【28話】昇格
前回の昇格試験は、ノートの力を使ったせいで、標的を跡形もなく消し去ってしまった。そのせいで、倒した証拠が一切残らず、公式には「まだ倒していないこと」にされてしまったのだ。
だから今日は、リュカと2人で改めて森へ行き討伐することとなった。
セラは冒険者登録をしていないので今回はお留守番だ。
「久しぶりに二人だけね、」
リュカが少し笑う。瞳に闘志の炎を宿しつつも、楽しげな表情だ。
(……ああ、久しぶりだな……)
前回はノートの力で暴走してしまったけど、今回は自力で戦う――それだけで少し胸が高鳴る。
目の前に、中型モンスターが二体、森の中から姿を現した。
リュカは全属性の魔力を纏わせ、風のように舞う攻撃で迎撃。
俺は黒歴史ノートを封印したまま、剣を握り締める。
「トウマ、下がらないで! 今だ!」
リュカの声に反応し、俺は瞬時に間合いを詰め、魔法を纏った斬撃を繰り出す。
前よりも自然に、二人の動きが噛み合っている。
(……俺でも、ここまでやれるのか……)
自分の剣がモンスターに確実に命中するたび、少しずつ自信が芽生える。
リュカも冷静に攻撃を返し、前回の敗北から学んだ成長を感じさせる。
片方のモンスターをリュカが牽制し、もう片方を俺が受け持つ。
視線を交わすだけで動きが一致する瞬間もあった。
(……こんなにも息が合うなんて……)
俺は心の中で呟く。
モンスターが最後の力を振り絞るが、俺とリュカの一撃で討伐完了。
森に静けさが戻る。汗をかき、息を整えながらも、自然と笑みがこぼれた。
「無事、終わったね」
リュカが小さく笑う。胸が温かくなる。
「そうだな……」
二人で互いの力を合わせれば、乗り越えられる――そう確信できた瞬間だった。
昇格試験を終え、俺とリュカは報告のためにモンスターの素材を持ち帰り、ギルドへ向かった。森の緊張感から解放され、少し肩の力が抜ける。
ギルドの扉を開けると、そこにはセラが立っていた。
「トウマ様、リュカ様、お疲れ様です」
微笑みを浮かべるセラ。
彼女の手には、光を反射するカードのようなものがあった。
「何それ……?」
リュカが目を丸くする。
セラはゆっくりとカードを掲げる。
「Cランクの冒険者証明書です。依頼にあったC級モンスターをサクッと討伐して、飛び級しました」
俺は思わず口を開けてしまう。
(……え、セラ……もうCランク……!?しかも飛び級……!?)
リュカも唖然としつつ、目を細めてカードを凝視する。
「……ちょっと、あんた、凄すぎでしょ……!」
セラはにこりと微笑み、軽く首を傾げる。
「ふふ、リュカ様も少しは焦ってみますか? トウマ様の隣は誰か、はっきりさせないと」
そんなやり取りの間に、ギルドの奥からヴァルドとエリオも現れた。
「なにはともあれ、Eランク昇格おめでとう」
ヴァルドが俺たちを見て、少し笑う。
「二人とも、前回の失敗からよくここまで成長したな」
エリオも続ける。リュカの表情が一瞬だけ誇らしげに変わる。
俺は胸が熱くなる。
(……こうして認められるのは、やっぱり嬉しいな……)
リュカも俺を見て微笑む。
セラはその様子を見て、少し小悪魔的に目を細める。
三人の距離感、互いの成長、そして認められた喜び――ギルドの中で、俺たちの小さな勝利が静かに輝いていた。




