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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第5章】王女と期待

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【56話】二度目の訪問

王国を離れ、拠点へ戻る道中。

街道は不思議なほど静かだった。


「……拍子抜けするくらい、何も起きない」


俺がそう呟くと、セラが小さく頷いた。


「はい。ですが、それこそが――今回の件が、すでに“終わった”証なのだと思います」


王女エリシアへの報告から、調査、犯人の確保。

そして処刑。


早すぎるほどの決着だった。

だが、それは感情ではなく、王国としての意思だったのだろう。


「噂、もう回ってる」


リュカが前方を見据えたまま言う。


「王宮に出入りした商人。

 王女に商品を献上し、

 その帰り道で刺客に襲われた――って」


俺は苦笑する。


「尾ひれ、背びれ付きだろうな」


「ええ。でも、だからこそです」


セラは静かな声で続けた。


「もう、隠れて商いをする段階ではありません」


拠点に戻ると、留守中にも客が来ていたらしい痕跡がいくつも残っていた。

問い合わせの札、置いていかれた名刺、紹介状。


その中に――

エリシア王国の紋章が入った封書があった。


「……来たか」


中身は簡潔だった。


王国として、貴殿らの技術と商品価値を認める

王都、あるいは近郊に拠点を構える意思があれば

便宜を図る用意がある


「完全に囲い込みね」


リュカが肩をすくめる。


「でも、悪くない話だ」


ドランは短くそう言った。


「材料、流通、護衛。どれも、今後は必要になる」


俺は少しだけ考えてから、息を吐いた。


「……噂はもう広まった。今さら、無関係を装っても意味がない」


石鹸、入浴剤、化粧水、保湿液。そして、まだ世に出していないもの。


「なら――」


俺は決める。


「エリシア王国に、拠点を作ろう」


セラは嬉しそうに、けれど控えめに微笑んだ。


「はい、トウマ様。この国でなら……きっと、もっと多くの方に届きます」


返事を出してから、ちょうど一週間。


「……早いな」


拠点の机に置かれた封書を見て、思わずそう漏らした。

封蝋には、見慣れ始めてしまったエリシア王国の紋章。


嫌でも、現実を突きつけられる。


「王国の仕事は、決断も実行も速いものです」


セラがいつも通り、落ち着いた声で言う。


封を切り、中を読む。


拠点として使用可能な建物を用意した

立地は王都近郊、商業区と貴族街の中間

周囲への影響は最小限に抑えている

確認のため、再度来訪されたし


「……もう“用意した”って書いてある時点で、断る選択肢はないね」

リュカが苦笑する。


「王女直々の案件ですし。最初から、そのつもりだったんでしょう」


ドランは短く頷いた。


「場所を見て、判断すればいい」


俺は手紙を畳み、息を吐く。


「結局、行くしかないか」


「はい」


セラは静かに微笑んだ。


「ですが、今回は前回とは違いますね」


「……ああ」


今回は、呼ばれた客じゃない。

拠点を構える側として、王国に足を踏み入れる。


準備は最小限。

必要な試作品と、現在扱っている商品の見本。

あとは、覚悟くらいだ。


出発の日、拠点の扉を閉めながら、ふと思う。


(王宮に呼ばれ、刺客に襲われ、拠点まで用意される)


(静かに商いをする計画、どこに行ったんだか)


それでも――

足は、自然と前を向いていた。


「また行くぞ。エリシア王国へ」


こうして俺たちは、二度目の王都行きの旅に出た。


今度は――

招かれる側ではなく、根を下ろす者として。

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