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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第5章】王女と期待

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【57話】王国公認の一軒

王都に到着し、案内された先で――

俺は思わず足を止めた。


「……広いな」


目の前にあるのは、二階建ての建物。

白い石壁は新しく、陽の光を柔らかく反射している。

商業区の端、貴族街にも近い位置。

人の流れはあるが、騒がしすぎない。


扉を開けた瞬間、さらに驚かされた。


「……もう、店として完成してる」


リュカが小さく息を呑む。


床は磨き上げられ、天井も高い。

広めに取られた売り場には、商品棚が等間隔に配置され、

中央には試用品を並べられる大きなテーブル。


壁際には水場。

簡単な洗浄や実演ができるように設えられている。


「備品も、ほとんど揃っていますね」


セラが静かに見渡す。


計量用の器具。

保存用の棚。

包材や簡易包装の道具まである。


「……ここまでやるか」


正直、驚いた。


拠点を“貸す”というより、即営業可能な店を丸ごと渡された感覚だ。


ドランが奥へ進み、倉庫を確認する。


「作業場もある。簡単な加工や仕上げなら、ここでできる」


二階は居住用らしく、最低限の家具がすでに置かれていた。

寝台、机、収納。

どれも新品だ。


「これは……」


「逃げ場、塞がれてない?」


リュカが半分冗談、半分本気で言う。


俺は苦笑して肩をすくめた。


「善意と期待で、がっちり固められてるな」


それでも――嫌な感じはしなかった。


むしろ、ここまで用意されるほどの価値があると認められた。

その事実が、静かに胸に残る。


「トウマ様」


セラが一歩下がって、丁寧に言う。


「ここなら……きっと、よい仕事ができます」


俺は、もう一度店内を見回した。


広くて、綺麗で、整っている。

だが――


「……中身は、俺たち次第だな」


そう呟きながら、店の中央に立つ。


ここが、ルミナス王国での新しい拠点。

そして――次の商いの、始まりだった。



――コン、コン。

控えめなノック音。


「……来たな」


「ごきげんよう、トウマ」


柔らかな笑みを浮かべる、エリシア王女。

そしてその一歩後ろ、少し控えめに立つ少女。


「……こんにちは」


「久しぶりだな、リネット」


俺がそう言うと、彼女はほっとしたように小さく頷いた。


「本当に、すぐ開けそう……」

リネットが小さく呟く。


「今日は、確認と相談に来たの」

エリシアが自信満々な態度で言う。


その視線が、俺に向く。


「以前渡してもらったシャンプーとトリートメントでしたか――」


「……ああ」


「王宮内で、かなり評判がいいわ」


リネットが控えめに補足する。


「わ、私も……使わせていただいて……髪が、その……全然、違って……」


最後の方は声が小さくなったが、感想は十分伝わった。


「入浴剤、化粧水、保湿液。それに髪用のもの」


エリシア王女は指を折りながら言う。


「どれも“今まで無かった”のが一番の問題ね」


「量産は、簡単じゃない」


俺は正直に言った。


「石鹸と拭き布みたいにはいかない」


「ええ、分かってる」


王女はあっさり頷く。


「だから、流通量は少なくていい」


その言葉に、少し空気が変わった。


「高品質で、希少。王侯貴族の間で回るだけ」


「……大量発注は?」


「しないわ」


きっぱりと言い切る。


「価値は、“簡単に手に入らない”ところにあるもの」


なるほど、と内心で頷く。


「製造は?」


「信頼できる人に任せるのでしょう?」


視線が、ドランに向く。


「問題ない」


短く、それだけ答えた。


エリシア王女は満足そうに微笑む。


「じゃあ、決まりね」


「この店は――エリシア王国における“特別な窓口”になる」


リネットは少し不安そうに、でも期待を込めた目で店内を見回した。


「……あの……また、使わせてもらえますか?」


「もちろん」


俺がそう答えると、彼女は嬉しそうに小さく笑った。


商いは、もうただ物を売るだけの段階じゃない。


(責任、重いな……)


(でも)


(ここまで来たなら――やるしかない)


店の中央に立ちながら、

俺は静かに、そう思った。

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