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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第4章】やりたかったこと

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【36話】剣を置いて、作ること

資金に余裕ができると、人は欲が出るらしい。


宿の部屋で、俺はベッドに腰掛けながら天井を見上げていた。

ダンジョンの戦利品、アクセサリーの売却、最近の依頼。

気づけば、冒険者としてはかなり潤っている。


「……やりたいこと、増えたな」


強くなること。

修行すること。

それはもちろん続ける。


でも、それだけじゃない。


前世では、俺は“作る側”だった。

誰かの役に立つものを考えて、形にして、使ってもらう。

黒歴史ノートに書いていたのも、突き詰めれば全部それだ。


「……一度くらい、商売もやってみたいな」

ぽつりと口に出すと、不思議としっくりきた。


「商売、ですか?」

セラは首をかしげる。


リュカは腕を組み、少し考え込む。

「悪くはないわね。資金はあるし、無理に危険な依頼を受ける必要もない」


「だよな。……日用品くらいなら作れそうなんだ」

俺の頭の中には、すでにいくつか案が浮かんでいた。


商売をやると決めたはいいが、問題は場所だった。


屋台でもいい。

宿の一角を借りてもいい。

でも――どうせやるなら、ちゃんとした拠点が欲しい。


「建物、買おうと思う」


そう言うと、リュカは少しだけ目を見開いた。


「……いきなりね」

「でも、資金はあるしな」


セラは嬉しそうに頷く。

「お店ですね、トウマ様!」


こうして俺たちは、不動産屋を訪れた。


店内は古い木の匂いがした。

カウンターの向こうに座っていた中年の男が、俺たちを見るなり鼻で笑う。


「……坊主が建物を買う? 冗談だろ」


その瞬間、嫌な予感がした。


「冒険者です。資金もあります」

「へぇ」


男は値段表を指で叩く。


「じゃあ、ここだな。元倉庫で立地も悪いが……特別に金貨五百枚でいい」


……高い。

相場の倍以上だ。


俺が口を開こうとした、その時。


「――随分と、強気な価格ですね」

低く、静かな声。


セラだった。


「この建物、屋根は歪み、壁には魔力劣化。修繕費だけで金貨百は超えます」


男が眉をひそめる。

「な、何を――」


「それに、この通り。半年前から空き物件。売れ残っている理由、理解されていますか?」


セラは一歩、前に出た。

空気が、重くなる。


「子供だからと、ふっかけた。……そうですよね?」


男の喉が鳴った。

「い、いや、そういうわけじゃ――」


「では、正規価格を提示してください」


セラは微笑んでいる。だが、その目は笑っていなかった。


しばらくの沈黙。


「……金貨、二百」


「高いですね」


「……百五十」


「それでも、相場より上です」


セラは淡々と畳みかける。


「修繕費を差し引き、立地を考慮し、適正価格は――金貨八十」


男は顔を青くした。


「む、無理だ……!」


「では、他を当たります」


セラが踵を返す。


「ま、待て! ……百! 百でどうだ!」


一瞬、セラが俺を見る。


「……トウマ様?」


「……それでいい」


俺がそう言うと、セラは小さく頷いた。


こうして、俺たちは建物を手に入れた。


元倉庫。

古いが、広さは十分。


「……安く済んだな」


「ぼったくる気だったので、妥当です」


セラは何事もなかったかのように言う。


リュカが小さく息を吐いた。

「交渉というより、制圧ね」


「武器を使っていないだけ、成長です」


その理屈はどうなんだ。


建物の中に入る。


埃っぽいが、悪くない。

ここから、俺たちの店が始まる。


「名前、どうします?」


セラが尋ねる。


「……まだ決めてない」


でも、不思議と不安はなかった。


剣を振るだけが、俺の戦いじゃない。

ここからは、作って、売って、生きていく。


俺は、この場所でそれを始める。


――新しい戦いが、始まった。

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