【45話】支えあう手
俺は深く息をついた。
机の上には次に作りたい商品のアイデアが広げられている。
これまで俺が一人で作っていた製品の生産に追われ、思うように新しいアイデアに手を付けられなかった日々――そろそろ変えなきゃいけない。
「ドラン、ちょっと来てくれ」
ドランは無言で部屋に入ってきた。
鋭い目がいつも通り冷静に俺を見つめる。
「工場を建てて拭き布を量産したいと思ってる。そこでドランに工場内の指揮を頼みたい」
俺は言った。
ドランは一瞬考えるそぶりを見せたが、すぐにうなずいた。
「承知しました。従業員への作業指導から、完成品の品質管理まで、全て任せてください」
「ありがとう。ドラン」
「私が作るものより品質は多少落ちるかもしれないですが、チェック体制を整えるので粗悪品は絶対に出さないようにいたします。安心してお任せください」
こうして、街の外れに工場用の建物を購入し、みんなで設備を整えた。
木の梁や石の床、広い作業台、道具棚――最低限の設備だけど十分だ。
ドランが従業員に一つずつ作業手順を教えていく。
最初はみんなぎこちなく、作業も遅かった。
でもドランの指導は的確で、次第に手が慣れてくる。
工場の様子を見た後、拠点の作業場に戻る。
机の上には設計図と試作品、そしてアイデアを書き留めるノートが散らばっていた。
「これでやっと、思い切り開発に集中できる……」
小さく笑いながら、俺は新しい製品の未来を思い描いた。手作業の音が心地よく背中に響く。未来への一歩は、もう確実に動き出していた。
工場での製造が始まってから、数週間が経った。
最初はドランが付きっきりで製造、品質管理等を行っていたが、今ではほとんど顔を出さなくても作業が回るようになっていた。
ドランは従業員に作業手順を徹底して教え、細かい品質チェックも任せていた。
粗悪品が出ることもなく、手作業の作業効率も徐々に上がっている。
同じく、セラも店にいなくても運営は問題なかった。
セラが教えてくれた接客や陳列のルール、商品管理の方法を、店のスタッフがきちんと理解していてくれる。
セラがいない日も店は安定して回り、客も何も変わらず満足している様子だ。
「……なるほどな。俺たちが手を出さなくても、ちゃんと回るようになったか」
俺は少し感慨深くつぶやく。
未来への一歩はもう、誰かに支えられながらも、確実に動き出している。




