【46話】販路開拓
俺たちはグレイフォルドの街を出た。
久しぶりの旅路だ。
工場も店も、俺たちがいなくてもしっかり回っている。
だから俺たちは心置きなく、新しい任務――拭き布の販路開拓――に集中できる。
道中、馬車に揺られながらも、俺の手は布の束に触れている。
手作業で作ったものが、誰かの役に立つ日を想像すると、胸の奥が熱くなる。
「久しぶりにこうして旅するのも悪くないな」
俺が言うと、リュカが横でうなずいた。
「そうだね。ただの旅じゃなくて、販路開拓も兼ねてるから気は抜けないけど」
「でも、こうしてみんなで回るのは楽しいだろ?」
「そうですね。街の反応を見ながら布を広める……ワクワクします」
セラが笑顔で言う。
ドランは黙って布の重さを確認している。
重そうな表情だが、口元に小さな笑みを浮かべている。
「まあ、他の街でも売れるか確かめるいい機会だ」
最初の目的地はアルテラ。
かつて俺たちが拠点にしていた街で、以前俺とリュカがお世話になったヴァルドとエリオに会う。
「ヴァルド、久しぶり……元気そうで何より」
ヴァルドは目を丸くしてから笑った。
「おお、トウマか……本当に久しぶりだ。ちょっと見ないうちに随分と立派になったな」
エリオも腕組みしながらニヤリとする。
「で、今回の目的は拭き布の販路拡大ってことか。風の噂で聞こえてきてたけど、面白そうなことやってるじゃないか」
「闇魔法をかけることで汚れを綺麗に落とすことが出来る布なんだ。街の商人たちにも見てもらおうと思って」
俺の説明に、ヴァルドは目を輝かせて笑いながら言った。
「なるほどな、そりゃあ期待できそうだ。今度一杯おごれよ!」
その後、アルテラの街角にある小さな商店に、俺たちは布を持って入った。
木の扉を押すと、店内には商品棚と木の香りが広がる。商人の男が顔を上げ、少し警戒した目で俺たちを見る。
「……あんたたち、何を売りに来たんだ?」
「手作業で作った拭き布です」
俺が布を広げると、布の柔らかさや細かい縫製が目に入るのか、商人の目が輝いた。
「こ、これは……!」
商人は布を手に取り、感触を確かめる。
「噂でも聞いていたが素晴らしいな。ぜひうちの店でも置かせてくれ!」
セラが笑顔で説明を補足する。
「定期的に納品も可能です。品質チェックもしていますので、安心してお使いいただけます」
ドランも細かい仕様や耐久性を説明する。
「使用後も型崩れせず、洗濯にも耐えます。小さな手作業の工夫が効いているんです」
リュカは静かに、今後の契約条件や納期の話を整理する。
「定期的な購入をご希望なら、こちらでスケジュールを組めます。」
商人は布を手に取り、じっくり見比べながらうなずいた。
「わかった、定期的に仕入れさせてもらうよ。これはいい商材だ」
俺たちは笑顔で互いに頷く。こうして街での販路を一つ確保できたのだ。
「よし、これで一つクリアだな」
俺が言うと、ドランが馬車に布を積みながら答える。
「この量なら工場での生産も間に合うし、問題ない」
セラは街を振り返りながら微笑む。
「次は村ね。きっとみんな喜んでくれるわ」
リュカも静かに頷く。
「準備は万端だ。旅はまだ続く」
こうして俺たちは街を去った。手作業で作った布と、仲間たちとの笑顔を胸に抱きながら、次の目的地――故郷のミレナ村――へ向かう。
アルテラでの滞在を終え、次は故郷――ミレナ村――だ。
母の顔を見るのは久しぶりで、胸がざわつく。
村の道を歩きながら、セラが言った。
「村の人たちもきっと楽しみにしてるわよ」
「そうだな、でも……母さんの顔を見るのが一番緊張する」俺は苦笑いした。
村に戻り、家に着くと、母は戸口で微笑んだ。
「帰ってきたのね……少し見ない間にずいぶん成長したね」
「うん。ちょっとだけ……でもまだまだだ」
俺が布を見せると、母は目を細めて笑った。
「あなたの作ったものなら、村の人たちも喜ぶでしょうね」
村の人々にも布を見せながら、挨拶をして回る。
「こうしてみんなで回ると、人の顔も見られていい」
リュカがつぶやく。
ドランも頷き、セラは村の人と世間話を交わしながら布の説明を続ける。
俺は胸の中で決意する――旅はまだ続く。
アルテラ、ミレナ、そしてまだ見ぬ次の街。
手作業で作った布と、仲間たちとの笑顔を届ける旅は、俺の新しい仕事の始まりだ。




