじゃ弱い」


彼女の目が、はっきりとした意思を宿す。


「だから――新商品の開発をしたい」


一瞬、工場の音だけが響いた。


「新商品、か」


ドランが顎に手を当てる。


「具体案は?」

「まだない。でも方向性はある」


リュカは、はっきりと言った。


「ノクシアは、冒険者が多い。それも、長期滞在じゃなく“通過する”連中が」


俺も頷く。


「消耗が早い」

「そう。だから」


リュカは指を一本立てる。


「即効性と実感があるもの」

「回復系?」

「それだけじゃない」


少しだけ、口元が緩む。


「“疲れが抜けた”って、その場で分かるもの」


入浴剤に近いが、違う。

もっと即物的で、分かりやすい。


「……なるほど」


ドランが低く笑った。


「作る側としては、面白い話だ」


「やれるか?」


ドランは即答しなかった。

代わりに、作業場を一周見渡す。


「材料の調達、工程、安定供給……課題は多い」


それから、俺を見る。


「だが――やる価値はある」


リュカが少しだけ、ほっとした表情を見せた。


「じゃあ、決まりだな」


俺は地図を畳む。


「ノクシアに新店舗。特色は“新商品”で出す」


スマホを取り出す。


「俺はノクシアを見てくる。リュカとドランは新商品の開発と生産管理を頼む」


三人の役割が、はっきりと決まった。


「……忙しくなるわね」

「今さらだろ」

「違いない」


ドランが短く笑う。


工場の喧騒の中で、

新しい街の輪郭が、少しずつ形を持ち始めていた。


次に求められるのは――


店の色だ。

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