【62話】禍々しき闇声、遠隔顕現
昨夜のことを思い出す。
ノートを開いた瞬間、新しいページが現れた。
うん、間違いない。前世で書いたはずのページだ。
……しかし、よく見ると、デザインが微妙に変わっていた。
当時は間違いなくガラケーをイメージして描いたはずなのに、目の前の板は完全にスマホ型だ。
表面は黒く光り、薄く魔法陣が浮かんでいる。
側面にはびっしりと「闇」の文字。
間違いなく禍々しい。けど、操作感は完全にスマホ仕様で直感的だ。
自分でツッコミたくなった。
「……おい、ノートよ。時代に合わせて勝手にアップデートしたな?」
手に取ると、指を軽く滑らせるだけで魔法陣が光り、画面が反応する。
……便利すぎる。
でも、禍々しい外見とのギャップが、ますます笑えない。
翌日。それを持ってアリシアと一緒にグレイフォルドの拠点へ行った。
テーブルに並んだ7台のスマホ、「魂響伝導霊板」を見て、みんな思わず眉をひそめた。
「……これ、本当に大丈夫なんですか?」
セラが眉をひそめ、板を手に取るのをためらう。
「呪いの道具みたい……」
リュカも小声でつぶやいた。
ドランは表情を変えずに板を手に取るが、やはり視線は側面の「闇」に釘付けだ。
アレシアだけは目を輝かせている。
俺は深く息を吐き、軽く手を叩いた。
「みんな、落ち着け。見た目は禍々しいけど、これは通信具だ。呪いでも悪魔でもない」
板を1台取り上げ、魔力を注ぐ。
表面の魔法陣が光り、文字が浮かび上がる。
「離れた場所にいる相手と、会話ができる。魔力をさらに注げば、顔を見ながら会話もできる。」
リュカが腕組みして眉を上げる。
「つまり、遠くにいながら打合せとかできる、ってこと?」
「そうだ。しかも魔力を媒介にしているから、距離はほぼ無制限。盗聴もされない」
セラが板をそっと手に取り、慎重に呼びかける。
「トウマ様、聞こえますか?」
――声が届いた。
みんなは驚き、同時に安堵した表情を見せる。
ドランは冷静に板を確認しつつ
「なるほど、見た目に惑わされるな。便利そうだ」
俺は心の中でツッコミつつも、板を握りしめた。
「禍々しいけど便利……これで仕事の幅が広がるな」
板の数は7台。
便利さは分かるが、誰にどれを渡すか、ちゃんと考えないと混乱する。
俺はテーブルに並べ、1台ずつ確認する。
「よし、まず俺が1台」
俺が指示を出す立場だからだ。
試作や店の管理で動くことが多いし、遠隔でも連絡が取りやすいように。
次はリュカ。
「遠隔連絡もできるように。王国拠点からグレイフォルド拠点や店に即指示を出せるようにしておこう」
ドランにも。
「工場の状況や、新商品の相談をしたいときに連絡する」
そしてアレシア。
「配達担当は必須。何かあったらすぐ連絡してもらう」
握りしめた板を見て、少し興奮気味だ。
正直、何かトラブルを起こしそうで心配なので渡すのだが言わないことにした。
残りの2台は拠点用。
「ルミナス王国拠点と、グレイフォルド拠点にそれぞれ置いておこう。現場の状況をすぐ確認できる」
仲間たちはそれぞれ板を手に取り、初めての操作に目を輝かせている。
操作は簡単、でも、これで世界の情報網が一気に手中に入った気がした。




